20回記念特別対談【図書館を使った調べる学習コンクール】

知的好奇心、資料活用力など伸ばす
疑問を丹念に調べて探ることから

(公財)図書館振興財団主催の「図書館を使った調べる学習コンクール」は、今年で20回を迎える。図書館資料を活用して、各自の調べたいテーマについて調べて学んで考えたことを整理して発表する同コンクールは、21世紀を生きる子どもたちに求められる力の育成に大きく貢献してきた。このことは国立教育政策研究所がこのたび実施した同コンクールの教育効果に関する調査でも示されている。そこで、審査員長を務める銭谷眞美東京国立博物館長と調査当時の国研所長である大槻達也東北大学理事に対談してもらい、コンクールの功績、意義などについて語ってもらった。
(進行・齊藤英行(株)教育新聞社代表取締役社長)

地域での学びづくりに効果
大槻達也 東北大学理事(前国立教育政策研究所長)
図書館活用は学力の向上へ
銭谷眞美 東京国立博物館長(元文部科学事務次官)

pr20160704――「図書館を使った調べる学習コンクール」の功績、意義は。

銭谷 学校に設置されている学校図書館、あるいは各都道府県や市町村などの各自治体が設置する公共図書館などを利用して、子どもから大人まで多くの方がいろいろな学習活動をしています。図書館には、書籍、雑誌、新聞、さらには視聴覚関係の資料もあります。これらの図書館資料を活用して、各自の調べたいテーマについて調べて学んで考えたことを整理して発表する、このコンクールはこのような企画です。昨年の19回では、これまでに最多の7万点を超える作品の応募がありました。

審査員長を務めていますが、毎回、子どもも大人も日頃の生活で疑問や課題に感じていることなどについて丹念に調べて追究する作品が目立ちます。入賞者には、五つの角がある星のかたちをした楯を贈呈しています。五つの角は、「不思議だなと思う知的な好奇心」「図書館でいろいろな資料を使って調べる力」「調べた結果を読み取る力、理解する力、読解する力」「調べた結果をよく考えて、もっと調べることはないかと考える力」「それらをまとめ上げる力」を表しています。年々素晴らしい作品が増えてきていることから、コンクールがこの五つの力を子どもたちが身につけていくことに、大きな役割を果たしてきたのではないか、と考えています。

大槻 コンクールが20周年を迎えるにあたり、これまでの成果や役割、生涯学習における意義などを調査分析するよう図書館振興財団から国立教育政策研究所に依頼がありました。読書活動、読書教育について研究実績のある研究所内外の研究者によって、質問紙調査と訪問調査を行いました。質問紙は、18歳以上となったコンクール入賞者を対象に「図書館を使った調べる学習」が今の生活にどのような影響があるかを聞いたほか、地域コンクール主催者や入賞した指導者にも尋ねています。訪問調査は、調べる学習が盛んな6つの地域をピックアップし、現地で聞き取りを実施しました。

特徴的な結果としては、入賞者は「調べる学習」により「知的好奇心」「図書館の文献・資料を活用する力」「学ぶことへの意欲」「文献を適切に参照する力」「文章を構成する力」「文章を表現する力」などが身に付いたとしています。指導者の見取りでも、文献などから適切な情報を得てまとめる力や学ぶ意欲などが育ってきたという結果が出ています。

――図書館の活用と学力との関連については。

銭谷 現行の学習指導要領では、言語活動の充実を大きく打ち出しており、そのために読書活動の推進を強調しています。読書活動は言語活動に大きく貢献すると私は考えています。

平成5年に国において初めての学校図書館整備計画が定められました。まず子どもたちの利用に資するため、蔵書を増やすということに取り組み、蔵書や新聞等の図書館資料の整備を推進しました。続いて平成9年には、学校図書館法を改正して「学校図書館の専門的職務をつかさどる」司書教諭の配置を12学級以上の学校に義務づけました。学校図書館を活用した教育活動を企画することなどがねらいです。24年度から公立小・中学校の学校司書の配置にかかる経費について地方財政措置が講じられることになり、さらに26年には学校図書館法が改正され、学校には司書教諭のほか学校司書をおくよう努めなければならないことになりました。学校図書館の活用は、このように進んできており、子どもたちの図書館利用およびその指導はますます拡充していくことと存じます。環境整備が図られ、学校図書館がより身近なものになれば、子どもの学習活動の活性化、ひいては学力の向上につながっていくでしょう。

