ICTは目的到達のため 多様なルートを提供するツール

東京学芸大学附属小金井小学校主催のセミナーで

新学習指導要領においては、生涯にわたる学習と生活の基盤となる資質・能力として情報活用能力が記載されている。今年4月からは「学習者用デジタル教科書」を紙の教科書と併用・代用して使用することが一定の条件のもとで可能となった。

さらに6月下旬には「学校教育情報化推進法」が成立し、国や地方における学校教育の情報化に向けた推進計画の策定とそれを実施する責務が明記され、全ての子供の多様なニーズに応えるため教育現場でのICT活用は必要不可欠なものとなっている。

そのような中、東京学芸大学附属小金井小学校主催の「ICTに学びを救われる子はあなたのそばにいる 東京学芸大学附属小金井小学校ICT×インクルーシブセミナー/協力:日本マイクロソフト(株)、光村図書出版(株)」が7月13日に日本マイクロソフト(株)本社で開催された。

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デジタル教科書を活用しながら児童同士で話し合う

授業の中で子供が感じる「困りごと」は、障害の有無は関係なく多種多様であり、そのことに寄り添うことがインクルーシブ教育と考える同校では、「子供たちに何を学ばせたいのか、何を学んで欲しいのか」を常に考えながらICTを活用している。

今回のセミナーでは、小学校4年生と6年生の国語科の授業実践が公開された。

4年生の授業は学習者用デジタル教科書(以下、デジタル教科書)を活用して、興味を持った箇所を抜き出し、紹介文を作成し発表するという内容。授業で取り扱った作品に関して3つのテーマに分け、各人がそれぞれのテーマについて興味を感じた本文箇所をデジタル教科書(光村図書出版(株))の「マイ黒板機能」を使って抜き出した。

これに書き込み機能などを使い、線を引いたり、囲ったり、色分けしたりしながら紹介文をまとめ、同じテーマのグループと異なるテーマのグループの児童同士が話し合いを重ね、紹介文の内容を高めていった。

デジタル教科書活用のメリットは、自分のまとめた考えを可視化できることで、思考を止めることなく自分の考えを自由に表現し他者との対話を深めることができる、という利点を具体化していた。

授業を行った大塚健太郎教諭は「デジタル教科書は自分の思考を整理し可視化した内容が履歴として残るので、児童は自信を持って話すことができる。また、クラスの仲間が意見や助言などを書き込むことで学級内での交流も盛んになる。タブレットPCやデジタル教科書などのICT活用は、ローマ字入力が得意な子、耳から聞くことが得意な子、目で理解することが得意な子など、個性に応じた交流が自由自在かつ必要な時に必要な早さで対応できる」と述べた。

実物の絵を鑑賞して各自が観点を文章化する

6年生の授業では、「自分の見方で絵を見て、考えをまとめ考えを伝えよう」という内容。

画家の長田絵美さんの実物の絵(3点)を提示し、そのうちの興味を持った絵について各自が自分なりの視点で観賞し、見て読み取ったことや感じたことを適切な表現を用いて文章化してMicrosoft Office 365 Formsに書き込み、児童がまとめた文章を集約。

その後、テキストマイニング(大量の文章データから有益な情報を取り出すこと)を行い、文章の中で出現頻度が高い単語を抜き出し、その情報を大型提示装置に映し共有した。児童はこれらを基に話し合い、最後に自分の考えをPowerPointでまとめ、Microsoft Office 365 Teamsに集約し、まとめた内容について全員で共有した。

最後は「作者はどんな人だろうか」と問いかけ、児童に意見させた上で長田さんご本人を登場させる驚きの展開であった。

児童が書いた文章の中で出現頻度が高い単語を映し出す

授業を行った鈴木秀樹教諭は「人前での発表が苦手な児童でも、素晴らしい考えや意見がある。そのような児童に対しICTは発表し交流する機会を与えることができる」と指摘した上で「今回、本物の絵を使ったのには理由がある。同じ絵でも光や角度などによって表情が変わる。児童には『同じ絵を見ているが、それぞれ違うことを考えている』ということを体感させたかった。それが理解できれば、『社会の中でお互いの違いを認め合うことにつながるのでは』と考えた。そのためには、表現力が大切になってくる。自分の考えを、どんな表現を使って伝えることがよいか。表現によって伝え方が変わることを子供たちに学んで欲しかった」と思いを述べた。

中川一史放送大学教授は「学習者用コンピュータ環境において視野に入れるべきことは、個々の実態に寄り添い、学びを格調すること。適切なICT活用のためには、活用の意図(必要な情報の主体的な収集なのか、思考の可視化や共有なのか、創造的な表現・制作なのか、根拠や理由を示す説明・説得なのか)を考えること。協働ツールの使用は、すべての友達の考えに触れることができ、考えや思いを俯瞰・整理することができる利点をふまえ、確認や収束の時間や場の保証が必要であることを理解し、誰の何を参考にするのか教師も児童も視点をもって、たくさんの情報を見ることが重要である」と指摘した。