感染症にも留意しながらできることを着実に 熱中症対策特集

コロナ禍の夏も2度目をむかえようとしている。学校管理下で熱中症による事故を発生させないため、感染症対策もふまえつつ、注意喚起のポイントや具体的な取り組み事例を紹介する。

  • 文部科学省から教育関係者へメッセージ
  • 兵庫県たつの市立龍野東中学校の取り組み

熱中症事故の防止について 教育関係者の皆様へのお願い

文部科学省総合政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課 安全教育推進室 安全教育調査官 森本 晋也

学校管理下での熱中症の発生状況について、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が行った災害給付の支給状況をみると、熱中症に伴う医療費の支給が、2018年度(平成30年度)は7082件、19年度は5071件、20年度は3371件(暫定値)発生しており、学校管理下における熱中症事故は減少しております。特に昨年度の減少は、18年の酷暑後、学校における熱中症対策が進んだことや、コロナ禍において学校教育活動が制限されたことなどが考えられます。

政府においては、国内で近年熱中症が増加していること、今後の気候変動等の影響を考慮すると状況はますます悪化していくことが懸念されることから、21年3月25日に「熱中症対策行動計画」を作成しました。また、本年4月28日から「熱中症警戒アラート」(以下、アラート)が全国で運用開始されました。これは、熱中症の危険性が極めて高い暑熱環境が予測される際に発表されるものです。

【熱中症対策の参考資料】「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」環境省・文部科学省(2021年5月)より

文科省と環境省では、本年5月教育委員会等の学校設置者が学校向けのガイドラインの作成・改訂や、学校で作成している危機管理マニュアルの見直しの参考資料として、「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」を作成しました。本手引きには、基礎編として、熱中症や暑さ指数(WBGT)、アラートについての説明、実践編として、熱中症予防措置や熱中症発生時の対応例についての紹介、加えて熱中症による事故事例等も掲載しています。

アラートは、翌日の最高暑さ指数(WBGT)を33以上と予想した日の17時頃と、当日5時頃に府県予報区で発表されます。学校では、翌日の予定されている運動会などの行事の開催可否や内容などに関する判断、野外学習など学校以外の場所での行事運営、飲料水ボトルの多めの準備、冷却の備えなどの参考になります。ただし、当日の状況が予測と異なる場合もありますので、活動場所で暑さ指数(WBGT)を測定し、状況に応じて対応することが大切です。

そして、誰がいつ確認するか、誰に伝えるか、情報を基にどのように対応するかを決定する者(管理職や関係職員)を明確にしておくなど、組織的に対応できるよう役割分担し、アラート発表時の対応についてあらかじめ確認しておくことが大切です。さらに保護者らに周知しておくことが円滑な対応につながります。また、アラートが発表されていない場合であっても、活動場所で暑さ指数(WBGT)を測定し、状況に応じて、水分補給や休憩の頻度を高めたり、活動時間を短縮したりすることが望まれます。

新型コロナウイルス感染症予防のため基本的にはマスクを着用することとされていますが、熱中症などの健康被害が発生する可能性があると判断した場合は、換気や児童生徒らの間に十分な距離を保つなどの配慮をした上で、マスクを外す対応を行ってください。さらに、熱中症になるリスクなどを考慮して、体育の授業および運動部活動におけるマスク着用の必要はありませんが、感染症予防の配慮をお願いします。

熱中症の発生は、気象条件などから予測しやすく、正しい知識を身に付け、適切に予防することで、未然に防ぐことが可能です。これからの季節に備え、熱中症事故の防止に向けて対策や準備をお願いします。

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熱中症予防 生徒の活動を中心に 感染対策との両立を目指しながら

兵庫県たつの市立龍野東中学校主幹教諭/全国養護教諭連絡協議会副会長 嵯峨山 文子

兵庫県たつの市は、県南西部の西播磨地域に位置し、市の北側には山地が広がり、南は瀬戸内海に面しています。市内には清流揖保川が流れ、自然環境に恵まれた風土が生み出した手延そうめんや醤油醸造、皮革産業、かばん産業といった地場産業が盛んです。また本市は童謡「赤とんぼ」の作詞で知られる三木露風生誕の地としても有名で「童謡の里」とも呼ばれています。

