(座談会)みんなが使いたくなる図書館に part1【学校図書館特集】

現在進行中の第4次学校図書館図書整備5か年計画は、今年度が最終年度となる。現状の課題、現場の工夫や願いなどを含め、「学校教育の充実に向けた学校図書館の役割と、教師も児童生徒もみんなが使いたくなる学校図書館にするには」をテーマに、学校図書館関係者による座談会を行った。
(司会・教育新聞編集委員 池田康文)


司会 まずは図書標準の達成率など。

かけ算で力を発揮していく 文部科学省初等中等教育局児童生徒課長 坪田 知広
かけ算で力を発揮していく
文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
坪田 知広

坪田 平成26年度「学校図書館の現状に関する調査」によれば、図書標準達成率は小学校60.3%、中学校50.0%。司書教諭の発令は小学校98.4%、中学校97.2%、高校93.0%。学校司書の配置は小学校54.4%、中学校53.1%、高校64.4%です。

司会 高校の司書教諭について。

小林 高校では自治体の判断で学校司書が先行配置され、国の法律と実態が後先になりました。高校の司書教諭と学校司書の協働事例はいま蓄積中で、モデルとなるケースはまだ多くないです。原因は、司書教諭も学級、教科、部活動を兼務し、学校図書館に専念する時間が保障されていないところにあると思います。また司書教諭養成の際に実務経験による単位の読み替えが認められていた時期があり、知識や技量には個人差があります。その一方で、限られた蔵書や時間を有効活用し、学校図書館を活用した授業を展開しようと工夫している司書教諭もいます。そうした実践を普遍化させていければと思います。

司会 横浜市が求める学校司書の資質能力は。

守屋 昨年の改正法施行以前から4期にわたり配置され、この4月から全ての小中に完全配置されます。学校司書に求められるのは、子どもや本が好きで、学校教育への理解と熱意です。特別な資格要件はありません。応募時の小論文、面接と実技で選考され採用となり、最長5年契約を継続できます。その後、再度応募するのは可能です。

司会 司書教諭との連携は。

守屋 私の学校では週1時間、時間割に司書教諭との打ち合わせが入っています。他の先生にもその時間が分かります。顔を合わせて話すと、細部まで打ち合わせられます。常勤で待遇は時間給ですが、1校に1人、1日5~6時間、週29時間なので、授業時間のほとんどでいられます。自治体によっては1人が2校も3校もかけ持ち、1校に2時間しかいられない場合もあります。

学習効果実感できるように (公社)全国学校図書館協議会理事長 森田 盛行
学習効果実感できるように
(公社)全国学校図書館協議会理事長
森田 盛行

司会 以前を振り返り、現状はどうか。

森田 昔を思うと隔世の感です。私が学校で学校図書館を担当していたとき、教育委員会に司書教諭にしてほしいと言っても、司書教諭って何ですかと。現在では、学校図書館の重要性を誰もが言うようになりました。学校経営の中に図書館が入ると、教員も学校図書館を使った授業をしなければとなります。でも、そうしなければではなく、学校図書館を使うと学習効果があると実感できることが大切です。

司会 図書の分野には、かなり偏りがあります。

バランスのよい蔵書を図る 日本児童図書出版協会会長 竹下 晴信
バランスのよい蔵書を図る
日本児童図書出版協会会長
竹下 晴信

竹下 小学校では文学65%、自然科学約10%。中学校では文学約37%、自然科学12%強、社会科学10%、歴史9%。書店で買われにくい本があります。だからこそ、学校図書館できちんと本をそろえる。平成28年度までの第4次学校図書館図書整備5か年計画が実施されていますが、なかなか本に転化されない状況があります。学校で本をバランスよく購入すれば、多様な本を出版していける好循環が生まれます。同時に、出版社の責任として、学校が必要とし、教科と関連した本をきちんと作っていかなければなりません。学校図書館に本が確実に入るために、交付税ではなく交付金にしてほしいと願っています。自治体によって大きな差があるのは、義務教育として問題があると思います。

坪田 立派な本が多くあっても、使われないと意味がない。古い本を廃棄せず蔵書数が伸びていくのでは困ります。使える本が新しく揃っている。今後は主権者教育に力を入れる必要があり、そうすると社会科学分野が必要です。またエネルギー問題があるので自然科学分野の本も。それらをバランスよく置いてもらいたいです。それから開館時間。登校から下校まで開けておけばいいと思います。

学校図書館力は「蔵書数×開館時間×読みたくなる環境×人材×授業での活用×……」と、かけ算で決まります。交付金にすると、それだけやっていればという気がしてしまいます。交付税は首長の意識で使途が違ってきます。文科省からの働きかけがなかったり、教育効果のエビデンスがなかったりすると、道路や橋にいくでしょう。次の5か年計画には、最大限の大きな枠を確保しようと頑張ります。学校図書館では、書店では出会えない、ネットでは引っかからない本に出会わせる。こうして出版界との好循環が生まれる。これも学校図書館力だと思います。