【学校給食特集】 安全・安心な学校給食の充実と改善を考える

 「学校給食を活用した食育の推進」について文科省から、「近年の学校給食における衛生管理」について専門家からの助言をいただき、安心・安全な学校給食の充実と改善に貢献できるよう、特集を実施した。

 また文科省から令和3年度学校給食優良学校として表彰された学校の取り組みを現場発の情報として紹介する。


◎【学校給食を活用した食育の推進】
◎【近年の学校給食における衛生管理】
◎【令和3年度学校給食優良学校の事例】

学校給食を活用した食育の推進 栄養教諭を軸に食に関する指導を

文科省初等中等教育局健康教育・食育課学校給食調査官 齊藤 るみ

 学校給食は、成長期にある児童生徒の心身の健全な発達のため、栄養バランスの取れた豊かな食事を提供することにより、健康の増進、体位の向上を図ることに加え、食に関する指導を効果的に進めるための重要な教材として、給食の時間や各教科などにおいて活用することができる。また、学校給食は、児童生徒が生涯にわたり健康な生活を送るのに不可欠な、栄養バランスの取れた食事のモデルとして、家庭における日常の食生活や、児童生徒の日常または将来の食事作りの指標ともなるものである。このため、日々の学校給食については、食事のモデルとしての教材となるよう、献立作成において配慮することが求められる。

 ところで、学校給食の献立作成は、栄養教諭らによって行われている。

 栄養教諭は、食に関する指導と学校給食の管理を一体のものとして行うことにより、教育上の高い相乗効果をもたらすことが期待されている。学校給食を規定している学校給食法においても、学校給食を活用した食に関する指導について、栄養教諭が行う指導を明記している。具体的には、学校給食において摂取する食品と健康の保持増進との関連性についての指導、食に関して特別の配慮を必要とする児童または生徒に対する個別的な指導、その他の学校給食を活用した食に関する実践的な指導を行うものと示されている。

 栄養教諭は、管理栄養士または栄養士の免許を有しており、栄養に関する専門性と教育に関する資質を併せ有する教師である。「児童生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる」教師として、その専門性を生かし、学校給食を教材として活用しながら、食に関する指導の実践などで中心的な役割を果たすことが求められている。

 文科省においては、「栄養教諭を中核としたこれからの学校の食育~チーム学校で取り組む食育推進のPDCA~」や「食に関する指導の手引―第二次改訂版」などを作成し、栄養教諭に求められている役割や、学校における食育の必要性などを示してきた。子供がその発達の段階に応じて食生活に対する正しい知識と望ましい食習慣を身に付けることができるよう、引き続き、学校における食育の推進をお願いしたい。

 学校における食育を推進する際に活用できる教材・資料として、ここでは「中学生用食育教材『「食」の探求と社会への広がり』」と「栄養教諭の配置効果に関する調査研究」を紹介する。

 中学生用食育教材は、中学生の時期の食育がその後の人生を通じた食生活の基盤を形成するとともに、社会の一員として必要な食に関する視点を育むものとして学ぶ必要のある内容を取り上げたものである。本教材は、「体を作る・動かす」「自らの『食生活』を営む」「体を守る・強くする」「食を通じて他者と関わり、よりよい社会をつくる」の4つのコンセプトで構成している。どのコンセプトからでも学べるように作成しているため、各学校や生徒の実情に応じて、必要な教材から活用していただきたい。

 また、生徒用教材と指導者用教材があり、指導者用教材の方には、「この教材で生徒に学んでほしいこと」「指導する際に配慮して欲しいこと」について、吹き出しでコメントを記載している。保護者向け資料なども添付している。保護者向け資料は、大人の体を作り上げる重要な時期である中学生の食について、家庭でも参考にしてほしい内容を取り上げている。保護者向けの講演会や食育だよりなどに活用していただきたい。

 本教材の専門的な内容については、栄養教諭の専門性を生かし、栄養学などの専門知識に基づいた指導を行うなど、ティームティーチングなどによる指導もお願いしたい。なお、教材の活用に当たっては、食育において中核的な役割を果たすことが期待される栄養教諭と学級担任や教科担任らが連携した指導体制を構築し、学校全体で食育に取り組む手法を開発し実践していくことが重要である。

 栄養教諭の配置効果に関する調査研究は、栄養教諭が中心となって行う個別的な相談指導に関する客観的な成果を明らかにしたものである。「肥満・やせ傾向にある児童生徒」「偏食のある児童生徒」「スポーツをしている児童生徒」「食物アレルギーを有する児童生徒」に対する相談指導による効果を整理している。12事例について、具体的な成果や指導のポイント、校内の連携体制などが示されている。効果を分かりやすくまとめたリーフレット「栄養教諭の配置効果を御存知ですか?―様々な課題に対する相談指導―」(画像)も作成している。