本校は、生徒数600名余りの中規模校ですが、西播磨地区では最も生徒数の多い中学校です。市内の年平均気温は約15℃、年間平均降水量は1300mm~1500mm程度となっており、全般的に温暖で雨が少ない典型的な瀬戸内式の気候ですが、例年5月の半ば以降からは熱中症対策が必要となります。

生徒会中心に取り組む熱中症予防

熱中症予防の取り組みは、学校全体で実施していますが、生徒会活動においては、保体委員会が中心となり取り組んでいます。

暑さ指数掲示板

具体的には、毎日の暑さ指数測定と、校内放送での注意喚起、暑さ指数校内掲示板(以下、掲示板)への暑さ指数記入を行っています。この掲示板は暑さ指数を効果的に伝えるために、視覚に訴えられるよう色別にシンプルに作成しています。9月の体育大会では、運動場の本部前に掲示板を設置し、暑さ指数をリアルタイムで掲示するとともに、体育大会中にも保体委員長が熱中症予防のための呼び掛けを放送で行っています。会場内の生徒職員保護者にリアルタイムに伝えることで、こまめな水分摂取や休憩時間の調整などの対応が臨機応変にできています。

デカデカ保体指導―熱中症で倒れた生徒の応急手当をする場面

それに加えて毎年、熱中症予防を全校集会(感染予防のため2020年度以降は実施を見送り)で伝える「デカデカ保体指導」と、昼休みの校内放送を活用し、クイズ形式で呼び掛ける「ミニミニ保体指導」も行っています。生徒の表情や反応から、教師が教壇に立って指導をする以上に、興味関心が高まっている様子がうかがえます。

また、本校はここ数年の夏季の異常な高温に対応するために、校内教職員の生活指導委員会で検討した結果、校内へのスポーツ飲料の持ち込みを通年可としています。さらに昨年からクールビズ対応として、気温が高い時期は、夏の体操服(以前は制服のみ)で授業を受けることも可としました。昨年は新型コロナウイルス感染症予防対策のため、教室の4隅の窓を、常時開放しながら冷房を稼働したことも影響し、夏の体操服で過ごす生徒が多く見られました。生徒や保護者からも、過ごしやすいと好評でした。

新型コロナウイルス感染症と熱中症を同時に予防するために

20年度は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、全国一斉休校措置がとられ、本校が本格的に再開したのは6月からでした。この頃すでに気温と湿度が高い日が続いていたため、感染症予防対策と熱中症予防対策の両者のバランスの取り方に関しては、難しい対応を迫られました。常に文科省や、市教育委員会の通知を確認しながら校内学校保健委員会で協議し、共通理解の上で進めました。

体育大会で保体委員長が放送

マスクの着用については、屋外で運動するときや熱中症の危険があるときは、間隔を空けるなど対策をした上で、外しても良しとしました。換気については前述の通り、冷房を稼働しながら、教室の4隅の窓を常時開けることを徹底しました(4カ所を常時開放した時、CO2は1.000ppm以下)。

また、臨時休校中の授業の遅れを取り戻すため、本市は昨年度7月と8月には、お盆の時期を除いて授業を実施しました。本校は熱中症を予防することを第一に考えて、平素の時程を変更しました。朝の涼しい時間帯に部活動を1時間程実施した後に授業、続いて給食を食べ、午後の部活動はなしで下校させました。前例のない日程でしたが、暑い時間帯の部活動実施を避けることで、熱中症のリスクを減らし、生徒が元気に夏を乗り切ることができました。

おわりに

新型コロナウイルス感染症は変異株が広がりをみせ、3回目の緊急事態宣言が発出、延長となるなど、予断を許さない状況が続いています。感染症予防対策を継続しながら、熱中症予防に取り組まなければならない時期が、再び巡ってきました。

今年も子供たちが暑い夏を乗り切り、健康で安全に学校生活を送ることができるよう、校内外で組織的に連携・協働しながら、取り組んでいきたいと思います。

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