主体的・対話的なプログラミング学習を通した新しい学びの実現 愛知県岡崎市立羽根小学校

 (公財)パナソニック教育財団の第46回(2020~21年度)特別研究指定校である愛知県岡崎市立羽根小学校(児童数737人)は、プログラミング学習を教科・領域の授業を中心に主体的・対話的に行う実践で、子供たちのプログラミング的思考を育成し創造性を伸ばすことを目指している。同校の挑戦をけん引する岡秀之校長と研究主任の杉浦有子教諭を取材した。

 【協賛企画/(公財)パナソニック教育財団】

生きる力を身に付けさせたい

 「本校児童は創造性や自立する力が弱いと感じていたことから、いかにして学習指導要領にうたわれている『生きる力』を育むか、授業改革を考えていた。そんな折、2019年度に岡崎市教育委員会(以下市教委)から『小学校におけるプログラミング教育の在り方』について研究委嘱を受けることとなった。良い機会と捉え、プログラミング学習を通した『プログラミング的思考育成から始める創造的な学び』を教育目標の柱とし、改革に取り組むことになった」と杉浦教諭は当時を振り返る。

動き出した教育目標
iMovieで学校紹介の映像を制作する児童

 文科省の「学びの保障」関連予算と市教委からの校内ネットワーク整備、プログラミング学習に関するソフトウエア利用の整備をはじめ、市教委制作のプログラミング学習モデル指導案の提供などの支援を受けながら、19年4月から教科内でのプログラミング学習が始まった。

 同校のプログラミング学習は「プログラミング的思考育成からはじめるHANESTREAM(はねすとりーむ)の実現」を研究テーマとした。STEM教育を発展させた独自の取り組みで、教科内で継続的に行われることを念頭に置いている。Sは理科教育。Tは技術利用(ネットワークやタブレット端末などを使用した主体的な学習)。Rはロボット利用(プログラミング学習でロボットや機器を利用した学習)。Eは工学教育(工作やものづくりからプログラミング学習では情報処理学習)。Aは美術(創造力・発想力を豊かに表現)。Mは音楽。Mは本来算数だが同校では創造性の育成を重視しており、音楽とした点が特徴だ。

 教科の学びの中でのプログラミング学習は、プログラミングと教科の狙いとの実現が図れる単元を探しながら実施。研究初年度は、プログラミングの授業がどのようなものであるか理解が不足していることが課題だった。そこで、市教委のプログラミング学習のモデル指導案を参考に、手探りで学期に1~2回実施することから始めた。授業と研修を積み重ねていくうちに、教師も教科内でプログラミング学習ができそうな単元を見いだせるようになり、実施回数も徐々に増え、学期の中で定期的に取り組み、指導案もバージョンアップしていった。 

ポイントは授業の導入と自由度の与え方

 教科内でプログラミング学習を行うに当たり杉浦教諭は「ICT機器やプログラミング教材は、最初のうちは利用制限を少なくし、簡単な学習課題で、児童にいろいろやらせてみる自由度を与えた。不安もあったが、自由な発想を見いだすために時間をとった。一通り試し、学習の道具として認識できるようになった後は、児童と教師で、授業の中でどのように扱えばよいのか応用して考えるようになった。ICT活用が苦手な児童には教師の支援だけではなく子供たち同士の教え合いを効果的に行った」と指摘する。

研究でのプログラミング思考育成から創造的な学びのプロセスイメージ

 実践における留意点は「授業の導入から学習課題の把握までが勝負。課題設定を明確に示し、個人で活動する時間や協働で活動する時間など授業の流れや組み立て(何かをしたいと思わせる工夫、学びの解決方法を理解させることなど)を考えることと協働学習や課題解決型学習(PBL)の視点を踏まえ方向性を示すことだ」と述べた。

見え始めた成果 児童と教師の変化

 1つの実践について杉浦教諭が語った。「20年11月の1年生の実践『ようこそ新しい1年生/生活科』。iMovieで本校のよいところを来年入学予定の幼稚園児らに紹介する映像を作る内容。教師は、児童がiMovieを活用できるのか不安に感じたが、操作手順を黒板に示すと、その内容を確認し、子供たち自身で意欲的に作業に取り掛かったことに驚かされた。互いの作品を見せ合い、良い点を見つけながら話し合っていた。児童は、園児が飽きないための工夫として『セリフを入れた方が良い』などと指摘したのをはじめ、疑問点はすぐに口にするとともに話し合いの中で良い点を取り入れ、解決策を見いだすなど教師の予想を上回る活動を示した。関わり合いの中で子供たちの良い関係が構築され、学び合う様子が見られたのは大きな成果である。以前は教師の指示通りに動くことが多く、教師に助けを求める児童も多かったが、自己肯定感が高まり、積極的に考えや意見を発表するようになった」と児童の変化に手応えを感じている。

 教師の変化に関して岡校長は「児童の考えが見えるようになると、個別対応もしやすくなる。指示出し中心の授業から児童の発想を大事にする授業になり、新しいものや発想を取り入れてみるなど柔軟になった。また、授業中に教師が話す時間が減少しファシリテーターの役目ができるようになってきた」と成果を語る。

 また、同校の指導に当たった(公財)パナソニック教育財団のアドバイザーでもある長谷川元洋金城学院大学教授は「児童が主体的に学習できている状況は、全校体制で組織的に取り組んでいることがベースにあり、各先生が丁寧に掲示物やプリントなどを準備していることに加え、児童が自分の力で必要な情報を確認したり、協力して問題を解決したりできるように育てていることによって実現している」と評価した。

今後の課題と展望

 岡校長は「プログラミング的要素で授業を考えるか、教科として授業を考えるかといった時に、プログラミングの操作一辺倒にならないようにバランスを考える必要がある。とはいえ、プログラミング学習を通して追究意欲が高まってきた子供の探究活動を止めない工夫も大切だ。そのため、高学年において教科内のプログラミング学習と総合的な学習の時間とを連携させた授業展開を模索している。授業立案準備への負担軽減に関しても、実践とエビデンスを積み重ねることで解決していきたい。また、本校の実践を波及させるため実践内容を冊子でまとめ市内小学校に配布している。研究発表会の場も含め効果的に成果を発信したい」と先を見据えていた。

制作:教育新聞ブランドスタジオ

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