本格化するPC端末1人1台環境にむけ 「まずやるべきこと」と「その留意点」について

放送大学客員教授 佐藤幸江


【GIGAスクール構想への道のりを思う】
図1:GIGAスクール構想への道のりの概要(筆者作成)

「100校プロジェクト」(94年)がスタートした頃、小学校の教員だった私は、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターとアップルコンピュータ(現アップルジャパン)とが共同で設立した「メディアキッズ(Media Kids)」に参加した。児童生徒が主体的に共同学習をする仕掛けがなされており、かなりダイナミックな学びが展開され、「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申)」(中教審、96年)で総合的な学習の時間が設定された時期とも重なり、注目される取り組みとなった。

そこでリーダーとして参画していた中川一史現放送大学教授は、この時期に関して「現在の状況は、インフラの整備ばかり目につくが、重要なのは、『そこで何が行われているのか』だ」と述べている。

まさに、現在の教育界の混乱と重なる。GIGAスクール構想の実現に関して、突然やってきた黒船のように捉えている向きもあるが、「図1」に見るように、さまざまな教育政策とそれに伴って先進的に実証研究、例えば「学びのイノベーション事業」(11年)で実践されてきた先達の英知と努力の蓄積があることを忘れてはいけない。コロナ禍によって、20年度中の整備となり、ここは関係者の方々にとって大変なことであるが、先達の知見を礎として、今後、地に足の付いた実践を開始したい。

【まずやるべきことと留意点】
図2:日常的な活用+効果的な活用(画像出典 文部科学省)

文科省では、「図2」にあるように、1人1台端末を日常的に活用し、教科の学びを深め、教科の学びをつなぎ、社会課題の解決に生かしていくという学びの変容を示している。ここで留意したいことは、これまでの学校現場の学習環境との違いである。

多くの学校では、コンピュータルームでとか、タブレット端末を使い回してとか、などという環境にあった。そこに、突然1人1台端末が来るのである。そこで、「ステップ1」の前に「ステップ0」として、さまざまな準備や構えを教職員で共有したい。

学級で使用するためのルール、何かトラブルが起こった時の対応や保護者への説明などを含めて、ぜひ、20年度中に検討されたい。その時に、がっちりと先生方だけで枠組みを固めてしまっては、児童生徒の文房具としての活用は止まってしまうし、「こう使わねばならない」という縛りで先生自身の首を締めることにつながる。

児童生徒がノートや鉛筆と同じように、自分の思考を整理したり表現したりする文房具として活用できるようにするためには、自校の児童生徒には、どの程度の枠組みが必要であるのかをしっかりと見定め、準備することが肝要である。そして、いざ授業づくりである。「ステップ1」から「ステップ3」の学びのイメージは、文科省により解説がなされているし、また先の「学びのイノベーション事業」の報告書などにも、たくさんの事例が示されている。これらの知見を利用しない手はない。できれば、21年度の早い時期に、学年、教科別、あるいは「ICT得意教員+不安教員」などでミニ校内研修会などを開き、「この単元で、こんな力を付けるために、こんな活用を」という授業づくり研修を企画するとよい。

一人では不安であったところも、協働で思考することで多様な考えが示され、そこから納得のいく解が見出されることが多い。これは、まさにこれからの授業と同じである。教員も、研修などでこのようなプロセスを体験することで、授業のイメージを形成することができる。

最後に、もっとも重要な点は「図2」にある「日常的な活用+考え学び合う学級文化の形成」である。授業で効果的に使うことも必要であるが、1人1台環境である、普段使いの工夫を考えたい。残念ながら、この点に関する知見は少ない。これまで紙でやっていたことで、タブレット端末に置き換えると便利になることはないだろうか。例えば、「学級交換日記」、いつでもどこでも書き込め読むことができる。早く入力したいとタイピングの練習を始める子も出てくるだろう。持ち帰りができる学校では、「連絡帳」に。係活動の報告を映像でつくってみると、その際に友達に許可なく写真を撮るなどのトラブルも予想される。それらを情報モラルの学習につなげていく等々。こういう学級経営にまつわる工夫は、先生方の得意分野かと思う。さらに、「考え学び合う学級文化の形成」である。いくらタブレット端末を入れて学習者主体の授業をしたいと思っても、「自分でまずは考える、それをもとにより確かな考えを形成するために仲間から学ぶ」という学習に対する姿勢が育っていなくては、絵に描いた餅になりかねないのである。

全国一斉に、未来に向けての「はじめの一歩」を踏み出したい。

※参考文献

・中川一史(2000)、「メディアキッズの実践インターネットを使った学校間のネットワーキングの試み~ソフトクリエータプロジェクト~」情報の科学と技術50巻8号、420pp~424pp

・文部科学省(2017)「学校におけICT環境整備に関連する資料」