とことん使って経験値を上げる 賢明学院中学高等学校

全生徒がタブレット端末所有 日々の授業や生活の中で活用

文科省の調査によると、公立中学における教育コンピューター1台当たりの生徒数は5.5人(18年3月現在)。ICTを活用した教育が実を結ぶのは、全ての生徒が日々の授業や生活の中で使いこなしてこそ、と考える堺市の賢明学院中学高等学校(大原正義校長、生徒数708人)では、生徒全員がタブレット端末を所有し、授業のみならず家庭学習や生活の中でも活用している。

情報部部長も務める森堅詞教諭

期末試験の目前とあって、この日中学校1年B組の数学の授業は、担当の森堅詞教諭が準備した問題を解く演習に充てられた。生徒たちは各自のタブレット端末から専用サーバー上に置かれたフォルダにアクセスし、問題のファイルを開いて解き始める。数学は数式の入力が難しく、タブレット端末を使い始めて日が浅い生徒もいることから、解答は紙に書く形をとっていたが、中には付属のタッチペンで画面上に計算式を書き込む生徒もいた。

問題を解き終えた生徒は、森教諭に「数学でもいいし、英語やってもええで」と自習を促され、各教科の教材が網羅された同校の学習ポータルサイトから、おのおの苦手な箇所を再点検し始めた。生徒同士で教材について教え合う姿もみられ、日々の授業の中で活用されている様子がうかがえる。

中学までタブレット端末を使ったことがないという生徒は「最初は操作が難しかったけれど、毎日使って1カ月くらいで慣れた」と笑顔を見せる。また、ある生徒は「分からないことはすぐに調べられるからタブレットはとても便利。課題をやったり、分からない科目に戻って復習したり、自由にできるのがいい」と話した。

「利用制限を設けない」方針
付属のタッチペンを活用する生徒も

同校は中高一貫教育で、他校に先駆け約10年前からICT環境の整備を進めてきた。当初は高校生のみだったが、校内のWi-Fiを完備し、4年前からは中学生にも対象を広げた。高校ではプレゼンテーション指導に力を入れており、コンピューターを活用する場面も多いことから、中学時から経験を積み上げるようにした。タブレット端末は中学入学時に全員が購入し、個人所有の形を取っているが、利用に際して特に制限は設けていないという。

情報部の部長も務める森教諭は「入学後すぐ、生徒と保護者を対象に専門家による解説の場を設け、ネット上に潜む危険について十分説明したのちにタブレットを配布しています。情報科の授業の中でも繰り返し教えますが、制限を掛けていないので、見ようと思えば闇サイトも閲覧できるし、不用意に訪れたページでウイルスに感染することがあるかもしれない。でも、それも情報教育の一環だと考えています。実際に使って失敗もしながら、やってはいけないことを学び、情報リテラシーを高めるためです」と語る。

コストダウンと効率アップも実現

生徒全員がタブレット端末を活用することで校務にも変化が生じた。同校では2年前からペーパーレス化を進め、一部の教員は生徒へのプリント配布をやめてPDF化したファイルを参照させる形に変えた。その結果、コストダウンの実現と同時に、プリント作成に費やしていた時間と労力を大幅に短縮・削減できた。

「プリントを印刷して、折って挟み込んでホチキスでとじて……。それまで冊子状にした複数枚のプリントを担当クラス全員分作成しようとすれば、1コマ分くらいの時間が必要でした。今は自分のパソコンで作成したPDFデータをフォルダに格納するだけですから、授業の中で配る時間も短縮できる。時間とコストの削減効果を実感しています」(森教諭)

定期的な校内アンケートの実施・集計にもタブレット端末を役立てている。アンケートはアプリを使って作成し、そのQRコードを生徒が端末に搭載されたカメラで読み取り回答する、という流れ。いじめアンケートなどで即時対応が必要な場合でも、紙で配布して回収・手集計する方法と比べ、圧倒的に早く情報をつかむことができる。

教育現場が求めるのは「頑丈さ」
キーボード面を回転させるとノートパソコンのようにも使える

現在、中学1年生が使用しているタブレット端末は(株)マウスコンピューター製の「MousePro-P116B」。昨年度末に候補を2社に絞り込み職員室でアンケートをとった結果、ほとんどの教員が同機種を選び、今年度からの導入を決めた。決め手は「頑丈さ」だという。

「生徒が落として画面を割るなんてしょっちゅう。毎年何台も修理に出さなければならないのが悩みの種でした。破損がひどく修理費用が高額になる場合は保険申請しますが、その都度何枚にもわたる書類を現場の教員が書かなければならないし、審査が通るのを待って修理に出すから、生徒はその間自分の端末を使えない。これは全教員にとって大きな課題でした。ですから、少々乱暴に扱っても壊れない頑丈さが機器選定の一番のポイントでした。現時点では、メーカー保証で対応してもらえる程度の破損が2件のみ。昨年度と比べると激減して、他の教員からも好評です。またハンドルが付いているのでカバーが要らず、持ち運びしやすい点もいいですね」と森教諭。

また、キーボードとの一体型でノートパソコンのように使える点も大きな選定理由だったという。「最近は生徒1人1台タブレット端末を実現している中学校もさほど珍しくありませんが、当校はいち早くICT活用に取り組んできただけに、常に一歩先を行こうと考えています。高校や実社会での活用を想定すれば、できるだけ早い段階でキーボードを使わせたい。MousePro-P116Bはその希望に応えてくれるものでした」と同機種を評価した。