(座談会)みんなが使いたくなる図書館に part2【学校図書館特集】

現在進行中の第4次学校図書館図書整備5か年計画は、今年度が最終年度となる。現状の課題、現場の工夫や願いなどを含め、「学校教育の充実に向けた学校図書館の役割と、教師も児童生徒もみんなが使いたくなる学校図書館にするには」をテーマに、学校図書館関係者による座談会を行った。
(司会・教育新聞編集委員 池田康文)

竹下 本と出会わせるには仕掛けが必要です。

守屋 例えば折り紙の本の近くに実際に折ったものを置き、折り紙も置いて折ってもらう。廊下に歴史の本と土器のレプリカを置き、レプリカに「触ってもいいです」と書いておくと興味を示す。私は「おびき寄せる」と言っており、たどっていくと図書館に行く。歴史が好きだからこの場所が好きと、1階の教室に行くのに、埴輪のレプリカが置いてある2階を通る生徒がいます。そこに日本の歴史の本が置いてあって手に取る。生徒指導上で、本の紛失や展示物が壊されたらどうするかと問題視する向きもありますが、本校では校長が、何かあったらそのとき対処すればいいと言ってくれています。

坪田 すばらしい。

司会 高校ではどうですか。

確実に良い本渡すのが責任 埼玉県立大宮中央高校司書教諭 小林  功
確実に良い本渡すのが責任
埼玉県立大宮中央高校司書教諭
小林  功

小林 授業に役立つ図書館にするにはどうしたらよいか。それには、教育課程にきちんと対応できる蔵書を整えることです。義務教育ではない高校には「図書標準」がありません。高校の図書は平均単価が高い。第5次整備計画では高校にも目配りしてもらいたいです。教科書だけでなく、多様な図書資料にふれ、自分たちでその価値を判断できる力を養っていくことが、高校の図書館に求められています。ところが現状は、各教科の教員が授業の中で個々に調べ方の指導をしています。だから、司書教諭が全校的な利用計画をきちんと把握し、図書館を使って系統的に授業をコーディネートしていくことが大切になります。

竹下 教科書を学び覚えるだけでは学びは成立しません。自然や社会や人間を知るために、学校図書館が深く関わってきます。

森田 小・中学校できちんと指導されていないから、高校で指導しなければならない。学校図書館が活性化するには、体系的な指導を小1からしていかなければ。

司会 次期学習指導要領と学校図書館については。

坪田 中教審の中間とりまとめが年内に出ると思います。ただ、あまり期待しすぎないことです。現行の学習指導要領でも自由にできる実践は多いのだから、改訂を待たず、校長のマネジメントでよいものは今すぐにでもやるべきです。そうはいっても、学習指導要領に明示されれば、授業でこう使えばいい、使わなければだめだと思えるでしょう。

今年7月10日の参院選から18歳が投票に行くわけですから、新聞複数紙を読み比べて、多様なものの見方があるのを理解する。そのためにも、新聞の配架は大事です。私のアイデアですが、全校長を学校図書館長にすれば、責任があるから司書教諭や学校司書の話を常に聞くようになり、学校図書館を充実させ、授業で活用するようになるでしょう。

森田 長野県茅野市では校長をそうしています。

さまざまな仕掛け工夫する 横浜市立南瀬谷中学校学校司書 守屋 明美
さまざまな仕掛け工夫する
横浜市立南瀬谷中学校学校司書
守屋 明美

守屋 ただ、校長の理解によっては、学校図書館を使った授業を行う主体が変わってしまう。「うちは活発です。いい学校司書なので全部やってくれます」と、学校司書が資料を全て集め、1時間丸々やってしまう。でも、教員でない人が指導するのはおかしいです。それから、図書館利用の指導は段階を追って行わなければなりません。小学校入学後、何回も少しずつレベルを上げて。でも、中学校に行くと、けっこう忘れています。

