【感染症対策特集】 予防対策を再確認し 流行期を乗り切ろう

 空気が乾燥し気温が下がり始めるこの時期、学校現場では感染症への注意喚起と予防対策の推進が重要な課題となる。感染拡大と減少を繰り返す新型コロナウイルスへの対策も引き続き注意が必要だ。そこで、流行時期を迎える前に、改めて感染症(とりわけ新型コロナウイルス)の予防・対策に焦点を当て特集した。国の取り組みや対策方針、専門家によるウイルスの危機管理などの解説、学校現場の最前線で働く養護教諭の実践事例も紹介する。


正しく感染症を理解するために 指導資料の積極的な活用を

文科省初等中等教育局 健康教育・食育課 健康教育調査官 小出 彰宏

 新型コロナウイルス(COVID―19)が世界各国に拡大し2年近くたちますが、今年の夏にはデルタ株への置き換わりが進む中で全国的に新規感染者数が急増しました。デルタ株の流行は学校の新学期の開始時期に重なり、新規感染者が急増した地域の学校では、夏季休業の延長や臨時休業、短縮授業や分散登校の実施などの対策が取られました。

 9月28日には19都道府県の緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置が全て解除されましたが、海外でも新型コロナウイルス感染症の流行の波は繰り返されており、日本においても引き続き警戒が求められています。学校においても感染症対策を徹底しながら、学校教育活動を継続することが重要です。

 文科省で公表している児童生徒における新型コロナウイルス感染症の感染状況(2020年6月1日~21年9月30日までに文科省に報告があった情報に基づく)において、児童生徒の感染経路は、小学校および中学校では「家庭内感染」が最も多く、それぞれ約70%および約60%でしたが、高校では約30%でした。一方、「感染経路不明」は、小学校で約20%、中学校で30%、高校で約40%と学校段階が上がるにつれて増加していました。

 これらの結果から、休み時間や登下校など教職員の目が届かない所での児童生徒の行動が感染リスクとなる可能性があること、特に高校へと学校段階が上がるにつれて、生徒の生活圏が広がるため、感染リスクが高まることが考えられます。従って、新型コロナウイルスの感染症対策として、衛生管理の徹底に加えて、児童生徒が休み時間や学校外における行動について自ら感染症対策を意識することができるように、新型コロナウイルス感染症を正しく理解することが必要です。

 文科省では、子供たちが新型コロナウイルス感染症の予防について正しく理解し、適切な行動をとれるよう、日常の指導における「ねらい」や「指導内容」を具体的に示した保健教育指導資料「新型コロナウイルス感染症の予防~子供たちが正しく理解し、実践できることを目指して~」を作成しています。また、「改訂『生きる力』を育む中学校保健教育の手引」追補版において、新型コロナウイルス感染症を取り上げて指導事例を示しています。これらの指導例を有効に活用し、小・中・高校それぞれの子供たちの発達段階を踏まえて指導することが大切です。いずれも文科省のホームページからダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

 また、学校で新型コロナウイルス感染者が発生した場合や児童生徒などの家族が感染した場合、感染者およびその家族などへの差別・偏見・誹謗(ひぼう)中傷などはあってはならないことです。差別・偏見・誹謗中傷のもととなる「不安」を解消するためにも、児童生徒は新型コロナウイルス感染症を正しく理解し、そしてなぜ「差別・偏見」の行動や考えが生まれてしまうのかを考えることが大切です。

 文科省では、関係団体と協力して子供たちが感染症に対する不安から陥りやすい差別や偏見などについて考えるきっかけとなるような啓発動画や関連資料などを作成していますので、文科省のホームページをご確認ください。

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新型コロナウイルス感染症 学校現場におけるこれからの対処法のポイント

