1人1台端末の活用状況と活用から見えてきた成果と課題

大阪教育大学大学院連合教職実践研究科 准教授 寺嶋浩介

 GIGAスクール構想の実施に伴う1人1台端末環境の導入から多くの自治体では約1年、あるいはそれ以上が経過した。コロナ禍の真っ只中(まっただなか)で導入が始まったこと、持ち帰りを検討すべく各家庭への連絡が必要であったこと、各自治体により対応するため各地域でその違いが出てきたことなどが要因となり、保護者はもちろん関心が高く、毎日のように何らかの情報が報道されるようになった。

 この中での成果として、児童生徒が端末を活用した学習者中心の学習について、先進的に進めている地域や学校を通して、多くの事例が蓄積され、それらが公開、共有されつつあることが挙げられる。文科省以外に、この1、2年で各地の教育委員会が自地域だけではなく他地域にも参考になるような実践事例を公開しており、参考にすることができる。また、GIGAスクール構想の実施を支える各種企業も、円滑な導入に向けて技術的な情報を提供してくれている。1人1台端末を利用する学習の典型例は以前から文科省により公開されていたが、現在の技術よりそれが具体化された。

 また、教育におけるICT活用をよそ行きのテーマとせず、より多くの教師が関わり、議論をするようになった。GIGAスクールの前段階での「1人1台」の環境は、学級の子どもが1人1台端末を活用するという姿であった。40人学級で学校に40台ある端末をその時間内でどのように使うか、という話が展開されていた。これでは、ある教師は活用できても、他の教師は使えない、または使いたくないものはこれ幸いとばかりに使わなくても良い環境であった。GIGAスクール構想の実施は、学校の児童・生徒の人数分端末が配備される環境なので、必然的に利用について考えざるを得ない。これまでICTの活用を中心的に担当するわけではなかった教師が、これまで取り組んできたことICT活用の接点を見出そうという姿も見られるようになった。

 一方、成果よりも課題が多いという見方が一般的であろう。大きな課題として、日常化されていないという問題がある。1月終わりに株式会社JMCが「GIGAスクール構想に関する意識調査」について公開をしている。これによると児童や生徒に「週1回以上」端末を活用させている教師は68%ということであった。もし鉛筆やノートであれば、「週1回活用している」と聞いて、到底日常化されているとは言えないと思う。実際に毎日利用させていると回答しているのは26%であったそうであるが、多くのところでは利用されていないことが分かる。学習者用端末はさまざまある学習の道具の一つとして日常的に位置付けられてこそ、情報の収集や整理、蓄積や発信という視点から効果を発揮するものである。

 そして、日常化もされていないが、多くのところで非日常場面にも対応できていないことが新型コロナ第6波の中でも明らかとなっている。ウイルス感染拡大が始まればオンライン化への関心が高まり、落ち着けば「今は対面授業の充実を」ということが繰り返されている。初めから非日常場面だけを想定してそれだけのために準備を進めていれば、多くのところは疲弊し、喉元過ぎれば熱さを忘れる。日常的に端末の活用を進め、そのバリエーションを広げておけば非日常時にも何らかの対応ができるといったところにつなげられるのではないだろうか。

 日常化につなげるためのポイントだが、特定の最適解はなく、状況や教師により異なると思う。公開されている事例を真似してみる、簡単な一つの活用パターンで良いから繰り返し行う、授業だけでの活用に限定しない、失敗しても良いからやってみる、研修というより教員同士の学び合いを心掛けるなどが考えられる。

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