【生活習慣改善特集】「早寝早起き朝ごはん」から見えてくる生活習慣改善のポイント

子供たちの生活習慣の改善に向けた全国的な取り組みとして広く浸透している「早寝早起き朝ごはん」国民運動。これまでの運動の成果と今後について文部科学省担当者に聞いた。また、この運動から見えてくる生活習慣の改善に必要なことについて(公社)全国学校栄養士協議会の長島美保子会長に解説いただいた。

文科省総合教育政策局地域学習推進課家庭教育支援室 室長 唐沢 裕之

「早寝早起き朝ごはん」でつくる 健やかな毎日を目指して
子供の生活習慣をめぐる現状と課題

近年、「よく体を動かし、よく食べ、よく眠る」という、成長期の子供にとって必要不可欠と言われている基本的な生活習慣に乱れが見られ、学習意欲などの低下の要因のひとつとして指摘されています。

文科省が実施した全国学力・学習状況調査の結果によると、毎日同じくらいの時刻に寝ていない子供の割合(小学6年生:18.6%、中学3年生:22.0%)や起きていない子供の割合(小学6年生:8.4%、中学3年生:7.1%)、朝食を欠食する子供の割合(小学6年生:4.6%、中学3年生:6.9%)は、多少の変動はあるものの、一定割合を占めていることが確認できています。

さらに、同調査の結果によると、毎日同じくらいの時刻に寝起きしている子供や、毎日朝食を食べている子供ほど、学力調査の平均正答率が高い傾向が見られるなど、生活習慣と学力との相関が示されています(図1)。

図1 「子供の生活習慣」と「学力調査の平均正答率」の関係に関するデータ

一方で、子供たちに基本的な生活習慣を身に付けさせる上では、家庭教育が重要な役割を担いますが、共働き家庭の増加や地域のつながりの希薄化など、近年の家庭を取り巻く環境の変化に伴い、子育てに悩みや不安を持つ家庭が増加するなど、家庭教育を行う上での課題も指摘されています。

こうした中、子供たちが健やかに成長していくためには、子供の基本的な生活習慣の形成について、個々の家庭や子供の問題として見過ごすことなく、社会全体の問題として取り組んでいくことが重要です。

※( )内の割合は、平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査における各質問に「あまりしていない」「全くしていない」のそれぞれに回答した者の割合を合計したもの

「早寝早起き朝ごはん」国民運動の推進

文科省では、子供の健やかな成長に必要となる、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適切な運動など、規則正しい生活習慣を社会全体で推進するため、「早寝早起き朝ごはん」国民運動を平成18年度に開始しました。

開始から14年目を迎え、この運動は、子供たちの生活習慣の改善に向けた全国的な取り組みとして、社会に広く浸透してきました。

図2 リーフレット「できることからはじめてみよう 早ね早おき朝ごはん」

最近の取り組みとしては、子供やその保護者、さらには、教員等の指導者に向けた資料を作成し、保護者向けの学習機会の場や、学校での授業に活用してもらうなど、学校や家庭における子供たちの生活習慣づくりに関する普及啓発活動を進めています。

特に、小学生やその保護者向けには、基本的な生活習慣の重要性を伝え、興味を持つ“きっかけ”をつくり、一緒になって楽しく取り組んでもらうことを目的としたリーフレットを作成し、文部科学省のホームページに公表しています(「できることからはじめてみよう 早寝早起き朝ごはん」)。

このリーフレットは、人気のアニメキャラクターとタイアップし、科学的なデータを踏まえた内容を親子で分かりやすく学べることから、小学校における就学時検診など、保護者が集まる機会に活用いただいています(図2)。

学校・家庭・地域が連携した取り組みの展開

「早寝早起き朝ごはん」国民運動の広がりを受けて、全国のさまざまな地域では、学校とPTAが連携した取り組みや、地域住民を巻き込んだ取り組み、さらには、企業とタイアップした取り組みなど、学校・家庭・地域が連携したさまざまな活動が展開されています。

文科省においても、地域における家庭教育支援の取り組みや、学校と家庭が連携した食育の取り組みなどを通じて、地域のさまざまな活動を支援し、子供たちの生活習慣の改善や食育の推進に取り組んでいます。

また、全国各地で取り組まれている「早寝早起き朝ごはん」国民運動の優れた活動について、文科大臣表彰を隔年で実施しています。表彰された活動は、文科省のホームページに事例集として掲載しています。地域や学校などで関連の活動を行う際の参考にしていただければ幸いです。

