食物アレルギー対策 NPO法人アレルギーを考える母の会・園部まり子代表に聞く

学校全体で情報共有を
子どもの命守るために

文科省の調査によると、食物アレルギーのある小・中・高校生は、平成16年度と25年度を比較すると1.7倍に増加している。こうした中で、20年度には子ども本人と家族以外には打てなかったエピペンを、教職員も打てるようになった。だが食物アレルギーによる給食事故は絶えない。専門医を講師に食物アレルギーなどの病態理解、エピペンの使い方を含む緊急時の対応など、教職員向けの研修開催やアレルギー疾患のある子どもの保護者支援などを行っているNPO法人アレルギーを考える母の会の園部まり子代表に、アレルギー対応の現状などを聞いた。

――24年12月に東京都調布市で乳アレルギーのある小学校5年生女児が学校給食で誤食し、アナフィラキシーショックで亡くなった。その後の対策は。

この事故を教訓に文科省は27年3月に「学校給食における食物アレルギー対応指針」を策定した。作成には私も委員として加わった。この指針では、学校でのあるべき食物アレルギー対応から給食提供までが記されている。これを参考に、各学校で取り組みが進められている。

――課題は。

調布市の事故を例にみると、自治体や学校での情報共有がされていなかったことが悔やまれる。この事故が起きる前にも十数件の食物アレルギーの事故が起きていたが、調布市教委は事前に把握していなかった。ヒヤリハットの事例を共有していたら、防げたかもしれない。また担任は、食物アレルギーに関する十分な研修を受けていなかった。

市教委は各学校に食物アレルギー対応を任せきりにしていた。行政が中心となって対応策を進めなければならないのに、市はそれを怠っていた。
この事故後、全国の教委でアレルギー対策が広がってきたが、まだ十分とはいえない。地域によっては、対応に差があるのが現状だ。

――積極的に対応している自治体は。

大阪府狭山市では、学校と教育委員会が一体となって取り組んでいる。市内のある小学校では、職員室にその日の給食で対応する食物アレルギーのある子どもの名前と、それぞれのアレルギーの種類が黒板に明示されている。朝の朝礼で、その日の対応について、教職員全員で必ず確認しているという。

アレルギー対応の給食は、職員室で受け取ることになっているほか、どの教員が提供したのかを書類に残すようにしている。またもしもの事態に備え、緊急連絡先や食物アレルギーの種類などが記載されている写真付きの個人カードと、その子に対応したエピペンが職員室内に用意してある。その地域を所管している消防署も子どもたちのアレルギー情報を共有しており、万一の事態にすぐに対応できる体制を整えている。

――もしも子どもがアナフィラキシーショックとなった場合は。

まずは緊急性の判断と対応が必要だ。ぐったりしたり、ゼーゼーする呼吸をしたりしていたら、ためらわずエピペンを打つ。これを5分以内に判断する。そして救急車を要請する。待っている間は、絶対に動かしてはいけない。動かした拍子で心肺停止に陥る可能性があるからだ。
1本目を打っても症状が改善しない場合には、2本目を打つ。呼吸がないときには心肺蘇生を行うよう、専門医は指導している。
そうした緊急時の対応については、東京都が作成した「食物アレルギー緊急時対応マニュアル」が現場で大変に役に立つ。神奈川県など多くの自治体が東京都の許諾を得て、そのまま印刷して活用している。全国の自治体で、東京都の対応マニュアルを、ぜひ活用していただきたい。

――教育現場に求めることは。

多くの教育委員会では、教職員だけを対象にエピペンの打ち方などを研修している。本来は救急隊を含めて教職員や幼稚園教諭、保育士、放課後保育の職員など子どもに関わる人すべてが研修を受けてもらいたい。特に校長などの管理職も。

私たち、アレルギーを考える母の会では、神奈川県から委託を受けて、同様の研修を実施している。専門医などが担当する研修が全国に広がれば、多くのアレルギー症状のある子どもたちが救われる。
アレルギーのある子どもも、みんなと一緒に楽しく給食を食べたい。その思いを教育委員会や学校、そして教員に理解してもらいたい。