「早寝早起き朝ごはん」から生活習慣を考える 【生活習慣改善特集】

子供たちの基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上を目指し、活動が始まった「早寝早起き朝ごはん」国民運動。これまでの運動の成果について文部科学省担当者に聞いた。また、この運動から見えてくる生活習慣の改善について、宮原公子桐生大学医療保健学部栄養学科教授に解説いただいた。

文部科学省総合教育政策局地域学習推進課家庭教育支援室長 齋藤 憲一郎

子供たちの健やかな育ちを応援
国民運動を継続的に推進し

子供たちの健やかな成長のために大切な、適切な運動や調和のとれた食事、十分な休養・睡眠を社会全体で推進する「早寝早起き朝ごはん」国民運動は、2006年のスタートから13年目を迎えました。

この運動の取り組みにより、子供たちの基本的な生活習慣を整えることが、子供たちの学習意欲や体力、気力を高める上で重要だという認識が広く定着しました。各地域で、学校とPTAが連携した取り組みや、地域の団体と教育委員会、保健福祉部局が連携した取り組み、さらには企業とのタイアップなど、さまざまな活動が展開されています。

今年6月に閣議決定された第3期教育振興基本計画では、「社会全体で子供たちの生活リズムの向上を図るため、子供が情報機器に接する機会の拡大による生活習慣の変化等の状況を踏まえつつ、「早寝早起き朝ごはん」国民運動の継続的な推進等を通じ、子供の基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上につながる運動を展開する」ことを掲げるとともに、「朝食を欠食する児童生徒の割合の改善」「毎日、同じくらいの時刻に寝ている、毎日、同じくらいの時刻に起きている児童生徒の割合の改善」を測定指標としています(※参考1)。

こうした子供の生活習慣づくりに関しては、全国学力・学習状況調査の結果として、毎日朝食を食べている子供や、毎日同じくらいの時間に寝起きしている子供、家の人と学校での出来事について話をしている子供、携帯電話やスマートフォンの利用時間が短い子供ほど、平均正答率が高い傾向にあります(※図1~4)。また、毎日朝食を食べている子供ほど、体力テストの得点も高い傾向にあります。

基本的な生活習慣を身に付けるためには、家庭でルールを決めると共に、自分自身で生活を主体的にコントロールする力を身に付けさせることが必要であり、家庭と学校、地域が連携して取り組みを推進することが重要です。

このため、文科省では、生活リズムが乱れやすい環境にある中高生を中心とした子供の生活習慣づくりに関する普及啓発を進めるため、科学的知見を踏まえた資料を作成し、文科省ホームページに公表しています(「早寝早起き朝ごはんで輝く君の未来~睡眠リズムを整えよう!~」(「中高生等用資料」および「指導者用資料」))。

同資料にある「睡眠チェックシート」の活用に取り組んでいる自治体・学校からは、例えば、十分な睡眠時間を確保することで体調が良くなり学習に集中できている自分に気付き、早寝を意識する生徒が増加した、あるいは、睡眠不足が原因で保健室を利用する生徒が減少しているなどの成果も報告されています。

このほか、全国各地で取り組まれている「早寝早起き朝ごはん」運動の活動について、隔年で文部科学大臣表彰を実施していますが、これらの活動についてもホームページに掲載していますのでご覧ください。

子供たちを取り巻く社会や環境が大きく変化する中で、家庭教育は全ての教育の出発点です。身近な相談相手がいないなど家庭教育を行う上での困難さが指摘される中で、家庭・学校・地域が連携協働し、「社会総掛かり」で子供たちの育ちを支援していくことが大切です。その一つの取り組みが「早寝早起き朝ごはん」の国民運動です。今後ともこの活動をより一層進めていき、子供たちの基本的な生活習慣の定着を含めた健やかな育ちを応援していきたいと思いますので、ご支援、ご協力をいただきますよう、お願い致します。

参考1

・朝食を欠食する子供/小学校6年生: 5.5%、中学校3年生: 8.0%

・毎日、同じくらいの時刻に寝ている子供/小学校6年生: 76.9%、中学校3年生: 74.2%

(出典)