スマートフォンやSNSが子供たちにも急速に普及するなど、家庭を取り巻く環境がさらなる変化をする中、子供たちの生活リズムの向上を図るためには、子供自身やその保護者だけでなく、学校・家庭・地域が連携・協働し、「社会総がかり」で子供たちの育ちを支援していくことが大切です。

次代を担う子供たちが、生涯にわたってたくましく生き、活躍できるよう、文科省としては、引き続き「早寝早起き朝ごはん」国民運動の推進などを通じて、子供たちの生活習慣の確立に向けた取り組みを進めていきます。子供たちの育ちに関わる学校・家庭・地域における関係の皆様には、御支援、御協力をいただきますよう、よろしくお願いいたします。

公益社団法人全国学校栄養士協議会 会長 長島 美保子

生きる力の体得は生活習慣の改善から 食育の中核を担う栄養教諭の役割

近年、国民のライフスタイルの多様化や、さまざまな生活状況や価値観の違いなどから、子供たちに健全な生活習慣・食習慣を身に付けさせるのが非常に困難な状況にあります。

しかしながら、人生100年時代の到来も言われる中、次世代の大人になる子供たちに、望ましい生活リズムと朝食の大切さをしっかり身に付けさせることは、大変重要であり急務であると思います。

朝ごはんをしっかり食べるためには、ゆとりのある朝食時間の確保が必要であり、そのため早めに起きることが大切であり、早く起きるためには、早めの睡眠が必要となります。この循環リズムの確立が大切です。

子供たちの周りには、テレビゲームやスマホ、パソコンなど睡眠時間の確保が難しくなる誘惑がたくさんあります。そのような生活環境の中で、しっかり自己管理できる子供たちの育成が望まれます。

学校において食育を要となって担う栄養教諭と、子供たちの健康管理を担う養護教諭、またクラス担任らがしっかり連携して、子供たちの健やかな育ちを支援することが重要です。そして、健やかな成長のためには適切な運動、調和のとれた食事、十分な休養・睡眠など基本的な生活習慣が大切であることを意識付け、早寝早起き朝ごはんの意義をしっかり知って、自分事として意欲を持ち、実践しようとする力に導くことが望まれます。

国の食育推進基本計画では、子供たちの朝食欠食0(ゼロ)を目標値に掲げています。この数字は大変困難な目標値ですが、少しでも近づけるよう、具体的な取り組みの展開が大切です。
それには、次のような流れが考えられます。

①子供たちの朝食や生活リズムの実態を把握する

②子供たちの課題を見いだす(生活習慣の乱れ・寝る時刻が遅い・起きる時刻が遅い・夜食やだらだら食いのおやつなど)

③改善への取り組み(家庭科・保健などの教科学習。学級活動・給食の時間の指導など。また、給食だより、保健だよりによる啓発。給食試食会を活用した講話などの場面が考えられる)

④子供たちの自発的な取り組み(児童会・生徒会などの集団的な取り組み。チェックシートによる振り返りで自分の課題と向き合う。目標を設定し、取り組もうとする)

⑤知識を実践し、力に変える場の機能―家庭との連携

生活習慣の改善は、学校で学んだことや取り組みを家庭で実践に移すことで身に付いていきます。また、簡単な朝食作りなど家庭科の授業で学んだ献立を家庭で作ってみたり、夏休みなどに宿題の一つとして家族のために調理したりするなどの場面設定を保護者の皆さんと共有して進めていくのが効果的です。栄養教諭にはこの一連の取り組みをコーディネートする役割が求められます。

本会では、早寝早起き朝ごはん全国協議会の事業に参画して、「金メダルの朝ごはん」を掲げ、ブースにおいて、参加した親子に朝食指導を行っています。

実物大の料理カードを用意して、参加者にトレイの中に朝ごはん献立を組み合わせてもらいます。子供たちは、自分のイメージする朝ごはんをカードで選んでいきます。組み合わせたところで、栄養教諭が献立の組み合わせ・食品のバランスについて、アドバイスします。整った朝食を確認して、金メダルを首にかけてもらいます。

この体験活動では、親子で楽しく学べるため毎回好評です。

日常生活における体験の場が不足している子供たちに、体験を通して知識を力に変えていく場面提供が重要だと思います。