調べる学習の魅力掴む【図書館を使った調べる学習コンクール】

筑波大学附属聴覚特別支援学校小学部
仲濱佳穂教諭に聞く
理想の教師像にも影響
図書館を使った調べる学習コンクール受賞で

調べる学習を通じて物事を自ら掘り下げ、地道に調べるプロセスの大切さ、考える楽しさを学んだ――。筑波大学附属聴覚特別支援学校小学部の仲濱佳穂教諭は「図書館を使った調べる学習コンクール」で2回の優秀賞受賞経験を持つ。そんな同教諭に同コンクールで身に付いた力、進路への影響、調べ学習の意義などを尋ねた。

■身に付いた力

生まれ育ったのが調べる学習の盛んな千葉県袖ケ浦市。通った小・中学校では、個々の児童生徒が主体的に興味を深め、学校図書館を活用し探究的に学ぶ授業がとても大事にされていました。私も総合的な学習で方言について追究する学びなどに取り組みました。

中学校3年の時に初受賞したレポートタイトルは「世界を救うキャップ」。生徒会活動で収集したペットボトルキャップが途上国の子どもなどを助けるワクチンに変わる流れに興味を持ったのがきっかけです。内容も世界の難民と飢饉の現状、難民支援に向けた効果的なボランティア活動の在り方など、どんどん関心が広がり調査も深まっていきました。

2回目は、特別支援教育の教師を志し学んでいた大学生の時です。障がい者の就労支援ボランティアに携わった際、大学生協で販売を担当していた同い年の田口和樹さんと「火山のおいたち」の作品を7カ月かけて仕上げました。

田口さんは聴覚と知的障がいを抱えていましたが、火山への興味がとても強く、たくさんの本を読む人でした。当初、火山と溶岩の流れに最も興味があると思い、調べ始めたのですが、彼の本当に知りたいことが分かるまでとても時間がかかりました。

結局、浅間山から草津白根山、赤城山の噴火の歴史、造山形成の過程など、幅広い内容をまとめあげました。調査に寄り添い励ます中で、元々の興味が次々に広がり、考えが生まれ深まるのが調べ学習の醍醐味だなと再認識できました。

コンクールという機会がある中で、振り返ると、とても良い環境で育てられたのを感謝しています。先生方は子どもの興味を受け止めながら、一人ひとりが抱いた疑問を新たな追究課題に結び付ける助言がうまかった。そんな影響もあって、さまざまな出来事から自分なりの興味を持ち、地道に調べていく楽しさや力のベースが育まれたと思います。

■進路や仕事への影響は

受賞で自信を深め、調べ学習に熱心に向かう中で、自分は福祉に興味があると気付いたのが進路に大きな影響を与えました。また、特定の知識だけを覚える学びとは異なる醍醐味も知りました。このような学びに夢中になり、継続できたのも、小・中学校の先生方や読書指導員の方々が、私の興味をよく見つめてくださり、適切な助言を送り続けてくれたおかげだと思います。

袖ケ浦市の小・中学校では、学校図書館に読書指導員が常駐し、いつでも学習や関連する本の相談に気軽に乗ってくれます。中学校の読書指導員さんからは、「この調べ学習が進んだら、人生がダイヤモンドのようにきらきら輝くよ」と励ましてくれたのが強い印象に残っています。この経験が教職という進路に結び付きました。障がい児教育という方向も田口さんとの共同作業の経験が大きく影響しています。

田口さんは当初、自分の思いを言葉でうまく表現できないいらだちから、乱暴な行動をしてしまう面がありました。しかし、田口さんが調べる学習で考えを深め、多くの言葉を獲得する中で、自分の思いを豊かに伝える力が育っていくのを目の当たりにして深い感動を覚えました。現在の勤務校の面接でも、この時の経験を話し、言葉を耕し人生を豊かにする指導観の軸を得ました。

■調べ学習の意義とは

同コンクールの受賞と調べ学習の力が自分の自信や持ち味になっています。現職では、どの先生方も児童の興味、関心を受け止め、引き出しながら、一人ひとりが自分なりの学習テーマを持って学ぶ授業を実践しています。

そんな指導の姿に感銘と影響を受け、日々、児童の言葉とやりとりを記録しながら、児童主体の学びを実現する指導力を高めようと努力しています。このような指導観や研鑽への意識を持てたのも、コンクールを通じた調べ学習の魅力と教師の数々の努力を知ったからです。

現在は小学部6年生の指導を担っています。同校の教員たちは、近くを流れる江戸川の水深や校内の樹木など、子どもに身近な題材を個々で調査しながら、みんなで発表、共有する学び合いを大事にしています。児童の主体的な学びは、単なる子ども任せでは実現しません。これまでの調べ学習の経験と日々の指導力向上の努力を重ねる中で、教師が児童の言葉や思いを丁寧に受け止め、学びの興味や探究を深める言葉掛け、支援を行う必要があると実感しています。

多くの恩恵を与えてくれた先生方の努力を振り返りながら、教師として子どもが発する言葉や疑問の小さなニュアンスをしっかり読み取る力を磨きたいです。そして、児童が調べる楽しさを感じるためのきっかけを数多く提供したいと思います。