魅力ある学校図書館づくり 実践を紹介 part1【学校図書館特集】

魅力的な学校図書館づくりで、各学校の図書館に携わる先生方に実践を寄稿していただいた。テーマは教科との連携、司書教諭と学校司書の連携、学校図書館とICT、家庭・地域との連携、新聞の活用――など盛りだくさんです。

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開放的なホール設計に
図書館同好会が活躍 コミュニケーション力を向上

北海道小樽高等支援学校


一直線に長いギャラリー棟の一角にある開放的な図書館
一直線に長いギャラリー棟の一角にある開放的な図書館

○学校図書館の始動

平成21年に開校した本校は、知的障がいをもつ約180人の生徒が、職業教育をとおし、社会的自立に向けた力を高めていけるようにと、作業学習を教育課程の中心に据える単置型の特別支援学校高等部である。開校3年目、現在地に新校舎が完成し、生徒玄関から一直線に長いギャラリー棟の一角に、これまでのように独立した教室でない、開放的なホールとして図書館が設置された。

仮校舎で購入したわずかな本を分類して配架し、利用規程やオリエンテーションを行った。6月に開館すると毎日たくさんの生徒が閲覧に来た。新刊購入計画に、年度予算が追いつかず、不足分は新聞社の寄贈図書や、出版社の懸賞の当選図書、蔵書選定基準を設けて職員からの寄贈を募って補った。そうして丸5年を迎えた平成27年度に、蔵書はようやく1千冊に達した。

○生徒の活動から

開館と同時に生徒の委員会活動が始まり、生徒が貸し出し当番を担当し、朝読書や新刊の紹介、ポスター作成などの活動をとおして利用拡大を図った。職員協力のもと始動させた図書館が、生徒の力で稼働し始めた。

26年度は、図書館同好会が結成された。決して読書愛好家集団ではないが、図書館の居心地が好きだという7人が集まり、季節ごとに館内装飾をした。春には校庭で摘んだ花を大型本を利用して押し花にし、しおりを作って読書週間にプレゼントした。冬には窓ガラス越しに見えるよう雪だるまを作った。小説や4コマ漫画を書き、おすすめ本紹介コーナーを掲載した会報誌を発行した。見よう見まねで始めた百人一首でイベントをしたいと参加者を募り、「みんなで日本の古典に触れよう!」と全校百人一首大会を開催した。

図書館の心地よさを、もっとたくさんの人に知ってもらおうと、読書だけにこだわらず、本に関わるイベントを自分たちで企画し、図書館の心地良さを広げようとした。

今年度2回目の全校百人一首大会は、人とコミュニケーションをとるのが難しい生徒や、障がいの特性からか勝ちにこだわる生徒も、教員を交えたチーム編成にすることで、昨年度を上回る参加チーム数で大盛況に終わった。また、ブックシェアリング活動に参加したいと、自分たちで作成したチラシを学校周辺の住宅街に配布し、古本回収の協力を要請。集まったもののほこりを払い、分類分けして、本のリユース活動を展開する一般社団法人「北海道ブックシェアリング」に依頼し、東北被災地に寄贈する活動に参加した。地域の力を借りて1千冊以上集まった本の数と、陸前高田の仮設図書館へ寄贈することで、「一人ひとりの力は小さくても、皆が協力して活動することで、自分たちも何か人の役に立てる」と、奉仕活動を通して生徒それぞれに意識が芽生え、自己有用感につながった。

○今後の学校図書館

昨年度入学した読書家の1年生が、「中学では普通学級の生徒がいると入室もままならず、図書館を利用したくてもできなかった」と不自由さを告白し、「ここの学校に入学して、いつでも図書館が利用できるようになった」と、満面の笑みで語ってくれた。

発達障がいや学習障がい、自閉症を併せもつ生徒も多い本校には、読書家も多い。ニーチェや村上春樹を読む生徒から、絵本や詩集を朗読する生徒まで、利用図書の幅は広い。週2回の昼休みと放課後わずか15分間ずつでも、昨年度は1500冊以上の貸し出があった。しかし読書にこだわらず、図書館は人とコミュニケーションをとる場として、一人でそっと心落ち着かせられる場として、それぞれの生徒の心潤す大切な空間になっている。

ここ数年、道内には特別支援学校高等部が毎年新設されている。しかし図書館研修会には支援学級担当者はいても、支援学校の図書館担当者の参加はまだ皆無に等しい。十数年この仕事に携わってきて、生徒の心の育成を目指す特別支援学校にこそ図書館は不可欠なものと考える。学習活用や余暇活動の充実のための読書もさることながら、言語活動の充実やコミュニケーション力の向上に、そして生徒の心潤す居場所として重要である。今後もより多くの担当者と研修の場で切磋琢磨しながら、道内のどの学校にも充実した図書館が作られていくよう、生徒の活動の支援に一層尽力していきたいと考える。

