2018年度未成年者飲酒防止教育“学校コンクール”応募受付を開始 昨年度の最優秀賞2校の実践と成果

未成年者飲酒防止のための指導事例を、全国の学校から募集する「2018年度未成年者飲酒防止教育“学校コンクール”」の応募受付が始まった。主催は「STOP! 未成年者飲酒プロジェクト」を推進するビール酒造組合。同コンクールの目的は、学校・地域が一丸となって未成年者の飲酒防止問題に向き合い、考える意識を高めること、そして未成年者飲酒が及ぼす健康への影響などの理解を促進させることにある。コンクール事務局は応募校への支援として、「飲酒状態体験ゴーグル」「アルコールパッチテスト」「ビールすごろく」などの体験用ツールを無料で貸出・提供する。昨年度のコンクールでは、優れた取り組みが多数寄せられた中、最優秀賞を小学校部門は埼玉県川口市立差間小学校が、中学校部門は広島県安芸高田市立高宮中学校が受賞した。未成年者飲酒防止教育を通じて、自己肯定感の向上や判断力の育成を図った2校の実践内容、成果などを取材した。

ライフスキル教育としての飲酒防止

埼玉県川口市立差間小学校

絵カードを活用して授業を進めた

「あなたはかけがえのない一人」――。埼玉県川口市立川口差間小学校(和久井功雄校長、児童637人)は、「さわやかな心 しんけんな目 まなぶ力」を目指し、「児童一人一人を大切にし、児童の持つ力を伸ばす教育活動を充実させる」を経営方針とする。鈴木真由美養護教諭は「自己肯定感の低い生徒が多い」という課題意識をもっていた。「どうせオレなんか」「頑張ってもできない」、そんな声が子供たちから聞かれる。自分がかけがえのない一人であることを実感し、体を大切にする方法を知って、自己肯定感を高めてほしいと、同教諭は強く願うようになった。

■全教員が「ぜひやりましょう!」

同教諭が取り組もうと考えたのは「ライフスキル教育」。体を大切にするというテーマで、飲酒・喫煙・薬物乱用防止を図ろうとのねらいだった。家族と共に居酒屋で食事をする機会もあり、保護者や親戚が冗談で飲酒を勧めることもある。そこで実物教材を取り入れ、未成年者飲酒防止について体験的に児童に学ばせる方法として、「未成年者飲酒防止教育〝学校コンクール〟」へのエントリーを検討した。

主催のビール酒造組合は、未成年者飲酒が及ぼす、健康への影響などの理解促進をねらいとして、小・中・高・特別支援学校での指導事例を募集している。支援ツールとして、「飲酒状態体験ゴーグル」「アルコールパッチテスト」「ビールすごろく」を無料で貸与。最優秀賞を受賞した学校には30万円相当の品物を贈るほか、発表の機会を設けるなど、未成年者飲酒防止に向けた意識向上を図っている。

同組合の教材を用いた学習を提案する鈴木教諭に、和久井校長をはじめとした全教員は「ぜひやりましょう!」と賛同。ライフスキル全10時間のうち、未成年者飲酒防止に関する授業に4時間を当てると決めた。

1時間目は「アルコールに関する正しい知識」と「パッチテスト」。アルコールが人体に与える影響を伝えるだけでなく、実物を用いながら、缶などのパッケージではジュースとお酒の区別がつきにくい場合があること、グラスに注いだら見ただけでは分からなくなってしまう場合があることを、実感をもって理解できるよう働きかけた。パッチテストは児童全員が実施。自分にALDH(アルコール分解酵素)が、どの程度あるのか調べさせた。

2時間目は『徒然草』の「酒は百薬の長 されども、万の病は酒よりこそ起これ」を題材に、「されども」以下の意味を考えさせた。ALDHについて前時で身に付けた知識を生かし、成人してからのお酒の飲み方や他者との関わり方を正しく判断することの大切さを学ばせた。

3時間目はロールプレイング「断り方の練習」で、「小学校の卒業式の日、家に来た親戚のお姉さんがビールを勧めてきた」という、起こり得る場面を想定しながら断り方を考え、教員を相手に実演。中学校にも勤務していた同校長は児童に、飲酒や喫煙をしてしまった中学生の事例を話して聞かせ、真剣味をもたせた。

単元の最後、4時間目は飲酒・喫煙・薬物乱用防止の全体を通したまとめとして、「20才になった自分へ」のテーマで決意作文。これまで授業中だけでなく、休み時間にも「ビールすごろく」を用いるなどして飲酒に関する正確な知識を身に付け、実物教材やロールプレイングを通じて体験的に学んできた児童は皆、決意表明に真剣な面持ちで取り組んだ。

