高校GIGA活用現場レポート 進化するデジタル教材が生徒たちの主体性を伸ばす

 GIGAスクール構想が前倒しされたことを受け、公立高校でも「1人1台端末」の導入が各地で進んでいる。一方で高校教育の現場は、新学習指導要領の実施や大学入試改革への対応、働き方改革などの現実的課題を抱えており、そうした状況下で端末導入に不安を抱える教員も多い。変革期を迎える高校で、教員は「GIGA端末」とどのように向き合っていけばよいのか、全国的な動向と現場での取り組みをレポートする。

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高校の「GIGA端末」をめぐる現状

 小中学校で「1人1台端末」の整備がほぼ完了したことの余波は、否応なく高校に押し寄せている。文科省が今年8月に公表した資料によると、公立高校においても2020年度に11自治体、21年度に8自治体が端末の整備を終え、他の全ての自治体も整備の方向で検討を進めているという。

 一方で、端末の導入に対し、不安を感じている教員も少なくない。今年4月、教育新聞が小中学校の教員を対象に実施したウェブアンケートにおいても、「(授業中に端末での)作業に夢中になり、指示が通らない」「仕事が増えただけ」といった意見が寄せられるなど、端末の導入が教員の負担増につながっている一面が浮き彫りになった。

 高校では2022年の入学生から新教育課程に突入し、主体的・対話的で深い学びや探究的な学習活動の実施がこれまで以上に求められる。変わりゆく大学入試制度への対応、教員の超過勤務の改善などの現実的な課題も多い。そうした状況がある中で、果たして「GIGA端末」の活用へと踏み出せるのか、現場サイドの不安は大きい。

端末の導入で生徒たちの探究心が高まる

 一方で、高校においてもすでに1人1台端末を積極的に活用し、成果を上げている自治体や学校がある。中でも注目は、BYOD方式(保護者負担)での端末導入をいち早く決め、2020年度から1人1台体制での実践をスタートさせた広島県だ。2020年春の全国一斉休校の際は、生徒たちに端末を貸し出すなどしてオンライン授業を実施し、学校再開後もICTを有効な学びのツールとして活用している。

 広島県立尾道北高等学校(藤本秀穂校長)は、その中でも特に活用が進んでいる学校の一つだ。同校は学校経営目標として、「探究心旺盛で、主体的に課題を発見することができる生徒」「多様な価値観を持って他者との関わりを通して社会に貢献できる生徒」「未来に向けて失敗を恐れず果敢に挑戦できる生徒」の育成を掲げているが、その達成に向けてICTが有効なツールとして活用されている。

坂本一磨教諭

 具体的に、どのように有効活用されているのか。同校のICT推進担当・坂本一磨教諭は「端末があるおかげで、生徒たちは授業中に疑問が生じたらすぐに調べることができる。また、調べたことから新たな疑問や課題を発見するなどしている」と語る。この言葉から、これまで受動的だった学びが能動的に変わり、目標の一つである「探究心旺盛で、主体的に課題を発見することができる生徒」の育成にICTが寄与している様子がうかがえる。

 さらに坂本教諭は「端末が入ったことで、グループでの協働的な学びもしやすくなり、多様な考えに触れながら学ぶ機会が増えた」とも指摘する。この言葉からは、端末導入が「主体的・対話的で深い学び」を生み出し、目標の一つである「多様な価値観を持って他者との関わりを通して社会に貢献できる生徒」の育成に役立てられていることが分かる。

デジタル教材プラットフォーム「リブリー」を活用

 ICT化を進める同校は、新たな教材はなるべくデジタル版で導入することにしている。そうした流れの中で導入したものの一つが、デジタル教材プラットフォーム「リブリー(Libry)」で、坂本教諭は「活用している生徒たちが『テンポよく問題を解けて、楽しく学べるようになった』と話していた。確かに、生徒たちの学びが以前よりも主体的になった」と導入の成果を話す。

 リブリーは、学力の定着を効率的に図る上で有効な学習ツールだが、最近話題の「AIドリル」とは一線を画す。学習の流れを見ると、デジタルとアナログを融合したような印象だ。

教材(問題集等)の選択画面(左)。問題提示画面。解答後に自己採点し「正解」「不正解」をタップ(中央)。問題のレコメンド機能。習熟度に応じて最適な問題を提示してくれる(右)

