オーストラリアのICT活用 校務系と学習系データの連係で 汎用的能力の育成

iPadを活用した学習の様子

(一社)日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)海外調査部会が6月2日から9日にかけ、オーストラリアのクイーンズランドに赴き、ICT活用を中心に、州の教育省、公立小学校、高校を視察した。このほど開かれた報告会では、オーストラリアの教育制度、クイーンズランド州の取り組み、授業実践などが報告され、日本と比較しながら、良い点や課題などが指摘された。

■オーストラリアの教育制度

初等中等教育においては、年齢と学年は日本とほぼ同じだが、Prepという小学校入学前の準備学級が1年間ある。義務ではないが、ほとんどの子供が通う。州によって学年の区切りが異なる。

カリキュラムはこれまでは州ごとに決めていたが、コンピテンシーの育成や、21世紀型スキルが世界的な潮流になっていったことを背景に、2008年の「メルボルン宣言」において、ナショナル・カリキュラムが開発されるようになった。

翌09年には、国でカリキュラムを決めるための、オーストラリアン・カリキュラム評価報告機構(ACARA)が発足。カリキュラム中でも重視しているのは「汎用(はんよう)的能力の育成」で、①リテラシー②ニューメラシー③ICT能力④批判的・創造的思考力⑤倫理的理解⑥異文化理解⑦個人的・社会的能力――の七つ。カリキュラムはWEBで原則全て公開されている。

学習評価については、児童生徒が各学年で、一般的にどのような学習成果を残すことが期待されるのか具体的に示されている。さらに、学習到達度別活動ポートフォリオが提示されており、児童生徒の理解状況が把握できる。

オーストラリアの学年段階

日本と同様に全国共通の学力調査(NAPLAN)が2008年から実施されている。調査内容は①読解②作文③言語④算数/数学――の4項目。今年からは初めてオンライン・テスト(CBT)が導入され、運行2~3年でオンライン・テストに移行する。

またSTEM教育に関しては領域の仕事が経済成長に必要な労働力ニーズであることを背景に、国、州が戦略をたて計画的に進めている(16年からは学校教育においてSTEM教育を普及する10年計画を15年12月に発表)。目的はSTEM関連の知識をしっかり身に付け、STEM分野の職業選択につなげることにある。

■クイーンズランド州教育省の取り組み

主な学校へのサポートは、教育におけるテクノロジー支援、子供たちの成果を向上させるための教員へのサポート、トレーニングとリソースの提供だ。

中でも先進的なのは「OneSchoolSystem」(カリキュラム、成績管理システム)。学校は州立の全学校とそこに通う全児童生徒にひもづく情報が記録されている「OneSchoolSystem」で、学校や児童・生徒の状況を示すさまざまなデータを確認でき、「データ分析(児童生徒の状況を効率的・分析的に把握)」「実行(児童生徒の状況に応じた授業・支援計画を教員同士で把握し実践)」「振り返り(児童生徒の状況、授業計画、サポート計画などを包括して振り返る)」の3段階で活用している。各学校は、OneSchoolを通して報告が義務付けられており、校務系と学習系データの連係は日本より先行している。

■Hilliard State Schoolの取り組み

Hilliard State School(児童740人、教職員55人)は、全授業でiPadを使用している。学校内ネットワークは無線LANを使用。2010年に助成金でポータブルラップトップを購入し、翌年にビジョンを立ち上げ、13年に全ての教員にiPadを配布した。

16年に全ての児童がiPadを持参するようになり、年月をかけ、地域や保護者と協力してBYODを実現。家庭や経済的な事情で用意できない児童にはiPadを貸し出している(自宅への持ち帰りは不可)。特徴は、一人一人が自分で内容を決めて学習するパーソナライズド・ラーニング(個人化された学習)で、互いに助け合う学びを重視。協同学習をもとに、教師はファシリテーター的な役割で授業に関わる。学習コンテンツは教師から配信し児童とシェアする。閲覧履歴は管理されているが、児童は自由にアプリケーションをインストールできる。

ただ、報告の中では、「授業を見学した際、教師が児童に目が行き届かない分、間違ったまま学習をする児童も見受けられ、協同学習の中で、児童自身が『自分の学習理解が不十分である』というメタ認知をした上で、友達に教わる、教師に尋ねる行動につなげることが必要であると感じた。また、現場の教師に質問したところ、テクノロジーの活用(STEMやICTの積極的活用)と、全国共通学力調査(NAPLAN)との関連性は、まだ見いだせていないとの声も聞かれた」と課題を指摘する意見も上がった。