一人一台のタブレット環境について考察 パナソニック教育財団が報告会

ICTを活用した授業実践を支援している(公財)パナソニック教育財団(小野元之理事長)は8月1日、大阪市のインテックス大阪で実践研究助成研究成果報告会を開催した。

第43回(2017年度)特別研究指定校に選ばれた大阪初芝学園はつしば学園小学校、北海道教育大学附属函館中学校、神奈川県川崎市立川崎高等学校附属中学校、京都府長岡京市立長岡中学校の4校の成果が発表され、参加者の関心を集めた。

同財団の一般助成は、1年間の研究に50万円。特別研究指定校には2年間の研究に150万円である。これに加え、特別研究指定校には財団指名の研究者が6回にわたり学校を訪問し助言をすることになっている。

今回の成果報告会は、4校の実践研究の知見などを踏まえ、一人一台のタブレットPC環境における情報教育の可能性や留意点を明らかにすることが狙いで、テーマを「実証検証!一人一台のタブレット環境の活かし方~情報活用能力の育成を中心に~」とした。

各校の成果の共通点をみると、ICT活用をきっかけに協働的な学びを促し学習目標に向かっていく点、ICTの活用が学び合いと密接に関わり合いながら教科学習の狙い達成のために効果的に活用されている点、ICTだけでなく紙など他のメディアと組み合わせ、必要な時にICTを活用している点(メディアミックスの授業)などがある。

各校とも普通教室のICT環境は、整備段階が異なるところもあり、それぞれで情報活用能力の育成のカリキュラムを開発し、立ち位置を確認できるようにするなど工夫を凝らしていた。

続いて、研究者から4校の成果と新学習指導要領を踏まえながら指導助言がなされた。

一人一台のタブレット端末環境における情報教育の留意点について、小柳和喜雄奈良教育大学教授は、「ICTが教具から学習具としてシフトしてきたことで、情報活用能力が子供たちに求められるようになった。子供たちが情報活用能力を身に付けているかどうか、それを生かしながら思考が深まっているか、学びに向かう力が育成されているかを判断しようと思ったら、タブレット端末に何を残すかを考え、ICTを評価の道具として位置付けていくことも必要である」と指摘した。

浅井和行京都教育大学教授(副学長)は、「児童生徒の学習状況を把握し、実態をしっかりと捉えることが、児童生徒が考えていることの可視化につながる」と述べた。

吉崎静夫横浜国立大学客員教授は、「はじめのうちは、教師がタブレット活用の視点(どの授業場面、どの学習形態で活用するか)を明確にするが、次第に一人一台の環境が整備されるのであれば、学習ツールとして活用するかどうかは、児童生徒の判断にまかせ、学校の環境下の中で見守ること。また、タブレット活用に慣れるだけでは情報活用能力の育成を意味していないことに気付くように。文科省の情報活用能力調査の結果(小・中学生とも比較したり、関連づけたりする力が弱く、相手の状況を理解して情報を発信することに課題があるなど)を踏まえ、情報活用能力を育てるようなカリキュラムと授業を行い評価する必要がある」と論じた。

コーディネーターを務めた木原俊行大阪教育大学教授は、「一人一台のタブレット環境は、主体的・対話的で深い学びが充実し、思考力、判断力、表現力だけではなく、未知の状況に対応できる力を育成しやすくするための新学習指導要領対応といえる。その環境下においては学習状況の把握をしつつ、学習評価のツールとしてタブレット利用の充実を図ること。また、スムーズかつ充実した利用を図る上でも情報モラル面に特に注意する必要がある」と結んだ。