(文責・小野薫図書館司書)
同校=〒047―0261北海道小樽市銭函1―10―1/℡0134(61)3400。

司書教諭・ボランティア・地域 3つの輪
子どもの心を動かす 読書を教育課程に位置づけ

青森県十和田市立三本木小学校


学校図書館ボランティアと図書委員会の児童が企画する「しおり作り」
学校図書館ボランティアと図書委員会の児童が企画する「しおり作り」

■学校図書館と読書教育

教育課程にしっかりと位置づけられている読書教育が理想である。しかし、学校図書館が読書教育の活性化の場所になっているかと問えば、まだ見直さなければならない点が多々ある学校が多く存在するのが現状である。

本校では、3つの大きな輪を作り、それが互いにリンクし合うような読書活動を行うことによって、読書教育が活性化するよう工夫している。その3つの輪を紹介する。

(1)司書教諭の役目

(1)読書意欲は環境から
児童が足を運び、本を手に取っている姿が毎日見られる学校図書館であるためには、「行ってみたくなる図書館」でなくてはならない。本校では、教師全員に子どもたちに読んでほしい本を選んでもらい、ブックスタンドに立てて紹介している。また、空き箱やフェルト布で作った袋に、何気なく本を入れてプレゼント風にして一冊の本を紹介している。

(2)教師による読み聞かせ
全教師が各教室に出向き、絵本、紙芝居、パネルシアターなどでお話を紹介する。本校は、10分間の朝読書が定着しているが、年に2回、「自分で読む」のではなく「耳を傾け想像する時間」を教師と共有し合っている。

(3)こまめに出す読書ランキングと読書だより

1カ月に一度も図書館に足を運ばなかったという児童がいたら、それは、司書教諭や学級担任の責任である。自分がどれくらい読んでいるのか、友達は、クラスでは、全校では、というように比べる対象と数値を提示することで、自分の読書量がわかるように定期的に担任にランキング一覧を渡している。それを見て担任が読書量の少ない児童に声がけをするので、図書館に足を運ぶ児童が増えてきている。

(2)学校図書館ボランティアとの連携

本校では、図書館ボランティアが週に2回放課後貸し出し業務を行っている。昼休みに委員会活動や体力つくりを優先させなければならない児童のために、放課後に学校図書館を開放し、貸し出しや返却業務を行う。この活動のお陰で、学校図書館を利用する高学年が増えてきている。

本校の図書館ボランティア活動が活性化されているのは、担当日の調整や学習会の案内などを、校務分掌の中に位置づけているからである。事務的な業務を図書館ボランティアが担当し、読書教育に関わる図書館ボランティアとの関わりを司書教諭が行うというスタンスが、淀みなく長く活動できるもととなっている。

図書館ボランティアと図書委員会の児童が企画する「しおり作り」は、1年生の時に作ったしおりを6年生になっても大事に持っている児童がたくさんいるなど、全学年に好評である。また、3学期末には、1年間で読んだ本の中で「オススメの本を一冊!」と題し、全学年に紹介カードに書いてもらい、児童たちが多く通る場所に掲示している。これは、次年度の4月の参観日まで掲示しているので、前年度の読書の傾向を保護者も知ることができる。これも図書館ボランティアが中心となって行っている。

(3)地域に根ざした読書教育

十和田市民図書館で第3土曜日に行われている「親子読書会“わっこの会”」への参加を呼びかけている。主に低、中学年の参加になるが、親子で市民図書館に足を運ぶことで、読書会が終わった後は市民図書館の本を借りてくるという動きが定着している。公共図書館を活用する児童が増えたことで、選書の幅も広がってきている。

また、十和田市教育委員会主催の読書感想文コンクールには、市内の全小・中学校が参加するので、夏休みになると各学年に適した本を展示したり、読書感想文の学習会を開いたりして、学校と地域が一体となった読書教育を実践している。

(文責・木村明美司書教諭)
同校=〒034―0031青森県十和田市東三番町36―1/℡0176(23)7178。

プレハブの館は「夢の国」
学びのステーション デジタルコンテンツも提供

埼玉県川越市立南古谷小学校


本探しイベントでにぎわう図書館
本探しイベントでにぎわう図書館

本校(細谷敏人校長・児童数975人)は、学級数31と地域有数の大規模校である。児童は明るく読書好きで、川越市で行っている「読書マラソン」という読書の記録に全校を上げて取り組んでいる。学校図書館は、別棟のプレハブであり、「夢の国」という名前で児童に親しまれ、校舎の増築工事に伴う仮住まいだが、学習活動・読書活動の中心となって活用されている。平成29年度には、新校舎に学校図書館が完成する予定である。

