オンライン授業の可能性と留意点 同時双方向型で反応などを確認

自ら学びのスイッチの駆動を

茨城大学教育学部情報文化課程准教授 小林 祐紀

「機会の平等」がブレーキに

コロナ禍の影響によって休校になった期間中、にわかにオンライン授業の取り組みが求められるようになった。学校外の教育の場に目を向けてみると、すでに民間教育産業の多くで、インターネットを利用した教育の機会が提供されている現状がある。「学びを止めない」というキャッチフレーズのもと、各学校ができることを考えていくと、オンライン授業に行き着くことは当然の帰結であった。

しかしながら、教育行政として目標値を掲げ、ICT環境の整備を進めてきたにも関わらず、大多数の自治体および学校のICT環境はオンライン授業の実施に十分に対応できるものでは無かった。

機会の平等を強く重んじるわが国の学校文化の影響もあってか、全ての家庭において対応可能でなければ、実施に踏み切れなかったり、特定の学級だけで進めることで学級間の取り組みに差が出ることを不安視したりする声も数多く聞かれた。

従って、文科省が2020年4月21日に公表した休校中の公立学校の学習指導の中で、私たちが一般的にイメージするような「同時双方向型のオンラインの指導を通じた家庭学習」を実施していたのは、調査時点(20年4月16日)でわずか5%であった。

このような状況を受け、文科省は公式チャンネル内で配信した動画の中で、「ICT、オンライン学習は学びの保障に大いに役立つのに取り組もうとしない」と現状を捉え、「使えるものは何でも使って、家庭のパソコン、家族のスマホ」「できることから、できる人から、「一律にやる」必要はない」など、オンライン授業の推進を要望する力強いメッセージが提出された。

オンラインでも「協働の学び」を

今後、GIGAスクール構想により、オンライン授業が一般的になる環境が早晩実現する。いつ休校といった措置が再び判断されるか分からない状況において、オンライン授業の持つ可能性、また実施に際しての留意点について、私たちはどのように考えればよいだろうか。

「同時双方向型のオンライン授業」であっても「授業動画を活用した学習」であっても、学習を進められることは大きな利点である。特に同時双方向型のオンラインの指導であれば、児童生徒の反応を確認したり、チャット機能を活用して質問を受け付け、質問内容を反映しながら進めたりすることができる。オンライン授業においても、通常の授業と変わらず、児童生徒がいかに授業に参画できるかが重要な視点といえよう。

大学生の例でいえば、オンラインの授業の方が授業内容に関する質問が多く出されるときもあった。教師から生徒へという一方通行ではない仕組みを構築することが求められる。

さらに、グループワークを可能にする機能を使うことによって、児童生徒同士がつながりあえる仕組みも活用できる。筆者らの研究では、小学校5年生の児童がセルラーモデルのタブレット端末を家庭学習で活用した結果、児童同士がコメントを送り合うことや、互いの取り組み状況を把握できるといったことが、学習への動機付けに留まらず、安心感、共感といった児童の情意面にも影響を与えることが示された。

ネットワーク越しであっても、協働で学んでいることが感じられる仕組みをオンライン授業に採用することが重要であると示唆できる。オンライン授業によって学習が継続できることは、さまざまな事情から教室で学ぶことが難しい児童生徒にとっての学習保障として、大きな可能性を見いだすこともできる。

全てができるわけではない

一方で、オンライン授業において、机間支援という形で実施される「見取り評価」は極めて困難である。リアルな場を共有していないために、その場に流れる空気感が把握できないことに筆者自身も大きく困惑した。授業中は当然のこと、朝の会・帰りの会など、児童生徒の様子を確認する機会を丁寧に設定していくことが必要であろう。

また、オンライン授業が求められるとはいえ、これまで通りのことが全てオンラインでできるかといえば、それは無理筋であろう。画面を見続けること、目の前に存在しない他者から発せられる話を注意深く聞くことは大変難しく、かなりの疲労感を覚える。児童生徒の健康面への配慮は忘れてはいけない。

最後に、筆者はオンラインでの学びが今以上に一般的になれば、教師自身が授業を見直す良い機会になると考えている。例えば反転学習のように、これまでの学級での授業を主体的かつ創造的なものに変化させる可能性を有している。

今回のコロナ禍による休校によって、私たち大人が最も危惧したことは、児童生徒の学習の停滞である。しかし、その心配の背後には、「子供は放っておけば学ばない」「一人で勉強しない」「教師が教えなければ」という考えが見え隠れする。

今こそ、私たち学校教育に関係する大人たちは、自ら学びのスイッチを駆動させられる学習者を育てていくことに、日々の授業から注力したい。