新指導要領にデジタル教科書 19年度は教科書の転換点

新学習指導要領の全面実施に合わせ、教科書も新しくなる。19年度からは学習者用デジタル教科書の併用もスタートし、教科書の役割は大きな転換点を迎えている。4月10日の「教科書の日」に合わせ、文科省初等中等教育局教科書課の森友浩史課長に、これからの教科書に求められる役割について聞いた。

――教科書が日本の公教育に果たしてきた役割とは。

教科書は学校の教育活動における主たる教材と位置付けられており、子供たちの教育に非常に大きな役割を果たしている。レイアウトや記述内容の工夫など、教科書発行者のさまざまな努力によって、各学年で学習する内容がとても分かりやすくまとまっている。

さらに、4月の新年度に合わせて全国津々浦々の学校に確実に教科書を届ける完全供給の実施は、日本の公教育を支える基盤の一つとなっている。特に昨年は日本各地で非常に大きな自然災害に見舞われたが、関係者の尽力によって、被災して教科書がなくなってしまった児童生徒に対して、速やかに教科書が供給された。学校の再開には、教科書は欠かせない存在だ。

また、文科省では教科書バリアフリー法に基づき、教科書発行者からの教科書データの提供とボランティア団体の協力を得て、教科用特定図書等として、拡大教科書、点字教科書、音声教材などの普及に取り組んでいる。

このうち音声教材は、発達障害などにより、教科書で文字を追うことが難しい子供に対し、パソコンやタブレット端末などを利用して音声による読み上げをするもので、年々利用実績は増えているものの、まだ全国的な認知度は低い。利用者からは効果があったという声も届いている。もし発達障害などで教科書を読むことにストレスを感じている子供がいれば試してみてほしい。文科省のウェブページに概要がまとめられている。

――これからの教育における教科書の役割は。

先般、小学校の新学習指導要領の実施に合わせて、新しい教科書の検定が行われた。特に小学校では、外国語が新しい教科として位置付けられ、検定教科書も発行される。

新学習指導要領に基づいた新しい教科書では、新学習指導要領における主体的・対話的で深い学びを実現する上での工夫などが施されており、教科書は一層重要な役割を果たすようになるだろう。

また、デジタル教科書をどう位置付けていくかという議論もある。今年4月から、改正学校教育法をはじめとする関連法令が施行され、学習者用デジタル教科書が学校現場で紙の教科書と併用できるようになる。制度としてデジタル教科書も使えるようになる中で、教科書の可能性がより一層広がる。学校現場でデジタル教科書の活用を広げるには、ICT環境の整備も合わせて進めていく必要があるだろう。

一方で、紙の教科書も大切な教材として位置付けられていることに変わりはない。デジタルと紙の良さをうまく組み合わせて活用してほしい。また、デジタル教科書の効果的な活用では、どうすれば子供たちの興味関心を引きながら授業を展開できるのかをより多くの教師に知ってもらうことが重要だ。

文科省としても、昨年末に「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」を作成し、全国の教育委員会に配布したのをはじめ、デジタル教科書の実践事例集も用意する。これらによって効果的な使い方を理解してもらった上で、各学校でデジタル教科書を活用してもらい、そこで得られた効果を基に、ICT教育の推進などに役立ててほしい。文科省は来年度、デジタル教科書の効果的な実証研究に取り組む。学力面や学習面、健康面からデジタル教科書の本格的な検証を進めた上で、今後の在り方を検討していきたい。

――教員に向けてメッセージを。

教科書は子供たちの学びがより充実したものになるよう、教科書会社でいろいろな工夫が施されている。実際に教科書を活用して教育をするのは全国の教師の方々であり、その役割はとても大きい。文科省も教科書に関する施策を着実に進め、学校現場を支援していきたい。

教科書が果たす役割の重要性に鑑み、日本では1963年に無償措置法が施行され、以来、60年近く義務教育における教科書の無償給与制度が続いている。教科書の無償は当たり前のように受け止められているが、その財源は税金でまかなわれている。教科書がなぜ無償なのか、その意味を保護者や子供が改めて考える機会が大事なのではないかと思っている。新しい教科書を手に取った子供たちや保護者に対して、ぜひ教科書の役割や無償給与に込められた意味に触れる機会をつくってもらえたらとも思っている。