作文の一つ一つに、鈴木教諭と担任が丁寧にコメントをして返した。一冊のノートにまとめられた学習の記録を手にした児童の満足げな表情、保護者からの感謝の言葉から、同教諭らは確かな手応えを感じた。

■「児童の命を守る教育」

同教諭に授業作りで苦労した点を尋ねると、「何もなかった。ビール酒造組合から無料で貸してもらえた教材や、ほかの先生方の連携には本当に助けられた。とても楽しく、充実した授業になった」と満面の笑みで答えた。成果については、「子供たちから『どうせオレなんか』という言葉が聞かれなくなった。自己肯定感の向上につながった」と振り返る。

学校経営の視点から見た今回の取り組みについて、和久井校長は「これは児童の命を守るための教育。未成年者飲酒防止だけにとどまらず、命の大切さに対する理解など、さまざまな面で児童の生きる力の育成が感じられる実践になった」と話す。保護者や地域、近隣の小・中学校からも大きな反響があり、高く評価されているといい、「これが卒業後にも継続されるよう、地域の小学校や進学先の中学校とさらなる連携を図り、いずれは全国に広めていきたい」と述べた。

「駄目」ではなく「考えさせる」

広島県安芸高田市立高宮中学校

酒を勧められたときの断り方を考える生徒ら

広島県安芸高田市立高宮中学校(高坂広昭校長、生徒73人)がある芸北地域は、農家が多く、祭りや神楽が盛んで、生徒らが地域の伝統行事に参加する機会が多い。そうした際に大人から飲酒を勧められることもあり、未成年者飲酒防止教育と保護者への啓発が、地域全体での健康課題となっている。そのため同校では、「未成年の飲酒について自分自身の問題として考え、判断し、適切に行動できる生徒の育成」を目標に、未成年者飲酒防止教育を実践した。

■「お酒の勧めを断る自信」が増加

地域で設置した「芸北地域保健対策協議会こころの健康づくり事業未成年者飲酒防止教育資料作成委員会」に参加。校内にも校長、生徒指導主事、養護教諭らで作る未成年者飲酒防止教育推進委員会を設置し、校内研修で▽実態調査▽心の健康づくり▽未成年者飲酒防止を柱とする指導計画の立案▽教材の作成▽事後アンケートによる成果と課題の分析――など、PDCAサイクルによる取り組みを行った。

未成年者飲酒防止の授業は学年ごとに、学級活動や道徳の時間を使って行った。例えば2年生は道徳の時間に、同じ中学2年生で飲酒し始めたことがきっかけでアルコール依存症になってしまった元患者の資料から、未成年者飲酒のもたらす深刻な影響を学んだ。そして小グループに分かれ、高校生の先輩や20歳のいとこからお酒を勧められたらという、さまざまなシチュエーションでの断り方を考えて、それぞれ発表。「外国人風に英語で冗談っぽく断る」「20歳になったら一緒に飲みましょうなど、相手があきらめるまで断り続ける」といった、個性的なたくさんの回答が出された。

1年生には「アルコールを正しく知ろう」というテーマで、正しい知識の学習や、アルコールパッチテストなどを活用した学習活動を実施。3年生は保健体育の授業で、飲酒体験ゴーグルを着用した体験活動などとともに、飲酒運転など道交法違反についても学んだ。

事後アンケートでは、「お酒の勧めを断る自信がある」と答えた生徒が授業前から15%増加し、一方で「自信がない」と答えた生徒は70%減少。

「依存症になると、自分だけでなく、家族や身近な人に悪影響を及ぼす。20歳になるまで飲んではいけないと思った」「グループごとに、さまざまな場面でお酒を勧められた時の断り方を考えて発表したことで、いろいろな断り方があると分かった。学校で断り方を勉強していれば、大人にお酒を勧められてもみんなで断れるのでいい」「将来、バイクや自動車の免許を取っても、飲酒運転は絶対しないようにする」などの感想があった。

また保護者へのアンケートからも、多くの家庭で飲酒についての話し合いを持ったことが分かった。「学校から持ち帰った資料を見ながら、子供と飲酒についての話し合いができてよかった」「子供たちがこのような教育を学校で受けていると知り、自分たち大人もお酒の飲み方を考えていかなければと反省した」などの声があり、適切な飲酒について家族で考えるきっかけとなったようだ。

■他教科にも生かせる双方向の手法

高坂校長は「生徒が議論し、実際に体験して、それが家庭や地域に広がっていく授業の在り方は、本校が目指す授業づくり、授業改善の形だ。アクティブ・ラーニングの要素があり、この双方向の手法は、他教科の授業にも生かせる。深い学びの実践になっている」と分析する。

