「早寝早起き朝ごはん」国民運動から見る生活習慣改善【生活習慣改善特集】

子供たちの基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上を目指し活動が始まった「早寝早起き朝ごはん」国民運動が11年目を迎えた。これまでの運動の成果について文部科学省担当者に聞いた。また、具体的な取り組みとして静岡県富士宮市立柚野小学校の食育を軸にした生活習慣改善への事例を紹介する。

文部科学省生涯学習政策局男女共同参画学習課家庭教育支援室長 齋藤 憲一郎

「早寝早起き朝ごはん」国民運動
「社会総掛かり」で子供たちの育ちを支援

社会の変化とともに子供たちの生活環境も変わってきました。ゲームやスマートフォン等の出現で、生活リズムを崩す子供たちも少なくありません。こうした中、「早寝早起き朝ごはん」国民運動は、子供たちの基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上を目指し、文部科学省と「早寝早起き朝ごはん」全国協議会が連携して進めてきたものであり、平成18年にスタートしました。

本運動の取り組みにより、子供たちの基本的な生活習慣を整えることが、子供たちの学習意欲や体力、気力を高める上で重要であるという認識が広く定着し、さまざまある国民運動の成功事例の一つとして評価されています。

各地域においても、例えば、学校とPTAや、地域の団体と教育委員会、保健福祉部局等が連携した取り組み、さらには企業とのタイアップなど、さまざまな活動が展開されてきています。

この運動の成果として、例えば、朝食を毎日食べる小学校6年生の割合が運動開始前の平成15年に比べ平成27年度は12.2ポイント増加したほか、午後10時以降に寝る幼児の割合が減少したりするなど、幼児や小学生を中心に、生活習慣の改善傾向がみられています。

図1
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全国学力・学習状況調査の結果として、毎日朝食を食べている子供や、毎日同じくらいの時間に寝起きしている子供、家の人と学校での出来事について話をしている子供ほど、平均正答率が高い傾向にあります(※図1)。また、本運動の中で、お手伝いやあいさつ等に

取り組まれている事例もありますが、お手伝いを多くしている子供ほど、自己肯定感が高い傾向があるという調査結果もあります(※図2)。

図2
図2

朝食を食べることは、子供にとっても大人にとっても大切なことです。朝食でブドウ糖をはじめとする、さまざまな栄養素を補給して午前中からしっかり活動できる状況をつくることが重要です。朝ご飯のメリットは、栄養補給だけではありません。

よく噛んで食べることは、脳や小器官を目覚めさせ、早寝早起きのリズムをつけることにつながります。

一方で、小学校の高学年から中学生・高校生にかけては、スマートフォンなどの所有割合やインターネットとの接触時間の増加等により生活リズムが乱れたり、睡眠時間が削られたりする傾向もみられます。

生活習慣の乱れによる心身の不調等により、さまざまな問題行動に発展する可能性も懸念されていますが、中学3年生の約22%が、平日午前0時以降に就寝するという調査結果もあります。

加えて、不登校の問題と生活リズムの問題の関連も指摘されていますが、文部科学省が実施した、中学生時代に不登校だった者についての追跡調査の結果によると、不登校になったきっかけとして「生活リズムの乱れ」を挙げた者の割合が約34%に上がっています。

基本的な生活習慣を身に付けるためには、家庭でルールを決めるとともに、自分自身で生活を主体的にコントロールする力を身に付けさせることが必要であり、家庭と学校、地域が連携して取り組みを推進することが必要です。

このため、文部科学省では、家庭と学校、地域の連携による中高生を中心とした子供の生活習慣改善のための事業を行っておりますが、取り組んでいただいている自治体・学校からは、例えば、十分な睡眠時間を確保することで体調が良くなり学習に集中できている自分に気付き、早寝を意識する生徒が増加した、あるいは、睡眠不足が原因で保健室を利用する生徒が減少している等の成果も報告されています。

こうした子供の生活習慣づくりの推進に引き続き取り組んでまいります。

子供たちを取り巻く社会や環境は大きく変化しています。また家庭教育は全ての教育の出発点ですが、身近な相談相手がいないなど家庭教育を行う上での困難さが指摘される中で、家庭・学校・地域が連携協働し、「社会総掛かり」で子供たちの育ちを支援していくことが大切です。

その一つの取り組みが「早寝早起き朝ごはん」の国民運動です。
今後ともこの活動をより一層進めていき、子供たちの基本的な生活習慣の定着を含めた健やかな育ちを応援していきたいと思いますので、ご支援、ご協力をいただきますよう、お願い申し上げます。

夢への挑戦の土台作り
食育を軸に生活改善に成果上げる
平成28年度優れた「早寝早起き朝ごはん」運動の推進にかかる文部科学大臣表彰
静岡県富士宮市立柚野小学校
〇教育課程に位置付けて展開

本校(水村裕子校長)のある富士宮市は、豊かな自然に恵まれ、広大な朝霧高原の酪農や湧き水を使ったニジマス、日本一の標高差を生かした多品種の野菜など、古くから多くの食資源に恵まれ、それを大切に育んできた。そんな富士山の恵みと文化を誇りとする富士宮市は、平成16年から「フードバレー構想」を掲げ、市を挙げて「食」のまちづくりに取り組んでいる。