国立感染症研究所実地疫学研究センター長 砂川 富正
はじめに

 第6波に備えて、これまで学校で発生したクラスター対策の現場で把握された対策のポイントについて述べてみたいと思います。なお、中学生以上では部活動や友達同士の感染の機会が著しく増加することから、むしろ成人の感染対策に近く、本稿では主に小学生以下を念頭にした記載としていることにご注意下さい。

まず教職員の方々の感染対策を強化しましょう

 ここでは、文科省による「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」(以下、マニュアル)の内容をクラスター対策の観点からさらに補完することを述べていきます。

 記載通り、感染症対策の3つのポイントは、「感染源を絶つこと」「感染経路を絶つこと」「抵抗力を高めること」です。最初の「感染源を絶つこと」については、「まず教職員の方々の感染対策を強化すること」の重要性を強調します。変異ウイルスの国内への影響の増加とともに、10代以下の感染者数は増加していますが、詳しくみると、教職員を発端とした比較的規模の大きなクラスターが小学生を中心とする授業の場(塾を含む)で目立っています。これまで、児童を端緒とした、同じクラス内などの規模の小さな感染伝播は比較的多く観察されましたが、大きなクラスターは把握できていません。教職員の方々が最初に感染すると、その影響はやはり大きいのです。特に今後、新型コロナワクチン接種が教職員の方々にも多く進んだ状況下では、ワクチン接種者が感染しても、症状が軽く推移する場合が多くなると予想されます(いわゆるブレイクスルー感染)。学校内(職員室を含む)における感染管理が不十分だと、ブレイクスルー感染によるクラスターもより大きくなる可能性があります。

教職員の方々におけるブレイクスルー感染への警戒の必要性

 症状が軽いブレイクスルー感染者から次の感染を受けた側で、ワクチン未接種の方があったり(ワクチン接種から6~8カ月以上においては予防効果が減弱する可能性が心配されています)、年齢が比較的高かったり、免疫に関わる持病を持っていたりすれば、重症化のリスクがあります。

 学校において、児童が症状を呈した場合に比べて、教職員の場合の対応は成人であるが故の難しさがあると思います。教職員の方で、病院にかかるほどではないと自己判断される場合であっても、コロナ対策として、感染管理に十分注意しながら、学校で唾液などを用いた簡易な抗原検査などを行うことも検討可能かもしれません。しかしこれは成人の話で、一般的には中学生以下の子供については、体調不良時には医療機関受診を勧めることが原則であることも強調したいと思います。

感染経路を断つことの部分で強調したいこと

 マニュアルには「児童が下校時に自分の机を清掃している様子」の写真がありますが、感染管理の観点から、机・椅子を児童が清拭する対象は、ぜひ自分の机・椅子にとどめていただきたいと思います。また、消毒薬の説明で実質的に重要なのは「消毒用エタノール」「一部(通常)の界面活性剤」「次亜塩素酸ナトリウム消毒液」の3つです。

 さらに、コロナ対策として換気の重要性がクローズアップされています。これからの時期、常時換気は難しいかもしれません。マニュアルの記載に従い、できれば30分に1回、意識的に換気をすることは極めて有効です。マニュアルには、CO2モニターによる二酸化炭素濃度の計測に関する情報として、学校環境衛生基準として1500ppmが紹介されていますが、体育館などで、人が集まる通常時が1000ppmに近い場所では、800ppm程度の段階で換気をするなどの対応が、コロナ対策としてはベターです。

おわりに

 マニュアルで挙げられている感染症対策3つのポイントのうち、最後の「抵抗力を高めること」については、マニュアル以上のものはありません。最も強調したいことは、やはり子供を取り巻く家族、教職員を含む大人が対策を強化することの重要性です。適切なマスクの着用、アルコール消毒剤を用いた適切な手指衛生、換気の徹底(加えて3密の回避)は基本です。さらに、教職員の方々は、健康上などの明確な理由がなければ、新型コロナワクチン接種を積極的に受けていただくことが望ましく、ぜひご検討いただきたいと考えるところです(学校関係者への接種の義務付けを求めているものではありません)。以上、参考になれば幸いです。

