座談会「安全安心な学校給食を実現」 part1

「衛生管理など様々なリスクを想定した学校給食実現のための課題」をテーマに学校給食関係者が集まり、座談会を行った。

出席者

文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課学校給食調査官
齊藤 るみ

特定非営利活動法人栄養衛生相談室理事長(東京医科大学兼任教授)
中村 明子

長野県軽井沢町立軽井沢中学校栄養教諭・管理栄養士
栁沢 幸子

日本食品洗浄剤衛生協会花王プロフェッショナル・サービス(株)商品企画開発部部長
岩間 俊浩

(一社)日本厨房工業会(株)AIHO営業本部営業推進部部長
熊谷 文伸

司会・池田 康文 教育新聞社編集委員

司会 食中毒の現状は。

「なぜ」を理解した衛生管理を 齊藤氏
「なぜ」を理解した衛生管理を
齊藤氏

齊藤 さきごろ福井県でノロウイルスを原因とする学校給食における食中毒が発生しました。昨年度はヒスタミンによる食中毒が2件、一昨年度はノロウイルスによる食中毒が2件でした。昨年度と一昨年度は、学校給食調理場ではなく民設民営の委託業者で調理したものや納入業者が納めた食品によるものが原因でした。衛生管理された業者の選定や業者の衛生管理の啓発に努めなければなりません。学校給食施設についても、なぜこの作業や動線が必要かを理解し、要点を押さえていかなければいけません。

司会 調理現場にはどんな課題が。

中村 全国的に食中毒は減少傾向にありましたが、平成27年は増加傾向に転じました。特にノロウイルスを原因とする食中毒が増加しました。このほか、減ったはずのサルモネラ属菌やO157などもありました。そういった細菌による食中毒も増えていて、やはり、衛生上の危機管理が非常に大事となります。私たちの周りから微生物はなくなりません。食中毒として表に出てこないのは、そこに従事している人たちが努力して抑えこんでいるからです。学校給食に携わる従業員が、そういうたゆまぬ努力を先輩から申し送りされてない職場も、現実にはあるのです。学校給食には、自校方式や業務委託などの方式があります。特に調理員の外部委託では、そこの職員研修会での話を聞くと、人の入れ替わりが意外に多いようです。そのような職場では、きちんと勉強をしている調理員が少なく、食中毒の危険性をいつもはらんでいます。文科省で「調理場における洗浄・消毒マニュアル」を出して指導をしていますが、現場のどこまで浸透しているのかと、私は危惧しています。

齊藤 そうですね。委託する場合は、衛生管理に関するノウハウがあり、研修体制も整っている業者を選定していく必要があります。契約にあたっては、学校給食衛生管理基準を順守していただく必要もあります。

栁沢 長野県軽井沢町では2年ほど前から、委託業者が入りました。そこの研修は充実していて、管理職が月に1度は、衛生管理についてチェックしてくれていますし、こちらの要請にもすぐに応えてくれます。なかにはきちんとした研修体制が整ってない委託業者もあるようです。特に学校給食に初めて参入した業者には、そういう傾向があります。

職員研修で食中毒防止 中村氏
職員研修で食中毒防止
中村氏

中村 私も今年、学校給食の調理に携わる人たちの研修会に講師として参加しましたが、参加者の半数が新人でした。委託の場合、栄養職員は教委の職員です。調理業務は民間委託で、その職員の入れ替わりが激しいのです。そういう従業員も含めて、衛生管理に関する教育をしていかなければいけません。学校給食には、学校給食衛生管理基準があります。この基準をしっかり勉強して、それに沿って調理をすれば、問題はほぼ発生しないはずです。この基準については、学校給食に携わるすべての皆さんが知らなければならいないことです。

司会 食器の洗浄などは。

岩間 調理員の募集についてはいろいろと苦労されている部分があると伺っています。われわれが協力できるのは、洗剤を使う部分。学校給食では多い場合、食器の数が数千枚にもなり洗浄には時間がかかります。こうした重労働感が、人が集まり難い職場になっている部分も間違いなくあると思います。ですから、われわれとすれば、洗浄機械メーカーと一緒になって、働く人にも優しく、そして、安全・安心に給食が作ら、また食べられるように食器等を洗浄するのが、洗剤の役割だと考えます。洗剤メーカーとしてお役に立てるように、給食現場を見させていただいています。

齊藤 栄養教諭、学校栄養職員は、衛生管理についてしっかりと理解することが必要です。新しい調理員が入ってきたときに、なぜその作業を行い、守らなければならないのかの根拠を含めて、しっかりと伝えていかなければなりません。

熊谷 学校給食センターや給食室などの建て替えは進んできています。ただ、古い設備で一番気になるのは、空調と床です。今でこそ25℃以下、湿度80%以下という基準を守るような設備となっていますが、古いものはそれができない。換気設備が不十分で、これからの季節は当たり前に結露します。結構新しい設備でも、結露がある場合があります。学校給食施設は特異な施設なので、経験がない設備設計の人が担当すると、そうした現象が現れます。

学校には夏休みがありますので、工事をするには短い時間ではありますが、改修する時間はあります。古い新しいは関係なく、基準が守られるように、必要な改修をしてほしいと思っています。

岩間 調理の過程で食材を切り替えるとき、極端な話、食洗用の洗剤で手を洗うなどが昔はありました。それが今、設備やマニュアルがしっかりしている。特に学校給食に従事している業者は従業員に対して、手洗いについて、基本的にはしっかりと教育しています。ただ、給食ではあまり見かけなかったのですが、トイレに入るときに、手洗いと扉が連動しているような設備がありました。そうすると、当然、その当時の状況に合わせた洗剤となっています。せっかく効果のある新しい洗剤が発売されても、その設備ゆえに切り替えられない問題も、一時期ありました。あと、手指に使えるアルコール消毒剤は薬事品に限定されていますが、手指用ではなく設備用のアルコール製剤を使わせているケースも見られます。実際に効果はあるのかもしれませんが、働いている人に対する安全性の部分では、決して勧められません。設備もそうですが、働いている人を考えた洗剤でありたいです。そして、使い方に合わせた設備についても考えていかないといけません。食器を下膳する際、残滓を極力少なくしているというお話がありました。それは当然、洗剤を効率的・効果的に使うことができるとともに食器を洗浄する人の負担軽減になります。そうすることによって、働く人の時間や使われる水の量も低減できます。

座談会「安全安心な学校給食を実現」 part2に続く