〈学びを支える情報ステーションとして〉

学習活動を支える学校図書館として、児童の学ぶ力を育成するために司書教諭が中心となって調べ学習のための資料提供を行ったり、担任とのTTで図書の分類についての授業や百科事典の使い方の授業を行ったりしている。

また「夢の国」には図書資料だけでなくパンフレット類を分類したファイリングケースを備え、地域資料やパンフレット類の資料も充実している。

近年授業で使われる資料は、紙の媒体だけでなくインターネットを使用した調べ学習や映像、画像資料と多岐にわたっている。その流れに対応するためにも、学校図書館が中心となってデジタルコンテンツの情報提供を行うようにしている。

昨年度は、6年生の体育の授業でiPadを使用してマット運動の授業実践を行った。グループで1台のiPadを使用し、「水島宏一の器械体操アプリ」を授業に活用した。マット運動のお手本や練習の動画を参考に見ることで自分の目当てにあった練習ができたり、お互いの演技を動画で撮影してアドバイスをしあうことで、技のできていない部分を具体的に指摘できて、教え合いが活発になったりする成果が得られ、デジタルコンテンツの有用性が実感された。

〈児童と作り上げる読書活動〉

読書活動の面でも、多様な本に触れてもらおうとさまざまな工夫をしている。学校としては、推奨する本「夢の国20選」を学年ごとに選定してブックリストを作成している。児童数が多いので、学級でも気軽に本に親しんでもらうことを目的に学級文庫を充実させ、学校図書館から遠い場所に教室が配置されている1年生5クラスには全国学校図書館協議会で選定している「よい絵本」の学級貸し出しを行った。

児童の活動としては、読書月間に読書新聞を全校で作成、掲示して友達同士で本を薦めあう活動を行っている。また、図書委員会の児童が「いろいろな本を読んでもらおう」という目当てをたてて、積極的に活動をしていることも本校の特徴であり、読書集会での本の紹介劇やクイズなど読書の幅を広げる取り組みをしている。また、本探しイベントを開いていろいろな分類の棚をみてもらう機会を設けたり、低中高学年別にお薦めの本を中身が分からないようにパッケージングして貸し出す「本の福袋」を行ったりと工夫した活動をしている。

〈地域に支えられ地域に開かれた学校図書館〉

南古谷小学校の読書活動は、保護者ボランティアにも支えられている。

「おはなしの森」という保護者を中心としたボランティアグループが毎週月曜日の朝に行われている読書タイムに読み聞かせにきてくれるほか、全校集会では、大型絵本の読み聞かせをしてくれている。昨年度は「めっきらもっきら どおんどん」という絵本を音楽や効果音を入れて熱演し、児童たちを感動させた。また1年生の国語の授業に関連して、「たぬきの糸車」という教材を大型絵本にし、児童に読み聞かせをしてくれている。蔵書点検や図書の受け入れなどの環境整備の手助けもしてくれる本校自慢のグループである。

南古谷地区は公共の図書館から遠いので、長期休業中の読書の助けとなるように夏休み中に学校図書館を解放している。対象は在校児童だが、保護者が一緒に来て本を手に取る姿が見られたりボランティアグループの読み聞かせに校区の中学生が参加したりと地域と共にある学校図書館である。

また、本校は道徳の学校研究をしており、家庭での読書で心を豊かにし親子のふれあいを深めようと昨年度から「南古谷小学校読書リレー」をスタートした。これは、命の大切さや友達、家族について考えさせられる本を選んで「はあと文庫」として貸し出し親子読書を行うもので、川越市の「読書マラソン」が個人の読書記録なのに対して学級内で同じ本を回して読むことから「読書リレー」と名付けた。まだ始まったばかりだが、読書を通して親子の時間ができた、よい本とふれあえたなどの感想をいただいた。

今後も「夢の国」を学校教育の中心として活用してもらえるよう、情報ステーション、学習ステーション、読書ステーションとしての機能を充実させ、情報を発信していきたい。

(文責・中島晶子司書教諭)
同校=〒350―0016埼玉県川越市木野目1451/℡049(235)2150。

授業で大いににぎわう
学習ニーズに基づき収集 教材研究にも有用な資料類

中央大学附属中学校・高等学校


図書館本館の中央閲覧席
図書館本館の中央閲覧席

本校は、東京都小金井市にある中央大学の附属校である。中学生は全員が附属高校に、高校生の9割が中央大学に内部推薦で進学することから、大学での研究活動に必要なアカデミックリテラシーを養うために、教科学習をはじめ、学校行事などの教育課程全般で課題解決型学習や探究活動が重視されてきた。また、図書館は独立棟3層構造の図書館本館(266席)と校舎内にある図書館分館(55席)から構成され、所蔵資料は17万冊を超える。