 これらを参考にした取り組みが広がることにより、子供たちが健康で心豊かに成長できることを願っている。

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健康被害の防止を最優先に 近年の学校給食における衛生管理

大阪公立大学大学院獣医学研究科 獣医微生物学教室准教授 勢戸 祥介

 2021年6月から全ての食品事業者は、HACCP(注)に沿った衛生管理を導入することになりました。学校給食調理場においても同様にHACCPの考え方を取り入れた衛生管理を実施する必要があります。HACCPの法制化により、食品事業者では「衛生管理計画の策定」や「記録の確認・保管」などが必要となりました。

 学校給食に関しては、文科省のHACCPの考え方を取り入れた「学校給食衛生管理基準(09年)」により、すでに「HACCPに沿った衛生管理」に取り組んでおり、各調理場に合った「衛生管理マニュアル」により問題なくHACCPの法制化に対応できたものと考えています。HACCPシステムにおいても「人的な組織の編成と責任体制の確立」が必要とされており、各調理場の衛生管理について関係者全員で検討するための組織を編成し、協力して衛生管理に取り組むことが必要です。

 このように、HACCPの法制化への対応に合わせて、各調理場での衛生管理マニュアルの見直しやその作業を通じて、衛生管理に精通するなど「衛生管理意識の向上」が図られたものと思っています。21年度は学校給食調理場を原因施設とする食中毒事件の発生件数は0件でした。今後も食中毒事件発生数「0」を目指して、引き続き衛生管理の見識を深めるとともに各調理場の「衛生管理マニュアル」も必要に応じて見直しを行っていく必要があります。しかしながらHACCPシステムの構築自体が食中毒を予防するわけではありません。構築されたHACCPシステムを順守し実践していくことで危害要因を除去あるいは低減させ、食中毒予防につなげていくことが必要です。

 「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を実践するための衛生管理体制を構築し、衛生管理のシステムを効果的に回していくために、各調理場の衛生管理マニュアルが形骸化することがないような仕組みづくりに取り組むことが必要です。この体制の長は学校長(給食センターにおいてはセンター長)が務めることになりますが、関係者一人一人の役割分担と責任体制を明確にし、協力して取り組むことが必要です。委託調理の場合においても同様に衛生管理体制の確立が必要です。

 近年、学校給食食中毒は激減していますが、給食への異物混入が多く認められ、虫、プラスチック片、木片、金属片などが混入物として報告されています。これらの異物は、食材に混入した状態で検収時のチェックで見逃された物、調理場において調理従事者(携行物を含む)に起因する物や各種調理器具の部品や破損物などです。学校給食に異物が混入することは、児童生徒が不快な気持ちになるだけでなく健康被害の危険も生じ、学校給食の目的が果たせなくなります。学校給食への異物混入を未然に防止するためには、学校給食衛生管理基準に記載されている以下の4点を徹底することです。

 (1)納入業者への施設・設備の衛生管理、車両の清潔維持を徹底し異物が混入しないように指導する。

 (2)検収については、虫などが混入しない構造の検収室、検収時に虫などが混入しないよう細心の注意を払う、外観チェック後搬送容器・包装を除去し確実に検収業務を行う。ダンボール箱などで納入される食材は業者が開封した後、専用の容器に移し替え検収すること。

 (3)調理場および調理業務従事者は5S(整理、整頓、清掃、清潔、習慣)を徹底する。調理従事者の身支度は相互に清潔を確認する。

 (4)調理器具はチェックリストに基づいて、作業開始前・作業中・作業終了後に点検し部品の脱落や刃こぼれがないことを確認する。

 また、異常や異物の混入を発見時には、速やかに報告する体制(発見者→調理責任者→栄養士→校長・所長)を構築し互いに情報を共有し、ささいな異常も情報共有できる人間関係の構築が必要です。異物混入が確認されたあるいは可能性がある場合は市町村教育委員会と対応を協議することも必要です。

 安全・安心な給食を提供するため、児童生徒の健康被害の防止を最優先に考え学校給食衛生管理基準を順守したHACCPの衛生管理を構築し、引き続き適切な衛生管理に努めていただきたいと思います。

(注)HACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入などの危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法。(厚労省HPから)

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家庭・地域とつながる食育 三つの重点目標の実現図る 興味・関心が高まり感謝の心も

