【教材整備特集】自治体間の格差を危惧 総合教育会議で教材費充実に向けた議論を

丸山洋司 文部科学省大臣官房 会計課地方財政室長に聞く

平成24年度から10年間、公立小・中学校で使用する電子黒板や理科教材などの充実を図る「義務教育諸学校における新たな教材整備計画」が、今年で4年を経過した。各自治体が使途を決める地方交付税を通じて公立学校の教材費となる同計画。現在、どのような状況にあるのか、丸山洋司文科省大臣官房会計課地方財政室長(取材当時)に聞いた。

――学校教材整備の現状は。

昨年、文科省がまとめた教材費決算額調査によれば、26年度の基礎自治体における決算額は約690億円で、対前年度約33億円の増となっている。決算額の増額理由について、基礎自治体に聞き取ったところ、小学校教科書改訂に伴う指導書等の購入や電子黒板等の整備に要した費用の増が主な理由だった。

――教材整備基準と国の財政措置はどのようになっているか。

文科省では、23年度に学校における教材整備のための参考基準として「教材整備指針」を示している。この指針に例示される学校教材の整備が安定的・計画的に実施できるよう、24年度から33年度までの「義務教育諸学校における新たな教材整備計画」を策定した。この計画に基づき、小・中学校において単年度760億円、10カ年では7600億円の地方交付税措置が講じられている。

26年度における教材費の地方交付税措置に対する決算額割合は約91%で、24年度の計画策定以降、9割以上の措置率という高い水準を保っている。使途が特定されない地方交付税措置においては、極めて高い措置率だと思っている。

12年度の地方分権一括法の趣旨を踏まえ、13年に策定した前整備基準である「教材機能別分類表」では、各学校・基礎自治体の自主性・自律性の尊重の観点から、整備数量の例示を示さないようにした。その結果、予算措置率は著しく低下した。

しかし、24年度に策定した現行の教材整備基準である「教材整備指針」では、教育委員会関係者や学校関係者からの意見も踏まえ、数量基準を復活させた。さらに、総務省の協力で、交付税措置内容に関するリーフレットを作成するなど、教材費の積算内容について周知を徹底した。その影響もあってか、「教材機能別分類表」策定以前の水準に戻った。

――地方交付税措置における教材費の積算方法については。

公立小・中学校における教材費は、地方交付税の算定における基準財政需要額のうち「小学校費」「中学校費」に係る単位費用に算入されることによって、地方自治体への所要の財源措置が講じられている。

27年度では、学校教材費は学級数を測定単位とするもの(学級数に比例すると考えられる経費)の中に、「教科用図書及び備品」として算入されている。普通交付税の単位費用は、それぞれの費目の財政需要額の算定モデルとなる標準団体や規模等を想定して算定される。

例えば、市町村分の小学校費の標準規模は、1学校あたり学級数18学級、児童数690人(40人×3学級×4学年+35人×3学級×2学年)となっており、学級数を測定単位とする経費の中に「教科用図書及び備品費」として18学級で254万6千円、1学級あたり14万1千円が算入されている。

同様に中学校費では、1学校あたりの標準規模は、1学校あたり学級数15学級、生徒数600人(40人×5学級×3学年)となっている。学級数を測定単位とする経費の中に「教科用図書及び備品費」として15学級で252万3千円、1学級あたり16万8千円が算入されている。

また基準財政需要額の算定にあたっては、寒冷地度(暖房費や除雪費等の増加需要)など、各地方自治体の置かれたさまざまな条件の差を反映し、測定単位の数値を割り増しするための補正係数(補正率)を乗じて得た額とされている。各自治体では、地方交付税積算ベースでの算入額を算定し、予算要求等に活用していただきたい。

――教材整備を停滞させるのは自治体の財政状況との指摘があるが。

前に述べたように、全国ベースでは高い措置率ではあるが、整備主体である基礎自治体別の整備状況には格差が見られる。地方交付税措置という一般財源を原資とするため、各自治体によって、ある程度の差があるのは許容されるべきだと考えている。教育委員会関係者や学校関係者に話を聞くと、「財政当局に相談したが『財政状況が厳しくて、整備が進まない』と言われた」といった話をよく聞く。

そこで、基礎自治体の中で、人口規模や財政規模が比較的に均一な地方自治法上の中核市における22年度から25年度までの1学級あたりの教材整備額と、財政基盤の強弱を示す財政力指数、財政構造の弾力性を判定する経常収支比率との相関について財務分析を行ったが、明確な関係性は認められなかった。

地方交付税等の一般財源による整備は、国庫負担金等と異なり、その使途を特定できない。地方自治体の財政状況の悪化等を主な要因として、他の行政分野との優先度等の比較により、結果として教育環境整備予算が十分に確保されない状況を生み出していると予測していた。しかし、この調査結果からは、必ずしも自治体の財政状況が、教材整備経費に影響を与えているとはいえない状況であった。

一方、22年度から25年度までを通じてみると、全体の約40都市中、上位5都市と下位5都市の自治体が、ある程度固定化されている実態も浮き彫りとなった。教材整備の現状は自治体間で格差が生じている。義務教育の実施という国のナショナルスタンダードの実現を脅かすような状況を強く危惧している。

――教材整備の予算獲得に向けて、どのように総合教育会議を活用したらよいか。

基礎自治体における教材整備を充実させるためには、教材整備計画の策定は不可欠だ。そのために必要となるのが基礎自治体の総合計画に教材整備計画をしっかりと位置づけることだ。

自治体によって総合計画の組み立てはさまざまだが、約10年間を射程に入れている。その下には行政分野ごとの個別計画がある。また5年間程度を推計する中期財政計画が併せて策定されている。

この個別計画については「改正地方教育行政の組織及び運営に関する法律」により、全ての地方自治体に必置となった総合教育会議での審議・調整を通じて、首長により策定される教育大綱に教材整備計画を位置づけることが有効であると考えている。いわば、教育大綱を通じて自治体内で方向性を共有化するという意味がある。

これにより、教育委員会と財政当局間で毎年の予算調整について議論しやすい状況が生まれる。総合教育会議では教育委員会側から教材整備計画等の教育環境整備の事案について積極的に提案してほしい。

文科省としては、基礎自治体において各学校や児童生徒等のニーズを踏まえた教材整備に必要な予算確保を望んでいる。学校教材の安定的・計画的な整備が進めば、充実した指導が期待できる。引き続き財政措置の充実を図るほか、リーフレットの配布や各種会議での説明等を通じて、各自治体での取り組みを促していきたい。


 

今そろえたい学習ツール

小学校英語のデジタル教材や中学校数学・理科の指導者用デジタル教科書――。豊かな教育環境を実現するために必要な教材整備の参考になるよう、今、学校でそろえておきたい学習ツールを集めた。

◇英語=開隆堂出版|文溪堂|東京書籍|内田洋行

◇理科=大日本図書|新興出版社啓林館|東京書籍|内田洋行|鈴木楽器製作所

◇数学=新興出版社啓林館|大日本図書

◇音楽・和楽器=カシオ計算機|鈴木楽器製作所

◇武道=東映教育映像部