司会 使わないと忘れてしまう。

守屋 だからこそ体系的、計画的に、です。特に小学校では、全ての学級担任が指導できる必要があります。図書館に行っても無いから帰宅後にネットで調べたとならないために、図書の充実と図書館活用のスキルを身に付けさせる必要があります。ある中学校では、選挙関連の本が、18歳選挙権の新聞特集と一緒に大きなテーブルに並べられていました。ポイントは司書教諭です。

森田 しかし、司書教諭には学校図書館に関わる時間があまり確保されていない。多くの場合、教科指導や学級に普通に関わりながら、わずかな時間を見つけてやっている。せっかく学校司書が法的に配置できるようになったので、司書教諭と学校司書が両輪で十分に活動できるようにしなければ、法改正の成果が出ないです。

竹下 児童図書出版社は、子どもたちに適切な本、学習に役立つ本をどうして出版したらよいか考え、多様な本を作っています。それらの本が子どもの手に確実に渡る工夫を、司書教諭と学校司書にお願いしたい。それと、担任教師が教室で自分の好きな本を子どもたちに読んであげると、子どもが本に親しむ糸口になります。一生付き合っていく読書のきっかけは、やはり幼小、家庭にありますが、学校では、多様な興味関心を持つ子どもに応え、適切な本を手渡していかなければならない。それが教師の力だと思います。その意味で、特に小学校では、担任の全てが司書教諭のようであってほしい。

小林 学校に新しい課題が持ち込まれると、出版社は敏感に対応します。この頃は教育課題が多く、教員は、ときには追いつかない。そんなとき、写真やデータが豊富で、子どもたちの学習意欲を刺激する多様な本が出版されて学校図書館に入る。これは、教員にとってもうれしいことです。

司会 終わりに一言ずつ。

森田 ある研究会に行ったら、助言者が「社会科は資料が命。教員がよい資料を提供しないと、子どもたちは学校図書館なんかに行ってしまう」と。私たちは、学校図書館は学習を支える基盤だと言いますが、そう思っているのは関係者だけではないかと思うほどです。しかし、学校図書館の専門職である学校司書が配置されれば、学校図書館充実にしっかりと予算をつけるのが当たり前になるでしょう。全国約2万の小中に良い本が入れば、2万冊売れる。そうすると出版社は安心して良い本を出版できます。学校図書館では、ベストセラーではなく、学習に有効な、書店ではあまり扱われない本を扱います。それが学校図書館に行く。教科教育と学校図書館の結びつきを、ぜひともしっかりしたものにしていかなければなりません。

竹下 教科の研究会に、学校図書館に関係している先生たちがどんどん参加していくのが大事です。そこで学校図書館の活用法を発信してください。

守屋 教科を支えたり、子どもたちの心を育てたりする資料や本を見抜く力を、学校司書は付けなければなりません。学校司書は学校図書館の専門家です。学校図書館に行くと授業が豊かになる。そうなってこそ、先生たちは学校図書館を使ってくれます。それから司書教諭のコーディネート力向上です。この単元学習にはこんな本が有効と、先生たちに示していける力が必要です。

小林 学校図書館は確実に整備が進んできていると、プラス面を評価したい。美しく、資料性の高い本がたくさんあり、子どもたちがそれを手にできる。そのためには学校図書館整備に関連する予算を活用し尽くし、子どもたちに良い本をきちんと届ける。それが私たちの責任です。

坪田 開館時間が大事です。夏休み中は開けておく。クーラーを効かせ、家では勉強できない子も受け入れる。貧困対策にもなります。学校ボランティアに手伝ってもらい、中学生以上なら図書委員にも加わってもらい、誰もいない時間をなくして常時開放を実現しなければ。またネット検索時代にあって学校司書は、ネットに負けないくらい多様な本を薦められる力を身に付けてほしいです。その上で、ネットも図書館も両方使って徹底的に調べようと。図書館を使い倒す勢いで、関係スタッフも管理職も自治体も取り組むことが大事です。