埼玉県春日部市立牛島小学校栄養教諭 横川 一美

 本校は、埼玉県の東部に位置し、創立48年目を迎える15学級、児童数433人の中規模校である。学校教育目標を「思いやりのある子 進んで学ぶ子 たくましい子」、目指す学校像を「みんなで創る楽しい学校 ~通ってうれしい 学んで楽しい牛島小学校~」とし、保護者や地域社会の皆さまと共に豊かで充実した学校づくりに取り組んでいる。

 学校の特色として、栄養教諭を核とし、学校・家庭・地域と連携、さまざまな関係団体と連携した食に関する指導を行い、児童の健康をつくる望ましい食習慣の形成に努めるため、「学校・家庭・地域と連携して進めるつながる食育」を実践している。

 学校教育目標を受け、学校給食法による「学校給食の7つの目標」を踏まえて本校の学校給食重点目標を、①学校生活を豊かにし、明るい社交性および協同の精神を育てる②異学年・同学年との交流給食を実施し、給食を通じて豊かな人間関係を育てる③日常生活における食事について、正しい理解を含め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、望ましい食習慣を養い、自己管理能力を育てる――と設定。その3つの学校給食重点目標の基である【食で育む豊かな心「食」の大切さを学び、自ら健康づくりに励む牛島っ子の育成】を目指し、学校給食が児童の現在および将来の健康と幸福につながるものでなければならないと考え、目標の実現に向けて日々取り組んでいる。

活動の実践

 ①学校生活を豊かにし、明るい社会性および協同の精神を育てる活動

 (イ)学校給食は、コロナ感染対応マニュアル、盛り付け表、片付けの決まりに基づき実施。

 SDGsにも取り組む。

 (ロ)魅力ある献立作成を実施。

  • 地域を意識した献立を導入(地場産を取り入れた献立、埼玉県の郷土料理、春日部市のB級グルメ、姉妹都市の学校給食、春日部市の名物品を導入した献立、学校独自のオリジナルパン、学校独自のオリジナル献立)
  • 給食を生きた教材として、食に関する指導の年間計画と連携(教科と関連を持たせた献立、児童が考えた献立、給食委員会の児童が考えた献立、日本の行事食、食育の日の献立、図書コラボ献立、食物アレルギーを有する児童の除去食)

 ②異学年と交流給食を実施し、給食を通して豊かな人間関係を育てる活動

 (イ)多様な交流給食を年間計画により継続的に実施し、異学年との交流を図り、豊かな人間関係を育む。 

  •  バースデーランチ(同じ誕生月の児童と先生のお祝い給食)
  •  青空給食(特別活動の縦割り活動グループの仲間と、校庭で食べる給食調理員が作るお弁当給食)

 (ロ)セレクト給食、バイキング給食などを年間計画より継続的に実施し、多様な経験を通して学ぶ機会である。

  • 卒業おめでとうバイキング給食(食育の最終場面として、バランスのよい食事を自分で考えて選ぶことを実践する)
  • 学期末お楽しみセレクト給食(飲み物とデザートを自分で選択する給食、お楽しみの部分も多いが、いろいろな食べ物を知り、食に興味関心を高める)

 ③日常生活における食事について、正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、望ましい食習慣を養い、自己管理能力を育てる活動

 (イ)教科の中で食を見直し、知識を習得し、実践できる力を育むように努め指導している。

 (ロ)食に関する指導の年間計画のもと、栄養教諭と学級担任とTTの学習形態で実施している。

 (ハ)食に関する指導の年間計画のもと、栄養教諭とNPO法人や食品企業や地元農家などその道の専門家と連携して、体験活動を中心とした授業を実施している。

 3つの重点目標の実現に向けて、「学校・家庭・地域と連携して進めるつながる食育」を日々取り組んでいる要のツールとして、ホームページを充実させている。

 「牛島の食育」として、12のアイコンと食育のブログを通して取り組みを紹介している。

 次の①今日の給食②多様な給食③食育の取り組み④食に関する授業⑤レシピ紹介⑥食に関する校内掲示⑦食育だより⑧家庭配布献立表⑨給食室紹介⑩児童給食委員会⑪給食・食育表彰⑫食に関する情報、そして、◎食育ブログ「牛島の食育は今」――である。

実践の成果と今度の課題

 成長期の子供たちが健やかに育つためには、早寝早起きをし、朝ごはんをしっかり食べるという、基本的な生活習慣を身に付けることが大切で、この取り組みに本校では力を入れている。朝食の欠食率は1%未満である。