市内の各小・中学校では栄養教諭が配置された平成20年度から、食育に本格的に取り組み始めた。本校では「早寝早起き朝ご飯」を合言葉に生活改善に努めてきた。

26年度からは、「健康な身体づくり・生活習慣の改善」を目的とし、「早寝・早起き朝ご飯運動」を主軸にした「生活習慣パワーアップウイーク」を教育課程に位置付け、それまで以上に力を入れ、隣接している柚野中学校(一小一中・グランドデザイン・学校教育目標・PTA組織共通)や、家庭・地域と連携して、以下の活動に取り組んだ。

弁当の日の徒歩登校掲示版
弁当の日の徒歩登校掲示版

その結果、平成27年度静岡県保健会より「健康推進優良学校」の表彰を受け、平成28年度の、優れた「早寝早起き朝ごはん」運動の推進にかかる文部科学大臣表彰につながった。

〇児童を励ます「生活習慣パワーアップウイーク」

小中3部会「たくましい心身育成部」が中心となり計画し、年4回「生活習慣パワーアップウイーク」を実施している。チェック項目は、朝ご飯に関するもの(食べたか、内容(黄色・赤色・緑色の食品)三色の食品を全て食べた日数)と、早寝早起きに関するもの(寝る時刻のめあて、早寝早起きができたか)、歯磨きに関するもの(夜の歯磨き)があり、児童が毎日パワーアップカードに記入し担任に提出し、1週間取り組んだ結果を養護教諭(保健主事)に提出する。養護教諭は一人一人の児童に合った励ましのコメントを入れ、担任を通じて返す。

▽児童「三食食べると運動ですごく動けるのでいいけど、あと30分早く寝たいです」→養教「自分で実感しているんだね。その実感が健康習慣につながっていくんじゃないかな。がんばれ!!」

▽児童「パワーアップウイークが始まって毎日三食のご飯を食べたから、元気に学校に行けました」→養教「みんなが元気だと先生も元気になるよ」

子供たちは、こんなやりとりを励みにし、頑張って取り組んでいる。

〇規則正しい生活習慣につながる「徒歩登下校」

これまでもグランドデザインに徒歩登校は掲げられていた。徒歩登校するためには朝早く起きなくてはならない。そのためには夜も早く寝なくてはならないため規則正しい生活習慣につながる。しかし自家用車による送迎が多く、本校の課題の一つだった。

そこで階段上り場に「徒歩登校黒板」を設置し、ネーム磁石により健康委員会が一人一人の状況を確認できるようにした。健康委員が昼の放送で徒歩登校した人数を紹介するなどの啓発を行っている。徒歩登校を促すキャッチフレーズを募集、標語にし、地域の関係機関に掲示を依頼するなど、広く取り組みを周知した。

徒歩登下校中の安全を心配する保護者の声を評議員会で取り上げ話題にしたところ、区長会が協力してくれて「登下校見守り隊」が結成された。朝早くから子供たちと見守りボランティアの方との元気な挨拶が交わされ、登下校の安全も確保されている。

〇親子で取り組む「朝食づくりの日」

富士宮市の各小中学校では「オリジナル朝食コンクール(市教委主催)」に取り組んでいるが、それとは別に、柚野小中学校児童生徒が共に親子で取り組む「朝食づくりの日」を年3回実施している。

「たくさん作ったので少し疲れました。でも良い経験にもなりました」「お母さんの朝ご飯作りが大変だなというのを自覚しました」(子供)、「食に興味を持つ良いチャレンジだと思いました」(保護者)など、カードに記入された感想に養護教諭がコメントを返している。作った料理は学校のホームページや公民館、郵便局等の施設に掲示して紹介してもらうなど地域との連携を図っている。

〇食に関する多様な取り組み

「栄養教諭と連携した食育授業」は全学年で実施し、栄養やバランスの良い食事がなぜ必要かについて、授業参観日に合わせて実施し、保護者への啓発も図っている。

4年生から中学生を対象にした「食を考える講演会」(講師:竹下和雄氏)を実施し、保護者と共に子供の成長を支える環境を整えることについて学ぶ機会とした。その後、年に3回「お弁当の日」を設定し、学年に応じためあてに向かって全校で取り組んでいる。

教室を回っていくと、「先生、この卵焼き自分で作ったんだよ」と低学年が声を掛けてくれる。「全部自分で作りました」と自慢げに話す高学年の子供、いずれもお弁当を片手にしたとびっきりの笑顔の写真が校内掲示コーナーに貼り出され、子供たちの励みとなっている。

〇活動の成果と今後の展望

小・中学校が連携して保護者・地域など多くの方の協力を得て取り組んだ成果が認められ、文部科学大臣表彰を受賞したことは、今後の活動を推進していく上でも大変励みになることであった。

活動を進める上で、保護者や子供たちへの負担もあるが、理解と協力をいただき、子供たちの「夢への挑戦」の土台が生活習慣であることを認識していただけたことも大きな成果であった。

子供たちが食べることの大切さや楽しみを知り、自らの生活を管理していく力を主体的に身に付けていくためにも、地域や保護者、保育園等との連携も図りながら、今後も継続して取り組んでいくことが大切であると考えている。