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学校現場における感染症対策 合言葉は「かからない・うつさない・ひろげない」

福島県伊達市立松陽中学校 養護教諭 宍戸 朋子
はじめに

 本校は福島県の伊達市保原町の南部に位置する全校生徒165人、普通学級6クラス、特別支援学級2クラスの中学校です。校舎は緑豊かな高台にあり、自然環境にとても恵まれた学校です。

 現在は、新型コロナウイルスの新規感染者が全国的に減少傾向になり、中学校における部活動も競技ごとに体制が整い、感染対策を取りながらの練習試合や大会などが開催されるようになりました。

コロナ禍でのさまざまな感染症対策

①朝の健康観察の徹底

登校時における消毒と検温

 本校では、自宅での体温を「健康記録カード」に記入し、登校したら担任に提出するようになっていますが、さらに登校時も昇降口でアルコール消毒と一緒に体温チェックを二重にしています。昇降口では各学年の学年主任、校長、養護教諭が生徒を迎え入れ、朝のあいさつの声を掛けながら、生徒の小さな変化を見逃さないように、生徒の様子を観察し、朝のうちにその日の生徒の情報交換をするようにしています。

②スクールサポートスタッフによる校舎内の消毒

 スクールサポートスタッフの方に校内のさまざまなところの消毒を手伝ってもらっています。毎週の時間割を確認しながら、より有効に効率良く消毒作業に入ってもらえるよう、教頭、養護教諭らとの連携を密に図り、共有部分以外にも、その日に使用した特別教室の消毒作業なども教科担当の教諭の希望を聞きながら行ってもらっています。

知識が行動のきっかけになるように

 中学校では保健体育科の保健分野で感染症について学びます。3年生の学習内容とはなっていますが、病原体とその感染経路を学び、感染症が広がるさまざまな条件があることを知ります。そして、感染のリスクを軽減するためには、「発生源をなくすこと」「感染経路を断つこと」「体の抵抗力を高めること」の3つに大きく分かれること、病原体の種類によって、有効な対策が異なることを2時間かけて学習します。どんな感染症対策であっても原則は変わりません。

 生徒たちはきっと幼い頃から、「手を洗いなさい」「うがいをしなさい」「咳エチケットを守って」とたくさんの場面で家庭でも学校でも指導されてきていると思います。中学生には、やらないと叱られるから、誰かが見ているから行動するのではなく、生徒たちが必要なことを知識として理解し、自ら考え、行動できるようになってほしいものです。冬にどんな感染症が流行しても、知識を基にその感染症にはどんな対策が有効なのかを理解し、知識を活用して行動に移すことができれば、日常の生活にずっと応用できます。保健室からも、毎月の保健だよりの内容や日常の放送などでの指導内容を考える際に、保健体育科の内容を意識して生徒が知識を活用できる内容を考え、伝えるようにしています。知識を得ることで行動するきっかけになればと考えて指導しています。

おわりに

 生徒たちは、新しい生活様式に基づいた新型コロナウイルス感染症対策をしながらの「コロナ禍での生活」が2年目になり、朝の検温、校舎へ入る際のアルコール消毒、マスクの着用、手洗い、給食の黙食など、基本的な感染症対などが日常生活の一部として定着しています。

 しかし、コロナ禍が2年にもわたり長期化していることで、生徒たちがいろいろな場面でモチベーションを保って感染症対策を継続していくことが難しい部分も日々の指導で感じています。今後もさまざまな感染症の感染予防と感染拡大防止を念頭に、知識が行動のきっかけとなる指導を心掛け、「かからない、うつさない、ひろげない」を合言葉に、日常での指導を繰り返して継続していきます。また、本校の素晴らしい環境の中で生徒たちが一人一人の優しさと思いやりを大切にして成長していけるよう保健室から発信していきます。

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