 さまざまな食育の取り組みにより食に興味・関心が高まり、食に感謝する児童が増えた。

 食育の取り組みには、保護者の興味・関心があり、実施後の感想から理解や協力が非常に高いことが分かった。

 家庭・地域とつながる食育を進めることで、家庭と地域の協力体制ができた。

 食育は、教科ではないので、継続的、系統的に実施するためには、食に関する指導の全体計画、年間指導計画などの作成が重要である。

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食に関する関心が高まる 地域とつながる学校給食と食育 ふるさとを誇りに思う心を

新潟県阿賀野市立安田小学校栄養教諭 廣澤 謡子

 本校は、児童数385人、17学級(特別支援学級3つを含む)の中規模校である。平成の大合併で安田町などの4町村が合併してできた阿賀野市にあり、旧安田町にあった5校が段階的に統合して2017年4月に旧安田町唯一の小学校として生まれ変わった。教育目標に「学びをつなぎ 心ゆたかに生きる」を掲げ、「つながりをつくり チャレンジする子ども」を目指す姿として教育活動を展開している。

 学区は豊かな自然環境に恵まれ、多くの農産物が生産されている。また、新潟県酪農発祥の地を有し、現在でも酪農が盛んである。さらに、近年はウナギが養殖されるなど食に関する多様な産業が行われている。こうした地域の多様な学習材を生かし、学校では地域の食に焦点を当て、食べ物や料理を知り、また、それに携わる人と関わることで地域を愛する心を育んだり、社会性を養ったりする活動を行っている。

具体的な実践

(1)地域の食材を活用した学校給食の提供

 米は、阿賀野市産コシヒカリを使用し、安田地区の生産者や近隣のJA(農業協同組合)の協力を得て、積極的に地場産野菜を活用した給食を提供している。さらに、安田地域の特色ある食品「やすだ愛情牛乳」「ヤスダヨーグルト」「新保こんにゃく」「三角あげ」などの地域の食材を給食に積極的に取り入れている。

 21年度の給食週間では、「安田のうなたま丼」として、安田地域で養殖されている「あがの夢うなぎ」を給食で提供。安田は、日本で養殖されている「ウナギ」の最北の地。ウナギが苦手な人も食べやすいように、どんぶりの具にして提供している。また、毎月19日の「食育の日」には、季節のお薦め食材や郷土料理を取り入れた献立などを提供している。

(2)自己管理能力と地域を愛する心の育成を目指した学習活動の展開

 各学年の発達段階に応じて、各教科などにおける食に関する学習を学級担任と栄養教諭が連携して指導に当たっている。

 一人一人が自分の食生活を改善するための具体的な目当てを決め、意思決定を図ることを通して、自己管理能力の育成を目指している。給食時間の指導では、季節の食材や地場産物の興味関心が高まるよう、写真を見せたり、クイズで考えさせたりするなどの工夫をしている。

 3年生では、総合的な学習の時間に、夏休みに地域食材を使ったオリジナル料理を考え、家庭で調理する課題に取り組んでいる。この活動をさらに発展させ、「安田のおいしい物探検隊」として地域の食に関係する施設を見学し、食に携わる方々から話を聞いている。

 21年度は、「ヤスダヨーグルト」の工場、地元でみそ造りをしている麹店、安田学校給食センターなどを訪れ、食材に懸ける生産者の思いや願い、調理の苦労などについて話を聞いた。

 さらに、阿賀野市の食生活改善推進委員の方々と一緒に安田地域の食材「三角あげ」を使ったみそ汁作りに取り組み、10月の学習発表会では、こうした学習の成果を全校児童や保護者に安田のおいしいものを紹介する表現活動として発表した。

 活動を通して、食への関心とともに地域を愛する心が育まれるようにしている。

(3)保護者らとの連携を図るための情報発信

 給食だよりなどを活用して食に関する取り組みの内容について保護者に情報を発信し、保護者、地域と連携して食育の指導に当たっている。

 阿賀野市の生活習慣病予防事業の調査結果で、安田地区児童生徒の野菜の摂取不足、塩分の多い食生活、糖分の多いジュースの取り過ぎが課題であることが明らかになった。そこで、朝食の欠食率をさらに低くしたいと考え、朝食摂取の重要性や献立内容の充実について情報発信したり、食に関する指導の内容や給食のレシピを紹介したりしながら保護者の食に対する関心を高められるようにしている。

実践の成果

 こうした食に関する多様な取り組みを通して、児童は食に関する関心を高めてきた。保護者との連携を図ったことと安田地区に食に関するさまざまな文化、産業があり、そこで働く方々に直接関わることで刺激を受けたことが成果の要因であると考えている。

 今後も、地域とつながる学校給食の提供や学習活動の充実を図り、食への関心とともに、ふるさと安田を誇りに思う児童の育成を目指したい。

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