デジタル教科書で早期支援 岐阜県多治見市立養正小学校

児童の自尊感情を重視

グループで資料動画を見る児童ら
グループで資料動画を見る児童ら

インクルーシブ教育の基本施策の1つに、「一人一人の教育的ニーズを把握し、それに応じた指導・援助の充実」を掲げる岐阜県多治見市。その一環として同市立養正小学校(安藤善之校長、児童349人)では、タブレット端末を活用した早期支援に取り組んでいる。「わかった・できたが実感できる、ユニバーサルデザインの授業づくり」を指導の重点に置く同校では、児童の自尊感情を重視しながら学習者用デジタル教科書(以下、デジタル教科書)を活用している。


■個別支援のツール

2月9日の公開授業では、光村図書出版(株)のデジタル教科書を使った、4~6年生の国語の各授業と、特別支援学級での個別指導が公開された。

6年生の授業では、「聞き手に思いが伝わるスピーチの秘密を見つける」というテーマでグループ学習を実施。

児童らは3~4人でグループを作って、デジタル教科書内の資料「スピーチの会を開こう」の動画を見ると、互いに気付いたことを話し合い、▽相手を見て、ゆっくりと丁寧に話す▽語りかけるように話す▽パネルを全員に見せる▽目指す夢をしっかりと語る――と書き出していった。

学習が困難な児童の個別支援のツールとして、デジタル教科書を使用する授業も公開された。

特別支援学級では児童5人が、▽丁寧に書く▽漢字を覚える▽音読する――など、それぞれの目当てを持って、個別学習で自分の課題を進めた。教諭は一人一人の進み具合を見守り、状況に合わせて支援。デジタル教科書を使うことで、プリントだけでの学習に比べると児童らの集中力は格段に上がり、教諭は個別の支援をしやすくなったという。

通常学級でも、外国人児童や、漢字が読めないため音読が困難な児童らが、デジタル教科書のルビ機能や朗読機能を使って学習している。

■学習をあきらめなくなった児童

同校の柳原伸哉教務主任は、児童への効果を、「『分からない』『できない』『つまらない』が減り、学習をあきらめなくなった」と分析する。重視しているのは、児童の自尊感情。学力だけでなく、心の動きも確認しながら支援を進めている。

「子供が困っている理由を分析し、『この子にはデジタル教科書がフィットするな』というときに使うようにしている。一番のポイントは『学習意欲の向上』に結び付けること。自分ができたと児童が実感できるのを、大切にしている」と方針を語る。

今後は一つの支援ツールとして、必要な児童が必要なときに活用できる環境づくりと、家庭学習での活用を進めたいという。

「目が悪い子が眼鏡を使うように、読字障害のある子はデジタル教科書を使うのが当たり前という環境にしていきたい」と思いを話す。

全校研究会などで取り上げることで、多くの教員らにデジタル教科書の使い方が認知され、独自に工夫する動きが広がってきたという。

■短期的課題と長期的課題

同校が所有するタブレットは、文科省の委託事業「発達障がいの可能性のある児童生徒に対する早期支援事業」(2014~15年)で導入するなどしたiPad100台。デジタル教科書は、同市が学校にヒアリングした結果を基に必要な児童数分を購入した。

同市教育委員会教育相談室の安田孔美指導主事は「一人一人の学びを保証する理念の共有を一番大切にしつつ、ICTを活用できる環境と人をどう作っていくかが市の課題。市内のほか8校でも、同様の整備を行っている」と話す。

安藤校長は短期的課題として、「コーディネート力」を挙げる。「リソースも環境も限られる現状で、いまいる子供たち全員に『分かった』『できた』という思いをさせるには、子供を見て状況を把握し、一番いいものを一番少ない労力で渡せるコーディネートセンスのある職員を育て、配置していくことが重要だ」と語る。

また長期的課題としては、「見通しを持って教育委員会と連携し、活用していくためには何が必要か洗い出して、5年後、10年後のプランを策定していくこと」と挙げた。

「一人一台の環境になると、飛躍的に活用できるようになる。いいものがあるのに、使わないという状況にはしたくない。一歩ずつ進んでいきたい」と力を込める。