(実践レポート)新聞を活用した日本史授業 学校図書館で協議や探究活動【学校図書館特集】

東京都立青山高校(小澤哲郎校長、生徒数893人)の本杉宏志主幹教諭は、長年、新聞を活用した日本史授業に力を入れている。新聞は、歴史と現在を結ぶ学びに最適の教材だと強調する。生徒に新聞記事の多様な論調を比較・検証させながら、自分なりの探究や学習課題の発見につなげている。学校図書館の活用を織り交ぜ、新聞で興味をもった課題を本でさらに深めて学んだり、共有するテーマを仲間同士で調べたりして議論する学習なども進めたいと話す。


 

新聞で生徒なりの学習課題を発見
新聞で生徒なりの学習課題を発見
複数紙比較し課題を見出す

同教諭は、日本史の教師として「故きを温ね新しきを知る」学びの在り方を、日々追究してきた。そんな理想の学びを実現するために、新聞を教材に生かすのはとても有効と感じ、20年間にわたり新聞活用の授業を進めている。

主に、1つの事件を複数の新聞がどう報じているかを調べさせる。授業前の生徒たちは「新聞に触ったこともない」「同じ事件だから、どの新聞も同じ内容が書かれている」などと話すが、授業を実施してみると、各紙の論調の違いや自分なりの気付きを深めており、そんな様子がとても興味深いと話す。

多様な社会事象を一覧にして見せる新聞の媒体としての特性から、生徒は自然に、さまざまな記事に目が向く。知らず知らずのうちに、社会事象への関心の幅を広げられるのも、新聞を活用した学習活動で有効だとする。

これまで、近現代史の学びと関連づけながら、日韓関係や沖縄の基地移設などの新聞記事を活用した学びを進めてきた。安全保障関連法案を題材にした際は、1960年代の日米安全保障条約を巡る学生運動にさかのぼりながら、歴史と現在のつながりを生徒に実感させる学びに取り組んできたと振り返る。「歴史は暗記学習ではなく、現在と密接に結び付いた楽しい学びだと知ってほしい」との強い願いをもっている。

加えて、生徒にさまざまな新聞記事を吟味させる中で、世の中の情報の受け止め方など、情報リテラシー向上も図っている。

この夏には、18歳以上が選挙権を行使する。その日が迫りつつある中で、新聞を活用した学びを通して、有権者として社会を広く見つめ、考えながら、より良い行動ができる市民を育てたい、という思いも強い。

一方、今後は、学校図書館を有効に生かしながら、新聞学習をより深めていきたいとする。例えば、学校図書館にある複数の新聞を使って記事を比較し、吟味した後、それぞれが抱えた課題意識や、さらに追究したい学習テーマを本で調べて確認する探究学習の流れなどを考えている。その際、インターネットからの情報吟味も織り交ぜ、記事内容を複数のメディアを通して確認する作業などを進めていきたいと話す。

同校では、学校司書が強力なバックアップを行っている。具体的には、生徒が追究したい学習テーマに応じて、さまざまなおすすめ本を用意し、必要な本の探し方のアドバイスなどを提供している。そんな支援を生かしながら、新聞やさまざまな書籍を通じた探究学習を深めていきたいと願っている。

また現在の学校図書館には、図書検索などに使うPCが1台しかない。広く情報を吟味する学びを進める環境としては厳しい状況だ。

これからの環境整備を夢見ながら、将来的には、学校図書館があらゆる学びに対応した「総合学習センター」になればと指摘する。例えば、新聞や本を読み合いながら、追究テーマをグループで話し合う「協議室」などを併設する。単に個人個人が読書をする場にとどまらず、調査や協議や探究といった一連の学びを円滑に進める場にするのが理想としている。

長年、新聞学習を継続する中で、生徒が、少しずつ、自分なりの課題やテーマを見いだす状況も生まれている。各自の課題を持ち寄り、昼休みに学校図書館で話し合いを深めていく「ブック&ニュースペーパーチャッティング」という活動が進んでいるのはうれしいと笑顔をこぼす。