大槻 図書館を使っていろいろ調べるということで、知る喜び、分かる楽しさなどが感じられた、ということが調査では出ています。情報活用してまとめる力が培われ、作品をまとめるという達成感を味わったことで生涯にわたって学習することへの動機づけになった、学び方を習得したなど、多様な成果が調査によってわかっています。

銭谷 次期学習指導要領の改訂が進められる中でアクティブ・ラーニングが注目を集めています。いま、大槻さんの話を聞いていて、図書館を使った調べる学習がそのベースではないかと感じました。例えば、ある国について調べる学習に取り組んだとして、まず図書館でいろいろな資料にあたり調べていく、調べたことを整理してその調べ方でいいのかどうか考える、そしていろいろな考察を加え調べたことをまとめる、最後に発表する、これは立派なアクティブ・ラーニングです。今求められているアクティブ・ラーニングを実施する上で、学校図書館は大きな役割を担っていくと思いますし、大きな成果が期待できます。

大槻 調査で浮かび上がってきたのは、「調べる学習をしなさい」と言ってもなかなかできるものでもなく、司書教諭などが導いていく必要があるということです。例えば、夏休みの自由研究について、休みに入る前に「調べ方講座」のようなものが学校図書館や公共図書館の主催で行われています。公共図書館と学校図書館、社会教育と学校教育の双方が連携して開講している例、地域の専門家や会社の経営者などが協力する例などもあります。

銭谷 フィンランドは学力が高いことで有名ですが、以前、調査団として同国を訪問しました。同国は国語であるフィンランド語をとても大切にしています。学校図書館に案内してもらったのですが、蔵書が多く、かつそこには必ず大人の人がたくさんいました。司書、またはボランティアのスタッフということで、子どもたちの手助けをしていました。

――図書館活用のいい事例は。

大槻 福岡県宇美町では、町長が社会教育出身の方で、社会教育に熱心です。公共図書館と学校図書館、あるいは教育委員会の学校教育部局と図書館、社会教育が非常にうまく連携しています。千葉県袖ケ浦市なども同様です。

地域で熱心に取り組んでいるところでは、「図書館を使った調べる学習」の実際の姿が「見える化」しているのです。上の学年の取り組みが、下の学年の子どもたちによく見える。どういうことをテーマにどのような学習をしているかがわかり、自分たちもやってみたい、と下の学年のモチベーションにつながっているようです。

銭谷 公共図書館でも学校図書館でも蔵書が増えるのはいいことですが、「調べる学習」にはガイダンスが必要になります。子どもたちが今何を調べたいのか、それにはこういう観点が大事で、このように調べたらよい、などというアドバイスがあり、それに沿って子どもが本を選んで読んでいく、そういうことが最近、図書館の役割として大事になってきています。

――図書館の活用で、教師にアドバイスを。

銭谷 学校図書館は、子どものためだけではなく教師のためのものでもあります。教師は多忙ですが、ぜひ教師自身が時間をつくって学校図書館に足を運んでいただきたい。自分の授業の中で学校図書館をどのように活用できるか、子どもたちにどういう力をつけたいのかを考えたとき、どう活用できるのか。こういうことを考え、ぜひ図書館を教室にしてほしいのです。

大槻 そのような授業を横浜市などでも見たことがあります。例えば、小学校の国語の授業で、担任と司書が協力し、図書館を教室にして、調べてまとめ発表するもので、子どもたちも主体的に取り組んでいました。

――同コンクールへの期待は。

銭谷 学校図書館は学校の教育課程の展開に貢献できる施設であり、公共図書館は地域の方の生活の向上や地域の方々の読書活動への貢献など、生涯学習の発展のベースとなる施設です。このような学校図書館と公共図書館を活用した「図書館を使った調べる学習」コンクールは20回目を迎えるわけですが、今後ますます多くの方が参加をしていただき、各自の学習活動を楽しんでもらいたいと考えます。図書館は、読書センター、学習センター、情報センターという三つの機能を持っています。このコンクールは、その三つの図書館の機能を満たし応募できる、というものです。生涯学習の発表の場、学校教育の展開を問う場として適しています。さらに多くの方に参加していただければありがたいと思います。

大槻 調査で訪問した福岡県宗像市では、複合文化施設の中に図書館があり、全体をうまく使って「子ども祭り」を開催していましたが、調べる学習の地域コンクールの表彰式もそれに合わせて行っていました。子どもたちが保護者と一緒に作品を見て動機づけられ、図書館の利用にもつながっていき、このような好循環が地域での学びづくりにとても有効だと思われました。地域コンクールが全国的に実施されるようになれば、各地の魅力づくりにもつながると思います。地域コンクールの実施にぜひ挑戦してほしいですね。