「機械以上、人間未満」特支学校でペッパーが活躍

(公財)パナソニック教育財団特別研究指定校 愛知県立みあい特別支援学校
ESDの視点に立った未来型ICT活用
生徒の作業学習を応援するかのよう

テクノロジーを活用することで、コミュニケーション能力を伸ばし、社会参加の質を向上させたい――。愛知県立みあい特別支援学校(志賀則彦校長、児童・生徒305人)は、(公財)パナソニック教育財団の特別研究指定校に選ばれ、人型ロボット「Pepper(ペッパー)」とタブレット端末を活用したコミュニケーション能力の育成や社会参加の質的向上に取り組んでいる。さらなるテクノロジーの進化を見据え、学びは今後どうあるべきか。試行錯誤を重ねながら教職員が一丸となり、新たなモデルの提示に臨む。

「ペパ太郎」は教職員仲間

ロボットが、まるで子供たちを見守っているかのよう――。高等部・作業学習の一コマを見た、最初の印象だ。時間で作業を区切るのが難しい生徒のため、音声を発するタイマーとして活用されているが、その様子は生徒を優しく見つめながら声援を送っているかのように見える。

同校ではペッパーに「ペパ太郎」と命名し、全校児童生徒には職員として紹介。職員室にスペースが用意され、傍らには「みあい特別支援学校 ペパ太郎様」宛てに児童から届いた年賀状がある。「ペパ太郎は暑さ寒さに弱いから」と空調は十分に配慮され、冬季にはダウンコートも用意される。ペッパーが届いた日を「ペパ太郎着任」と呼ぶなど、学校の仲間として大切に扱う様子が随所にうかがえる。

パナソニック財団の委託を受けアドバイザーを務める、帝京大学大学院教職員研究科の田村順一教授は「この学校の子供たちは、これまでに例のない感覚でロボットの存在を受け入れている」と話す。「『機械以上、人間未満』という微妙な位置付けだ」と見なし、「親しみと愛着を持って接しながらも、フリーズなどのトラブルがあったり、期待した反応が返ってこなかったりしても、ロボットの未熟さを感覚で見抜いて理解し、許容している」と分析する。

ESDとICT融合に向け
志賀則彦校長(右)と中川恵乃久中学部主事

同校は2009年4月開校という新しい学校だ。当初の全校児童生徒は185人だったが、10年目の18年度は300人を超え、教職員数138人の大規模校となった。教室不足のためプレイルームなどに壁を設けて対応したが、校舎は今も十分に開放的で明るい。教職員の連携も密に行われているという。

特色ある取り組みの一つに、ESDの視点に立って共生社会の実現を目指す学習活動の推進がある。14年9月には「ユネスコスクール」に加盟、16年9月に「サステイナブルスクール」に認定された。柱は▽自分の力を発揮する活動▽社会に参加する活動▽社会に役立つ活動――の三つ。

「みあいビジョン」として掲げるのは、知的障害教育の最先端となる「未来志向型特別支援学校」。新たな時代にふさわしいESD活動の実践として、17年度からペッパーを導入。「ESDの視点で取り組む未来型ICT活用実践」と題して研究を進めている。

2年目となる18年度には、管理職や研究スタッフの異動があり新体制を組み直す必要があったが、田村教授は「この学校に脈々と受け継がれている前向きな研究態度と先生方の努力で、異動による影響は最小限に抑えられた」と評価。「和気あいあいとした研究の雰囲気が素晴らしく、常に一体となって活動している。新たな課題に取り組む研究において必要な条件を満たしている」と語る。

多彩な活用に挑む
ペッパーを通じて他者との関わりを深める

教員らは自由な発想で多彩なアイデアを出し、協力し合いながら実現している。活用の場面は日常生活の指導から自立活動、生活単元学習、作業学習まで実に幅広い。

中でも小・中学部が進めてきた個別学習は目覚ましい成果を見せている。アプリ「ペッパーメーカー」を用い、子供たちがそれぞれ自己紹介として伝えたい内容を、動きと併せてプログラミング。ペッパーが独特の愛嬌ある姿でプログラムに従って発表すると、他の子供がその内容を評価する。自己表現と、互いに評価し合うことによる他者との関わりの深化が期待できる学習だ。

小・中・高等部合同でのプログラミング学習でも、小・中学部の子供が自分の趣味や好きな食べ物、行きたい場所などを堂々と発表し、拍手と称賛を受け「ぼくたち、やるね」と満面の笑顔を見せていた。

中学部主事の中川恵乃久教諭は「特定の人としか関われないという課題のあった子供が、ペッパーを活用した発表を通じて、徐々に関われる人や場面が広がった」と話す。

高等部の集会では、緘黙(かんもく)で人前に立つことができない女子生徒がペッパーを代理とし、柱の陰から操作して発表を行ううちに、他の生徒を前にしながら現場実習前の意気込みを伝えることができた。さらに、学習発表会で太鼓をたたくなど自信をつけた様子がみられた。

志賀校長は「本校は常に専門性の向上を求め新たな挑戦を続ける」と前を見据え、「『未来型ICT活用』と題した実践を地域の小・中学校に発信し、地域の特別支援教育力を底上げするセンター的な役割を果たしていく」と展望を力強く語った。