国語科における「対話的な学び」に焦点 ことばと学びをひらく会研究大会開催

「ことばと学びをひらく会」(会長・髙木まさき横浜国立大学教授)の第13回研究大会が10月19日、東京都港区の慶應義塾大学で開かれた。テーマは「学びが『対話的』に深まるとき―子どものことばが育つ授業づくり」。教員や教員志望の学生らが多数参加した。

『他者』との対話が重要

基調講演で髙木まさき横浜国立大学教授は「学校現場や教室には、単に物理的に異なる『相手』がいるのではない。そこには、自分とは考え方の違う学び手同士、教職員、地域の大人、また、教科書や教材には自分とは考え方の違う作品や作者など、価値観や考え方が異なる『他者』が存在している。『相手』と『他者』では意味が異なる。『他者』とコミュニケーションをするプロセスの中で子供は学び深める。子供が物事の考え方を見つけ出すためのサポートをする教師は『対話的な学び』を考えるとき、『他者』との対話という観点が重要になる」と今回の研究大会のテーマのポイントを指摘した。

高座ではお客さまと対話がポイント

記念講演には、落語家の柳家三三師匠が登壇。「いざ、『寿限無』!―高座に上がれば出たとこ勝負」というテーマで、髙木教授と対話形式をとりながら、「対話」について語った。

講演の中で三三師匠は「高座では、お客さまの雰囲気や反応を感じ取り、話す内容を少しずつ変えている。お客さまと対話をしている感じである。自分で考え、練り込んだ内容は稽古の際に再現を重ね、舞台の上ではその日のお客さまといかに楽しい時間を過ごすかを考えている」「『読む』ことは能動的な作業であり、自分のペースで想像し理解しながら進められる。一方で『聞く』ことは受動的な作業であり、話し手のペースがあり、それを聞いた上で理解していくので、話し手の思惑で物語を複雑にすると、聞き手がついていけなくなる。だから、落語では話す物語もナレーション部分を極力少なくする。落語は登場人物の会話で物語が進んでいくもので、一人が会話の窓口になって演じ分けている。聞いているお客さまに内容が伝わりやすいようにしている」と述べた。

これについて髙木教授からは、「『読むこと』と『聞くこと』は国語科において重要な課題。その違いを感じ取る良い事例である」と三三師匠の話に感嘆していた。

「『対話的』に深まる学びとは」

シンポジウムのテーマは、「『対話的』に深まる学びとは―具体的事例から考える」。

青山由紀筑波大学附属小学校教諭、宗我部義則お茶の水女子大学附属中学校教諭、森山卓郎早稲田大学文学学術院教授らが登壇し、藤森裕治信州大学教授がコーディネーターを務めた。

「『対話的』に深まる学び」について「具体像」「どのような資質・能力の育成を指すのか(目標設定と評価)」「どのような点に留意する必要があるか」―の3点を踏まえて議論が行われた。

「具体像」については、「①話題や問題をともにしている②異なる立場の他者がいる③互いにかかわり影響し合う④偶然性に満ちている――の4つの要素が前提条件で、その条件下で自己を成長させる学びである」とされた。

「どのような資質・能力の育成を指すのか(目標設定と評価)」については、「自己内対話をしながら、常に考えを更新し続けようとする知的たくましさを育てる」「『聞き手』としての子供を育てる」などの意見が出された。

「どのような点に留意する必要があるか」では、「子供が対話したくなる場を設定し、考えを構築したり、異なる考えに出会ったり、考えを広げたり深めたりさせる」「学習者が追究したくなる課題や学習者の素朴な疑問を課題にする」「『他者』を持ち込む上で書き手と対話し、教室の仲間との対話を意識する」「知識を相互に関連付けてより深く理解する」「『聞き手』を育てるうえで、話し合い活動などでは聞き方がポイントになる。アクティブ・リスニング(積極的傾聴)やノンバーバル・コミュニケーション(言葉以外の情報をもとに相手の心情を読み取るコミュニケーション)を意識し、聞き方に多様なパターンを取り入れてみる」「何でも話せる関係性を学級の中で構築しておく」――などの留意点が指摘された。

学習者用デジタル教科書・教材のワークショップ

数多くのワークショップや講座が行われた。この中で中川一史放送大学教授と石川等山梨県甲府市立羽黒小学校教頭が行った「体験!学習者用デジタル教科書―『主体的・対話的で深い学び』を実現する」では、国語の学習者用デジタル教科書・教材(光村図書出版(株))を活用したワーク・グループセッションが行われた。

タブレット端末が参加者各人に提供され、学習者用デジタル教科書・教材を使い、「焦点化」「集約」「抜出」「書き込み」機能を踏まえ、対話を取り入れた学習活動の資料を作り、効果的な指導について考察した。