・参考1、図1~3は、文部科学省「平成30年度全国学力・学習状況調査」より

・図4は、文部科学省「平成29年度全国学力・学習状況調査」より

桐生大学医療保健学部 栄養学科教授 宮原 公子

栄養教諭が中核的役割を
もっと学校給食を活用して

子供たちの食の危機が唱えられ始めたのは、昭和の終わり頃ではないでしょうか。中学校の学級指導で「成人病予防の食生活」という主題で研究授業が公開された報告があります。1997年以前は「成人病」と呼ばれ、中高年がかかる疾患とされていました。現在では、生活の仕方次第で誰もが発症し、発症時期が低年齢化したことから「生活習慣病」と改称されました。

その背景には社会環境が大きく変化し、大人の生活・食生活が子供たちに影響を与えているという報告事例が多くあります。食に関する諸問題は、2005年施行の食育基本法制定の背景の一つとされています。中でも子供たちの朝食の欠食率が、年々増加したことが喫緊の課題としてあげられました。

そのような中、06年から国民運動として展開されている「早寝早起き朝ごはん」はPTA、青少年・スポーツ団体および経済界など、幅広い関係団体で構成されています。17年現在、298の企業・団体や個人が運動にかかわり、13年目を迎えています。文科省と連携をとりながら、日常的な食行動「朝ごはん」をターゲットに、課題解決を図ることの期待がさらに膨らんでいます。

朝ごはんの大切さは、誰もがわかっています。それにも関わらず、毎日食べる行動に結びつかない課題解決には、その要因を分析する必要があります。2017年国民健康・栄養調査の結果をみると、20代の男性女性共に欠食率が最も高いことに注目が集まります(図1)。

20代以降の世代は、幼児・学童・思春期の子供を持つ親世代ということになります。家庭、とりわけ親の生活・食生活習慣が朝食に影響を及ぼすことは周知の事実です。親世代が欠食する理由には、忙しい、食欲がない、時間がない、用意されていないなどがあげられています。最も着眼すべき点は、朝食を欠食するようになった時機は、小中学生と比較的早い時期であることです。

このような状況は、負の連鎖を生み子供の欠食につながることが明らかにされています。となると、早く寝て、早く起きる子供は、朝ごはんを食べて登校している、しかも、主食+主菜+副菜がそろっている、というデータを示すことが食育のポイントになります。早寝・早起きはなぜ大切なのかという当たり前のことからの啓発が習慣化につながります(図2)。

しかし、前述のように朝食を食べることの大切さはわかっているが、実行できないところに課題があります。この課題を解決するには、知識や態度の習得だけではなく、朝食をとる行動を自ら実行する食環境を家庭や社会で整えていくことが、改善につながります。

さまざまな場が考えられますが、もっと学校給食を活用することを提案します。なぜなら、学校の食育には、教育活動に位置づけ教科などで知識を習得し、給食時間で体験学習ができ、行動につなげられる自助集団があります。友達や先生と楽しく食事をしながら楽しく学べ、家庭や社会にも発信できます。

そのためには、給食が食育の教材となるのが最も重要で、朝ごはんを食べるという食行動につながるモデルが求められます。学校給食の献立は、子供たちの生活・食生活の実態や発育発達・身体状況および社会環境などのアセスメントを反映させることから始め、朝食に関連する課題を抽出していきます。思い付きや嗜好(しこう)を優先した提案では、食行動変容までには至りません。

学校の食育を推進している栄養教諭は、推進の中核的役割を果たすことが職務とされています。児童生徒に食事を提供するにとどまらず、家庭や地域を巻き込み、計画的に食育を推進していくことができるのです。その社会的な影響効果は大きいものがあり、結果評価を出していくことが期待されます。

「早寝早起き朝ごはん」を国民運動としてさらに高めることは、知識や態度が行動として伴うことが重要です。学校の食育は教育的に展開することができ、家庭・社会から国民運動として環境を整える社会的食育と連携をとることで、近い将来、朝ごはんを食べていない子供0%成果を出せるものと期待しています。