竹村和洋教頭も「パッチテストの反応などに生徒はとても興味を示し、楽しく学んでいた。断り方を小グループで考えた授業では、深く考えて双方に学び合う姿が見られた。自分で判断する力を養うとともに、お酒との接し方を学べて非常に良かった」と振り返る。

「未成年者飲酒防止教育〝学校コンクール〟」への応募は、養護教諭の発案。同校の取り組みは、「なぜ未成年の飲酒がよくないのか、どのような影響があるのかなどを児童生徒が学ぶ機会を作り、家庭や地域とも共有して広める取り組みをしてほしい」という主催者の思いと合致するもので、最優秀賞に選ばれた。

防止教育だからといって駄目と教えるのでは、学びにはならない。生徒はなぜそうなのか理由を知ることにより、良い面も理解でき、大人になったときに自分の意思で、お酒とどううまく付き合うかを考えられる。

同校長は「単なる未成年者飲酒防止でなく、対人関係、情緒など、いろいろな角度からの教育をでき、なかなか深い授業ができる。これからもこの手法で、生徒が主体的に学ぶ授業を作っていきたい」と展望を語る。

ビール酒造組合は、未成年者飲酒防止を目的として、2002年から未成年者飲酒防止ポスター・スローガン・学校募集キャンペーンを実施してきた。学校・地域で未成年者の飲酒防止問題に向き合い、考える意識を高めるとともに、未成年者飲酒が及ぼす健康被害などの理解を狙いとしている。

2017年度から「未成年者飲酒防止教育“学校コンクール”」と名称を改め、小学校、中学校、高校、特別支援学校(学級)から飲酒防止教育の事例を募集している。審査の基準は以下の4点。『課題発見力』『オリジナリティ』『学校外(地域・家庭)への影響度』『継続性』。

今年度の募集要項は次の通り。


【2018年募集要項】

応募期間 2018年6月1日(金)~9月28日(金)必着
応募資格 全国の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校(学級)
募集内容 学校での「未成年者飲酒防止」に関する取り組みを募集
  • ビール酒造組合のツール(ゴーグルやパッチテスト)を授業内や文化祭などの学校行事で活用
  • ビール酒造組合の教育ツール(ビールすごろく)を授業などで活用
  • 学校で未成年者飲酒防止を説明するツールなどを独自に制作し授業などで活用
  • 未成年者の飲酒防止を訴求するポスター制作をクラスや学年単位で実施
  • 校内で未成年者飲酒に関するアンケート調査を実施
  • 保健委員会や学年、クラスの活動で掲示物を制作し、学校中に啓発活動を展開
  • 地域の警察署や酒店などと連携し、学校で未成年者飲酒防止を考える時間を設ける
  • その他、未成年者飲酒防止に関わる学校での活動
必要事項
  1. 住所(郵便番号)
  2. 学校名(全校・学年)
  3. 電話番号
  4. 応募者氏名
応募方法 書式、フォーマットは不問

上記必要事項を記入し、学校での取り組みで使用した資料コピーなどや、当コンクールのホームページからのエントリーシートをダウンロードし応募。併せて、活動の様子がわかる写真があればご提供ください(1~3点)。

応募先

【郵送の場合】〒108-0023 港芝浦郵便局留め 「2018年度未成年者飲酒防止教育学校コンクール」

【メールの場合】camp@brewers.or.jp

結果発表 入選校には事務局より直接連絡。ビール酒造組合ホームページ上でも発表
プレゼンテーション・表彰式 2018年11月23日(金)東京で開催予定
報賞
  • 最優秀賞 小学校・中学校・高校・特別支援学校(学級)各1校(30万円相当のカタログ式ギフト)
  • 優秀賞 小学校・中学校・高校・特別支援学校(学級)各3校(10万円相当のカタログ式ギフト)
  • 審査員特別賞 小学校・中学校・高校・特別支援学校(学級)各1校(5万円相当のカタログ式ギフト)

同組合では希望者に、下記の応募支援ツールを提供している。

    • 「飲酒状態体験ゴーグル」=飲酒によっておこる「視覚の歪み」や「遠近感の変化」を平常時の冷静な脳の状態を体験することで、飲酒状態がいかに危険かを体験できる。
    • 「アルコールパッチテスト」=肌にアルコール成分を貼り、その部分の肌色の変化で、お酒が飲める体質かどうか判断できる。「飲酒に向かない」「アルコールの分解能力が弱い」など、自分の体質を知ることができる
    • 「ビールすごろく」=お酒に関する知識と情報を学べる教材となっている。ボードゲーム形式で楽しく遊びながら学ぶことができる。また、すごろくの盤面は、ポスターとしても活用できる。

 


未成年者飲酒防止教育学校コンクールホームページ
【問い合わせ先】学校コンクール事務局 ℡03-5443-1232 (土・日・祝日を除く10:00~18:00/9月28日まで)