「食育広場」で見せる給食 埼玉県和光市立下新倉小学校の単独校方式

回転釜など低輻射機器を導入

埼玉県和光市立下新倉小学校(橋爪永校長、児童数401人)は、今年4月に開校した新設校。給食室は、ガス回転釜やガスフライヤーなどの低輻射機器を設置。室内の高温化ややけどなどを防止し、調理員が安全で快適に調理に専念できる環境を整えている。市内の給食室としては、初となる食物アレルギー対応の「特別調理室」も備えており、全校の献立と調理プロセスを踏まえ、除去食や個別調理への対応をするなどの多様な状況に応えられる体制も築いている。

■地産地消と食育を重視した給食
同市は、市内全小学校の給食を単独校方式で実施しており、児童にできたてのおいしい給食を提供している。食育にも力を入れ、給食には、地元で採れたほうれん草や小松菜、大根など旬の野菜を使っている。
今春開校した同校の給食室は「調理員が安全、快適に作業できるための環境」「多様な食物アレルギーに対応した調理体制」「調理作業を児童が実際に見て、食の重要性や理解を深める」との視点を重視。その視点で、厨房機器の選定や室内レイアウト、作業の安全性、効率化などについて工夫している。

■安全、快適な調理環境を追究
安全で快適な調理環境の実現では、低輻射タイプの回転釜とフライヤー、立体炊飯器を設置。回転釜4基は、燃焼排気ガスをダクトに集中して排出することで、釜自体が発する輻射熱を大幅に減少させることができ、空調コストの低減を目指している。
大量調理で熱がこもりやすい調理室は、適切な空調設備がなければ、夏場は室温40度以上、湿度80%を超え、熱中症にかかるリスクが高くなりやすい現場もある。より適切な作業環境に改善するための対策に力を入れている。
管理栄養士で施設設計に携わった同市教委学校教育課の阿部真希主査は「おいしく安全な給食を実現するには、調理員が安全で快適に調理に専念できる状況が大切」と強調。そのため、回転釜などの機器を低輻射タイプにしている。「通常の回転釜では、誤って釜の縁などに手が触れると跡が残るやけどをしたが、低輻射釜は、触れてもやけどをしにくく、安全面においても大いに役立っている」と話す。

■市内学校初となるアレルギー対応の調理室
同市内の学校給食室では初となる、多様な食物アレルギーに対応した「特別調理室」の設置と運用も、大きな特徴だ。
乳製品や卵、種実類、果物などにアレルギー反応のある児童が複数いるため、それぞれの情報を全調理員で共有。献立にアレルギーの原因となる食材が入っていないかを確認し、混入しない調理過程を見直しながら、適切な調理を特別室で行う。作業マニュアルは、誰でも理解できる内容でつづり、調理員が持ち回りで調理を担当しながら、対応力を磨けるようにしている。
室内には、単独でテーブルコンロなどが設置してあるので、個々のニーズに応えながら、誤りのない調理が実現できる。

給食室をガラス張りにして、調理員の食への努力をみることができる「食育広場」
給食室をガラス張りにして、調理員の食への努力をみることができる「食育広場」

■調理作業が見られる食育広場の設置
このような優れた機能を備えた給食室の機能と調理員の食への努力を児童に学んでもらおうと、「食育広場」と題したスペースを給食室前に設置。調理室前をガラス張りにして、調理作業の経過をいつでも見られるようにした。
児童は休み時間になると、ガラス越しに調理の様子を見たり、調理員さんに手を振ったりして、給食の時間を楽しみに待っている。そして、毎日食べている給食が多くの人の努力で作られている点などを実感している。
県内複数の給食室で経験を積んできた、調理員のチーフを務める村井由香さんは、「児童に見守られる中で、よりよい調理への思い入れや情熱が一層高まるし、給食をもっと身近に感じてもらえるのでうれしい」と、この広場の良さを語る。

また、広場前には、同校の前田幸子栄養教諭が、定期的に給食や食にまつわる掲示物を貼り出し、児童が常に食の大切さを学ぶことができる。「給食だより」には、同室内の仕組みと各部屋の機能解説を載せ、児童に新たな給食室の興味を深めてもらう工夫をしている。
同栄養教諭は、今後、厨房機器をさらに生かし、「児童たちに喜んでもらえそうな料理や手作りデザートなどの新メニューも実現したい」と述べる。「児童が好き嫌いを克服するために、苦手意識のある魚をおいしく食べてもらう献立なども検討できたら」という抱負も語る。