学習者用デジタル教科書で 対話の質を高め、深い思考に導く

埼玉県戸田市立戸田東小学校

「AIでは代替できない能力」「AIを使いこなす能力」を身に付けることを重視し、産官学民が協力して教育の現場で積極的なICT活用を目指す埼玉県戸田市――。同市教委の研究委嘱を2016年度から3年にわたり受けている、同市立戸田東小学校(小代元志校長、児童899人)では「言葉を通わせ、心を通わせ、共に高め合う児童の育成」をテーマに、「国語科」「経済教育」を中心にICTを活用した実践研究を積極的に進めている。

「国語科」では「対話の質を高め、深い思考に導いていくこと」を目指し、18年の7月からは3・4年生9クラスで学習者用デジタル教科書(以下、デジタル教科書)を導入し有効活用しているのが特長の一つだ。

■デジタル教科書で考えを可視化し対話を促す

1月24日行われた研究発表会では、髙橋健太教諭による4年生の国語の授業が公開された。児童の考えを深めるため、効果的にデジタル教科書(光村図書出版(株))を用いた授業だ。

要約に必要な言葉を抜き出していく

授業では、「ウナギのなぞを追って」を教材に、要約文を書く際に必要な目的に合った言葉を抜き出し考えを整理することをねらいとした。

まず、「長期間の調査(ウナギに関する)」「レプトセファルス(ウナギの幼生時代)」「ウナギの一生」といった課題ごとに3グループに分け、各自が興味を持った箇所について必要な言葉を短く抜き出すように指示をした。

児童は、1人1台iPadを使って学習。これにはデジタル教科書がインストールされている。教材文を自由に切り取って試行錯誤できるマイ黒板機能を使い、自分が興味をもった箇所について必要な言葉を抜き出していく。さらに、デジタル教科書の書き込み機能を有効に使い、線を引いたり、囲ったり、色分けしたりしながら、要約文の作成を目標に自分の考えをまとめ可視化していった。

その後、同じ課題に取り組んだ児童同士をグループ(3~4人)にし、自身のまとめた内容を発表し合う場を設けた。「なぜ、そのようなまとめ方をしたのか。その言葉は本当に必要なのか」――、目的が同じでも、それぞれ児童のまとめ方は異なる。そこを対話の糸口としてお互いに説明し合い、質問し合う状況を作り出していく。デジタル教科書のマイ黒板機能で思考を止めることなく、自分の考えを自由に表現して対話を深め、各人がまとめた内容の質を高めていった。

最後に、髙橋教諭は教材文と類似した事例を扱った設問式のワークシートで児童の理解度を確認し、学んだことを生かして自分と向き合う時間を与えた。

■デジタル教科書は授業改善に有効

小代校長は「『主体的・対話的で深い学び』の実現に向け、全学年でタブレット端末を効果的に活用し、授業改善を図り教育の質の向上に努めている。3・4年生の国語科でのデジタル教科書の活用により、教員の授業が提案型へと変わり、子供の思考が可視化され、学び方も変わった。対話の質を高め、深い思考に導く上で効果を上げている」とICTの活用は学校教育において欠かせない、と語る。

一方、「今回、実施した授業は、どの学校でも近い将来行われる授業だ。ICT環境整備状況には地域格差があるが、その必要性を教育現場の教員が啓発していくことが大切」と課題も指摘した。

児童同士のグループでまとめた内容を発表し合う

授業を実践した髙橋教諭は、「デジタル教科書のメリットは、自分の考えを可視化できること。児童が試行錯誤しながら教材文との深い対話を実現することで、思考や表現を促している」と利点を強調する。

さらに、「導入当初は機能面をはじめ、デジタル教科書の有効な使い方が分からなかった。使っていくうちに機能にも慣れ、有効性が認知されるようになり、ベテラン教員も触発されていった。授業での活用が進むと、『こんな場面でも使えるね』など積極的に意見が出るようになった」と教員同士の意見交換により、授業改善におけるデジタル教科書活用の有効性が広がっている点にも言及した。

■ICTは興味の対象ではなく学習者のツール

髙橋教諭はデジタル教科書も含めICT活用の留意点に関して「まずは児童に対し、ICTを興味のある対象から学習者のツールとして認識させることが第一段階。最初は触りたくてしかたがない。『やってごらん』というスタンスから始め、授業での活用シーンを模索していきながら、児童の思考の妨げにならないように、目的だけをきちんと伝えることが大切」と指摘した。