学習者用デジタル教科書・教材の活用を見据えて 千葉県印西市立原山小学校の取り組み

GIGAスクール構想により学校現場では1人1台端末環境が整い、来年度から新しい局面に入る。今後は、教員のICT活用指導力向上に加え、教室で1人1台端末を使った授業を積み重ねICT活用を浸透させることが課題であり、デジタル教科書・教材の活用はその浸透度の指標となるだろう。学習者用デジタル教科書・教材の活用が進んでいくことを踏まえると、教員がデジタル教科書・教材の活用を理解し慣れておく必要がある。今回は、千葉県印西市立原山小学校(松本博幸校長/児童数243人)の指導者用デジタル教科書・教材、協働学習アプリの活用実践と学習者用デジタル教科書・教材の活用を見据えた取り組みを取材した。

【協賛企画/東京書籍株式会社】


■デジタル教科書・教材とICT活用の利点を理解する

本木淳也教諭が担当した小学5年生算数の授業の単元は「多角形と円をくわしく調べよう」。円の半径を用いて正六角形がかける理由を考えさせ説明できるようにするという授業内容である。協働学習アプリを活用しながら言葉や図を使って児童の考えを書かせ、共有し、議論させることで、「6つの三角形が合同な正三角形であること」「辺の長さ、角の大きさが全て等しいこと」など説明に必要な要点に気付かせ理解を深めた。

図形を提示し分かりやすく焦点化

「指導者用デジタル教科書・教材の活用で授業準備時間が削減できた。今回の単元でも図形をスキャンして印刷し黒板に貼る手間がなく、すぐに児童に提示し焦点化でき、分かりやすく伝えることができる。児童はすぐに学習に移行でき、思考する時間を多く取れる。また、教師が見せたいところを選択できるのがよい。例えば、ヒントになる素材をあえて隠すこともできる。さらに、協働学習アプリの活用を併用することで、児童の思考を整理させ、アーカイブし次の学習につなげることができる」と本木教諭は活用の利点を語る。

また、課題を洗い出すことも忘れていない。「教員間で、デジタル教科書・教材を含めICT活用の学習のあり方について研修を行い成功事例などについて話し合っている。今は、ICTを使いこなし、日々エビデンスを積み重ねていくことが大切だと思う。教師も児童も、協働学習アプリの長所を理解し状況に応じた活用に慣れることで、より個別最適化された学習ができると思う」と先を見据えていた。

学習者用デジタル教科書・教材に関しては「ICTを文房具のように活用していくことがポイントだ。学習者用デジタル教科書・教材もそのような感覚で抵抗なく活用していければと思う。導入されたら、保存されたデータ(学習履歴など)を学習指導の方向付けとして活用し、今年度の実践を次年度に共有できるようにしたい。指導の足跡を積み重ねながら教材研究ができるようにしたい」と熱い思いを語った。

■ICT活用に慣れ、学習者用デジタル教科書・教材の導入に備える

同校は、2020年3月からGoogleの遠隔学習支援プログラム「Google for Education」を導入。高学年から順にChromebookの貸し出しを受け端末環境を整備したことで、Googleのさまざまな機能が利用できるようになり、コロナ禍の休校期間中は、オンラインで朝の会や授業を行うこともできた。この期間は教材研究・教材作成に力を注いだという。20年度に印西市情報教育推進指定校を受けていたこともあり、20年10月に印西市内の小学校で初めて全学年1人1台端末環境が整った。

ICTの活用で時間をかけ思考することに集中できる

松本校長は「1人1台端末環境を迎えるに当たり、教員が事前にICT活用に慣れる準備ができたこと、実証を積み重ね情報共有をする大切さを経験できたことは非常によかった」とICT活用に慣れておくことの重要性を語る。

「児童に対してはデジタルシティズンシップの取り組みを実施している。アカウントの扱いや情報端末の扱いなどを含め、オンラインの世界でどのように行動すればよいか指導を継続的に行っている。児童が多少問題を起こしても、情報端末に関しては制限を必要最低限のものにとどめ、その中で見えてきた課題を解決し自律的に活用するための行動の在り方を学んでほしいと思っている。縦割りでの活動を生かすこともポイントだろう。例えば、高学年の児童が低学年の児童にオンラインでの振る舞い方などを教えたりすることで双方の理解を深める。児童は知識だけ教えてもそれらを理解し行動できるものではない」と1人1台端末環境を迎えるに当たり具体的なポイントを指摘した。

「児童に対しては、協働学習アプリを活用しながら、考えや意見を共有させ、自らが関心を持ったことや気になる情報を整理・分析してクラウド上に保存させるなど、その後の振り返りや発展学習につながるようにしている。学習者用デジタル教科書・教材が導入されると、その一連のことがより効果的にできるようになるだろう。自分自身の教科書をつくるイメージで情報をまとめていくよう指導している」と学習者用デジタル教科書・教材の活用を見据えた取り組みについて述べた。

「デジタルでは、領域、分野、学年を超えた形で並べ替えたり、苦手分野ごとにまとめたり、自在に対応できるようになるだろう。他教科のコンテンツを配置したり、自分や友達のコメントを入れたり、教科等横断的にまとめることもできるだろう。きっと児童の思考の連続性や広がりも生まれてくると思う。学習者用デジタル教科書・教材は1人1人にあった学習の展開に寄与できると思うし、支援が必要とされる児童に対しては、1人1人が平等に学べる環境へと誘うであろう」と導入への期待を語った。