できる対策を確実に!! 『熱中症対策特集』

昨年の夏は記録的な猛暑に見舞われた。夏本番を前に学校管理下で熱中症による事故を発生させないため、各方面から注意喚起のポイントや具体的な取り組み事例をまとめて紹介する。

熱中症事故の防止について 教育関係者の皆様へのお願い
文部科学省総合政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課 安全教育推進室
安全教育調査官 森本 晋也

昨年の夏は猛暑に見舞われ、児童が校外学習後に死亡するという大変痛ましい事故が発生しました。また、本年5月には、運動会の練習中や校外学習後に熱中症の症状を訴え、病院に搬送される事案も起きています。

学校管理下での熱中症の発生状況については、2018年度に独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が行った災害給付の支給状況を見ると、熱中症に伴う医療費の支給が、速報値で7082件ありました。熱中症の発生状況は、17年度が4940件、16年度が4694件で、15年度が4452件と近年増加傾向にありましたが、昨夏は記録的な猛暑により急増しています。

熱中症事故の多くは体育・スポーツ活動中に発生していますが、運動部活動以外の部活動や、屋内の授業中にも発生しております。また、暑くなり始めや急に暑くなる日などの体がまだ暑さに慣れていない時期、それほど高くない気温(25~30度)でも湿度等その他の条件により熱中症事故が発生しています。

熱中症事故の防止のためには、環境条件を把握し、それに応じた運動、水分補給を行うことが大切です。暑い時期の運動は、なるべく涼しい時間帯に行い、休憩を頻繁に入れ、活動前には適切な水分を補給する。さらに、必要に応じて水分や塩分の補給できる環境を整え、活動中や終了後にも適宜補給を行うなど、こまめに水分を補給することで、熱中症を防ぐことが可能です。
また、環境条件の評価にはWBGT(暑さ指数)などが望ましいとされています。WBGTなどにより環境温度の測定を行い、「熱中症予防運動指針」を参考に、活動の実施について柔軟に対応を検討していくことも大切です。

また、児童生徒らには体格や体力の差があり、日によって体調が異なる場合もあるため、健康観察などにより各児童生徒の個別の状態の把握に努める必要があります。

そして、児童生徒らが実際に不調を感じた際にはその旨を申告することや、他の児童生徒等の不調に気付いた場合にはすぐに教職員に伝えるようにすることなど、教職員が児童生徒らの体調変化に気付きやすい環境を作っていくことが重要です。

その際、児童生徒ら自身が熱中症について理解しておくことも大切で、安全管理と安全教育を一体的に取り組むことで効果的な対策となります。さらに、長期的な気象状況を踏まえて、必要に応じて、夏季における休業日の延長や臨時休業日の設定等を検討することも考えられます。

万一、熱中症の疑いのある症状が見られた場合には、早期に水分・塩分補給、体温の冷却、病院への搬送など適切な処置を行うことが必要です。こうした対応を学校において確実に行うためには、常日頃から各学校の実情に応じて学校安全に関する組織的な取り組みや教職員の資質・能力の向上等にしっかりと取り組んでいることが重要です。

各学校におかれては、既に職員研修や訓練等を通して、熱中症についての理解をはじめ、熱中症予防のための対策、熱中症事故発生時の対応などの共通理解が図られていることと思いますが、熱中症事故が多くなる時期の前に、下記の資料などを参考に対応策の内容について再度確認をお願いします。

【参考資料】

○文科省
「「生きる力」を育む学校での安全教育」(平成31年3月)、「学校の危機管理マニュアル作成の手引」(2018年2月)、「学校における体育活動中の事故防止のための映像資料」(2014年3月)、ウェブサイト「文部科学省×学校安全」

○独立行政法人日本スポーツ振興センター
「熱中症を予防しよう―知って防ごう熱中症―」(2019年3月)及び教材カード、「学校屋外プールにおける熱中症対策」(2019年3月)、ウェブサイト「学校安全Web」

○環境省
「熱中症環境保健マニュアル2019」(2019年3月改訂)、ウェブサイト「熱中症予防情報サイト」

熱中症予防で指導や対応を徹底
埼玉県立春日部高等学校養護教諭(全国養護教諭連絡協議会会長) 村井 伸子

本校の熱中症対策は4月から始まります。

春日部高等学校は養護教諭複数配置校。村井伸子養護教諭(右)と山﨑則子養護教諭(左)

