特別支援教育部門【第13回博報教育フォーラム】

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届く言葉をかけ共にやってみる

岡山県津山市特別支援教育推進センター 吉田英生所長

「子どもが育つ特別支援教育~子どもにことばが届くとき」と題して発表したのは、岡山県津山市特別支援教育推進センターの吉田英生所長(同市立北小学校副校長)。

同校は中規模校で、児童260人、12学級。通級指導教室は3年前に設置された。同所長は同市教委在職中に、市立西小学校の通級指導教室「ことばと情緒の教室」と市立西中学校の通級指導教室を束ねて同センターを立ち上げた。ここを拠点に、市内全域と市外圏域の小・中学校における特別支援教育のニーズを、まちぐるみで満たす姿勢を示した。

特別支援教育を受ける子どものイメージとして「どんな顔を思い浮かべるだろうか」。「困ること、気になるところ、できないことが多く、これからが心配」と思う人が多い。「そんな眼差しの中で学ぶのは、子どもたちにとって幸せか」と吉田所長は問いかける。

特別支援の子どもが大声を出したり動き回ったりして授業の妨げになるのは本心からだろうか。「認知の特性や過敏さがあっても、人間関係による励ましや共感する態度で、子どもは支えられるのではないか。積極的な交流を続けていくなかで、肯定的な自己意識が育つのではないか」。

そこで、(1)子どもの内面の思考に沿った言葉をどのようにかけていくか(2)拒否や抵抗とどう向き合うか(3)子どもに関わる人にどのような理解を求めるか――の3点を関わる側の視点として週1回、1時間程度、子どもたちと向き合った。

吉田所長が支えにしているのは「一期一会」。「子どもに言葉が届くという視点で言えば『一語一会』。たまに行く通級指導日がうれしくて、先生に会うのが楽しい。そんなふうに、子どもの暮らしの中の一部になることが大切」と指摘する。

吉田所長がそのように感じるのは、自身の経験があったからだ。その事例の一つを話した。

なわとびが苦手な子どもに、「これ、魔法のなわとびだから飛べるよ」と語りかけたところ、「うそをつくな」と言われたことがあった。「そんな時は『うそをつかないでね』と言うんだよ」と伝え、再び語りかけると今度は「うそつかないで」とこたえた。自分に拒否するものにぶつかると、相手にきつい言葉をいい、たしなめられると拒否感を増幅させる、そんな教育課題のある子どもへの対応を考えさせる一幕であった。吉田所長はその日、家路につく時にふと思った。「子どもに、うそをつかないでねと言うのは変だ。『本当?一緒に飛んでみよう』と別の言い回しの方が、もっと子どもの内面の思考に沿った指導ができたのでは?」と反省したという。

「子どもと一緒にできることがある。それが大切」。このことを伝えるのに、保護者のための学びの機会となる便りとして「STREAM」(ストリーム)を発行。同僚の教師たちには、月曜日の午後7時半から学びに集う場を設け、子どもたちに主体的な力をつけるための指導活動を行っている。

「あきず、あせらず、あきらめず。一つひとつの積み重ねが大事」と呼びかけた。