 生徒たちはまず、リブリーの「本棚画面」から学習したい問題集を選ぶ。次に、画面に表示された問題を見ながら、解答を手元のノートに書き込む。その後、自己採点をして結果を入力し、ノートを撮影して送信する。すると、それらのデータがクラウド上に学習履歴として蓄積・集計される。さらにはその学習履歴をもとに、コンピュータが一人一人に最適な「復習問題」や「挑戦問題」をレコメンドしてくれるため、生徒たちは効率的に苦手領域を克服できる。

教員用の管理画面。生徒たちの学習の進捗状況、問題別の正答率等が一目で分かる

 リブリー導入のメリットの一つは、生徒たちの学習履歴が可視化される点だ。「リブリーでは、教員用の管理画面から問題別の正答率が一目で分かる。これまで、苦手・不得意の傾向は経験に基づいて判断していたが、これが数値化されたことで、より細やかな指導と授業改善が可能になった。また、ノートチェックもできるため、生徒たちの思考のプロセスも把握できる。紙のノートより効率的にチェックできる点も便利。そうして省力化された時間を指導の充実に回せる」と坂本教諭は話す。

自然と学習に取り組める「仕掛け」

 現在、同校では数学、物理、化学基礎の3教科でリブリーが導入され、主として定期考査前や夏休み前の課題として活用されている。2年生は、昨年度に続いて使っており、数学科の川﨑一弘教諭は「日頃から、一人一人がどのようなプロセスを経てその解答に行き着いたのかをよく見るようにしているが、リブリーはその点を細かく見られる上に、30~40人分のノートを回収して職員室へ運び、該当ページを開いていく作業がいらないので便利。生徒たちも教材一冊分の持ち物が減って助かっている」と、その利便性を語る。

川﨑一弘教諭

 高校教育では、学力向上や進学実績確保といった現実的な課題を抱えている。特に「知識・技能」面での学力の定着は不可欠で、これをおろそかにすれば「思考力」や「表現力」を伸ばすこともできない。この点について川﨑教諭は「生徒たちは放っておいたら練習問題を繰り返さない。それでは技能の定着が図れないので、自然と取り組めるような『仕掛け』が必要」と話す。同様の悩みを抱えている教員は多く、この課題とどう向き合っていくかが、学力向上や進学実績確保を図る上で大きなポイントとなる。

 そうした「仕掛け」の一つとしても、同校ではICTを活用している。例えば、リブリーを活用すれば生徒がテンポ良く学べる上に、教員は提出状況を見て「たいへんよくできました」「OK!」「がんばりましょう」「見直ししましょう」などのスタンプを送ることができる。一人で黙々と取り組む問題演習はだらだらと進めてしまいがちだが、これら多彩なスタンプが届けば教員とのつながりを実感でき、生徒たちの集中力も高まるに違いない。川﨑教諭もスタンプ機能を日々活用しており、「教員が見てくれていると分かれば、モチベーションの向上につながる」と話す。

加速度を増す学びのテクノロジーの進化

 川﨑教諭は「今後は、リブリーに複数の問題集を入れて、もっといろいろな機能を使っていくことも考えたい」と話す。ICT推進担当の坂本教諭も「他の教科の教員も、導入を考え始めている。リブリーの便利さについての情報が校内で共有されつつある」と話す。活用が広がっている理由の一つは、導入時の「ハードルの低さ」だという。「リブリー本体をインストールする上での費用は一切かからない。加えて、デジタル問題集を購入する際の価格も、紙の問題集と同じ。既に紙の問題集をもっている場合は、プラス550円(税込み)で購入できる場合もある。そのため、個々の教員レベルで導入を検討できる」と坂本教諭は話す。リブリーの導入校は全国の中学高校で600校(2021年9月現在)に上るなど年々増え続けているが、背景には導入のしやすさがあるようだ。

 尾道北高校の実践からも分かるように、ICTを効果的に活用すれば、生徒たちの「主体性」を引き出し、「思考力」や「表現力」を高めることができる。加えて、教員の業務も省力化が図られ、「働き方改革」にも寄与する。もちろん、端末導入期には少なからず混乱が生じるものと考えられるが、一定レベルまで活用が進めば、高校教育が直面する現実的課題を解決・改善していく上でも、ICTは有効なツールとなり得る可能性はある。

 現在、リブリーから購入できるデジタル教材は15社・400冊以上に上り、その数は年々増え続けている。2022年度には「オリジナル問題配信機能」や「ルーブリック評価支援機能」などが搭載される予定で、これまで以上に生徒一人一人の到達度・習熟度が把握しやすくなる。教育界では、こうした「学びのテクノロジー」の進化が加速度を増しており、今後「個別最適な学び」や「誰一人取り残さない学校」を実現する上でも、ICTは不可欠なツールと認識していく必要があるのかもしれない。

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