国語科における「深い学び」の姿 ことばと学びをひらく会

鴻上尚史さんが記念講演
深い学びについて議論したシンポジウム

「ことばと学びをひらく会」(会長・髙木まさき横浜国立大学教授)の第12回研究大会が10月20日、東京都港区の慶應義塾大学で開かれた。テーマは「国語科における『深い学び』の姿とは―具体事例から考える」。教員や教員志望の学生ら約500人が参加した。

シンポジウムでは、「ことばの学びのさまざまな価値―『広い学び』『高い学び』『深い学び』」がテーマ。シンポジストとして鹿毛雅治・慶應義塾大学教授、黒田英津子・静岡県河津町立西小学校校長、甲斐利恵子・東京都港区立赤坂中学校教諭が登壇し、藤森裕治・信州大学教授がコーディネーターを務めた。「深い学びとは何か」「深い学びへの手立て」の2点を中心に議論された。

「深い学び」について、鹿毛教授は「深い学びは『学びの深まり』と理解したほうがよい。子供が自ら問うことで気付きが生まれ、そのプロセスが思考となる。言葉だけを学ぶのではなく、『相手を推し量る思考』などを言葉の学びを通して学ぶことが重要だ」と述べた。また「深い学びへの評価」について、「子供との一瞬一瞬のコミュニケーションの中に評価がある。通知表などのフォーマルなものではなくインフォーマルなものだ。深い学びは子供と教師が共に行うもの」と指摘した。

「深い学びへの手立て」について、甲斐教諭は「深い学びとは、簡単に答えが出るものではない。子供たちが難しいと感じる課題の中で育まれるものだと思う。本気で夢中になっている時は難しい課題と向き合っている時であり、子供は難しいことを受け入れる身体ができている。教師は『困難さを受け入れる子供を育てるには、どうすればよいか』という課題と向き合うことが必要」とした。「子供たちの問いに対し、支えになるのが教師の役割。言葉が考えを連れてくるという基本に立って指導することが大切」とも述べた。

「深い学びへの課題」について、黒田校長は「子供たちが本当に考えたいと思う授業になっているか、知的好奇心があり、自分を振り返ることができる授業かどうかがポイント。実際の話し合い活動の中で、対立意見の処理経験が子供の思考力を向上させる。深い学びを導く教師の役割は、『話を止める』『違った視点を与える』『話をつなげる』『話を整理する』。大切なのは子供たちで解決しようとする力で、学びは子供たち自身のものと認識させることだ」と指摘した。

数多くのワークショップや講座が行われる中、中川一史・放送大学教授と石川等・山梨県甲府市立羽黒小学校教頭が行った「使いたくなる!『深い学び』を実現する学習者用デジタル教科書」では、国語の学習者用デジタル教科書(光村図書出版㈱)を活用したワーク・グループセッションが行われた。タブレット端末が参加者各人に提供され、学習者用デジタル教科書を使い、「焦点化」「集約」「抜出」「書き込み」機能を踏まえながら、対話を取り入れた学習活動の資料を作り、効果的な指導について考察した。

最後に、作家・演出家の鴻上尚史さんが「コミュニケイションのレッスン」と題し記念講演を行った。鴻上さんは「コミュニケーションで大切なことは、『世間』と『社会』の違いを理解すること。『世間』は価値観が同じなので言わなくても理解を得られるが、『社会』は価値観が異なるので、言葉で分かるように説明しなければ理解が得られない。そのような意味で日本では、世間話はできるが、社会話をできる人は少ない。今後、知らない者同士が話し合えるスキルを持つことが、コミュニケーション能力として求められる」と語った。