本館は3クラス、分館では1クラスの授業を同時に行うことが可能であり、年間800時限程度の利用実績がある。館内で授業を行わない教科目についても、図書館資料を前提とした課題が多く設定され、教職員の教材研究を含めて、図書館は「調査・研究」におけるリサーチセンターとして、本校の教育活動を支える基盤となっている。本稿では「授業でにぎわう図書館づくり」について紹介をしたい。

〈教育課程のニーズに基づく資料収集〉

読書指導は、国語の授業の中に組み込まれた「課題図書」システムで展開され、中学校3年間で60冊、高校3年間で100冊を購入・通読する。図書館は、学校行事や各教科における学習、学びの集大成として高校3年生で取り組む1万字以上の卒業論文作成、教職員の教材研究などに必要とされる資料の収集を最大の責務としている。

特にアナログ資料では、新刊書の迅速な提供を求められることから、毎週届く新刊書の案内誌で司書教諭が書誌情報や著者経歴等を確認。日頃の利用状況や蔵書構成、ニーズなどを総合して、参考文献に値する資料を選定し発注する。翌週には納品され、最短では発注から10日前後で利用が可能となる。その後、図書館の係教諭を始め、教職員から推薦された資料などを発注している。

また、デジタル資料としては、インターネットで提供される8種類の教育用オンラインデータベースを積極的に導入。出版された辞書・事典類や新聞記事が収録されたデータベースは有料であるが、情報更新も随時行われて、信憑性の高い信頼できる情報となる。

さらに、検索機能の利便性や1クラス単位での同時一斉利用が可能など、生徒・教職員共に利用が浸透。学習や教材研究に必要不可欠な図書館資料となっている。

〈所蔵資料検索システムと図書館ホームページの有効活用〉

図書館資料が充実しても、求める資料に辿り着けなければ、図書館としての機能は不十分である。本校では、教員室や各教科の研究室に配置される図書資料も館内に配置される資料と同様に全て登録され、生徒・教職員の共有資料として活用される。しかし、本館内だけでも3フロア。分館や中学・高校約30の研究室等に分散している資料を目視や日本十進分類法による探索だけでは探しきれない。また、授業時間は図書館事務スタッフが館内に複数人常駐しているが、定められた時間の中で「調べたい事柄が記載さている」資料を一斉に探し出すことから、クラス単位でのレファレンスにも限界がある。そこで、図書資料探しの「エントランス」としてOPAC(所蔵資料検索システム)と図書館ホームページの活用に着目した。

OPACについては、利用者がキーワード検索から資料に辿り着けるよう、事務スタッフが検索用書誌データを丁寧に整備。その際、資料の内容を十分理解・把握することが必要となるため、高度なレファレンスも可能となる。

さらにOPACへのリンクボタンを配した「図書館ホームページ」を作成。前述のオンラインデータベースや、公共機関等が提供する情報収集のためのコンテンツも配置して、図書館が提供する情報サービスをポータルサイトとして一元化。館内のみならず校内の生徒・教職員用パソコンからアクセスが可能であり、閉館後や休館日も図書館は情報提供サービスを発信し続けている。

〈授業利用を前提とした館内の整備〉

館内で多くの授業が行われる背景には、教職員にとって利用しやすい環境がある。本館の本棚で分けられた3つの閲覧ゾーンは机の配置も異なり、授業内容により「場」の選択も可能。吹き抜け壁を利用した250インチの「壁スクリーン」は、さまざまな資料提示に活躍。

館内にはOPAC専用パソコンを始め、前述の「図書館ホームページ」や文書作成・表計算・プレゼンテーションソフトが利用できる130台のパソコンと25台のプリンタ、プロジェクター3台が常設される。これら教育用IT機器は授業のほか、昼休みや放課後の時間帯にも活用されており、利用者の多様なニーズに対応している。

空調や照度の調節も含めて、授業が円滑に進むように学習環境を整えることも「授業でにぎわう図書館づくり」に欠かせない要因と考える。

今年8月末に開催される国際学校図書館協会(IASL)東京大会では、本校が視察館の1つに選ばれた。今後も教育課程の展開に寄与する学校図書館として、さらなる進化を目指したい。

(文責・平野誠司書教諭/図書館運営委員長)
同校=〒184―8575東京都小金井市貫井北町3―22―1/℡042(384)9736。