年度当初の体育は、新体力テストに向け1500メートル走からスタートです。4~5月は気温が高い日も増え、65分の授業後には、足がつった生徒や気分不快や頭痛を訴える生徒が大汗をかいて来室してきます。保健室の冷蔵庫には、常にスポーツドリンクが確保されています。生徒の来室状況や様子はその都度体育科へ報告し、連携しながら、走る前の水分補給などの熱中症予防のための指導や対応の徹底を図っています。

また、本校は、文武両道の学校で、運動部も大変盛んな男子校です。夏休みには、さまざまな校内講習が実施されますが、一定期間は、部活動も講習もどちらも参加できるよう計画されます。

毎日、5段階表示と運動指針をマグネットシートで貼り替える

ここ数年猛暑が続くようになり、熱中症予防の観点から、生徒の健康安全のため、講習と部活動の在り方について学校全体で検討する機会がありました。その結果、気温が上昇する午後の時間の部活動を避けるため、講習を午後に設定するよう見直されたところです。

〔具体的な取り組み〕

5月の職員会議で、光化学スモッグ対策とともに熱中症対策に関して説明する機会を設けています。熱中症が起きやすい条件、症状、対処法などを分かりやすく資料にまとめ、授業や部活動における熱中症の予防や対応の徹底が図れるようにしています。その際、年度当初に確認した緊急体制の再確認も必ず行います。

同時に、職員室前の廊下には、熱中症注意目安付温度・湿度計と手作りの熱中症予防情報掲示板を登場させます。そこには、朝7時の春日部市の熱中症情報をもとに、その日の最高気温と5段階の基準で分類される熱中症予報を表示します。書き替えることなく更新できるよう、5段階表示と運動指針をマグネットシートに書き込んでおいて、貼り替えて更新するようにしています。

連絡用ホワイトボードで熱中症予防情報も確認できるようにしている

職員室前の廊下には連絡用ホワイトボードがあり、毎朝週番がその日の連絡事項の確認に来ますが、その隣に熱中症予防情報掲示板があるので、週番は、その情報も確認することになっています。

もちろん、教職員も全員が確認できるものです。この掲示板と熱中症注意目安付温度・湿度計は、大運動会が終了する9月下旬までの期間熱中症予防対策として活用します。

〔生徒への指導〕

熱中症は、何より予防が大切です。生徒が予防法を身につけ自己管理できるよう指導の機会をつくっています。

保健だよりの活用: 毎月発行している保健だよりですが、6月には、熱中症予防に関する指導記事を掲載しています。また、保健委員コーナーもあり、保健委員目線での記事やコメントも掲載します。

運動部の活動場所に資料掲示している

▽運動部対象の救命講習会=毎年7月に、消防署に講師を依頼して、運動部代表生徒対象の救命講習会を開催しています。心肺蘇生法の講習が中心ですが、夏休み前ということもあり、熱中症予防についても触れていただき、夏季休業中の安全な活動に生かせるようにしています。

▽運動部の活動場所に資料掲示=運動時の熱中症予防のために必要な水分補給、休憩、熱中症の兆候、救急処置等、ポイントをまとめた資料を各運動部に配付しているが、それを体育館(4カ所)、柔道場、剣道場、卓球場等、運動部の活動場所に掲示し、生徒自らが予防、管理できるようにしている。

今年度版の熱中症教材カード 予防法や対応などをまとめる
(独)日本スポーツ振興センター

(独)日本スポーツ振興センターは、今年3月の「熱中症を予防しよう ―知って防ごう熱中症―」の刷新に続き、2019年度の熱中症教材カードを作成した。

幼稚園・保育所等・小学校低学年向けの「あついな~とおもったら…」、小学校中学年・高学年向けの「熱中症を予防しよう どうして熱中症になっちゃうの?」、教師・顧問向けに熱中症対応フロー「体育・スポーツ活動中の熱中症を予防しよう !!」の3種類で、それぞれ熱中症の予防法や発生してしまった際の対応などを分かりやすくまとめた。

幼稚園・保育所等向けでは、▽帽子をかぶる▽水分補給▽すずしいところで休む▽気分が悪くなったりしたら、すぐに先生や大人に知らせる――と、外に出る約束事を、ひらがなとイラストで説明。小学校中学年・高学年向けでは、熱中症予防に加え、熱中症の原因や症状などについてイラストで説明。教師・顧問向けでは、熱中症予防の五つの原則と、熱中症の症状別の対処法を説明している。

同センターでは、昨夏が記録的な猛暑となったことも踏まえ、今後、各学校などで、学校屋外プールにおける適切な熱中症予防策が講じられることで学校における安全な水泳活動が実施されるよう、調査・分析・研究し、「学校屋外プールにおける熱中症対策」をまとめた。

詳細は同センターの学校安全Webまで。