(鼎談)学ぶ充実感のある算数・数学教育 part1【算数・数学教育特集】

「学ぶ充実感のある算数・数学教育」をテーマに、東京学芸大学附属小金井中学校で、日本数学教育学会会長の藤井斉亮同学教授、同校の柴田翔教諭、同附属小学校の加固希支男教諭が鼎談した――。


 

日本数学教育学会会長 藤井斉亮
日本数学教育学会会長
藤井斉亮

藤井 「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の観点で、まず、知識の充実についてはどうですか。

加固 必要性がある知識を得ると、充実感がわきます。図形の問題を解くとき「垂直にしたい」「平行にしたい」、そのための知識を教えれば、子どもは充実感を得られます。

柴田 知識がないから問題が解けない。そこに学ぶ必要性がでてきます。中学生になると、現実事象を離れて数学の中で数学化していく場合も必要です。

加固 ある小学校で小数の分配法則の授業を見ました。整数で使えるので小数でも使ってもいいと。それが便利だと思っている子は活用している。どうでもいいと思っている子は、筆算して一個一個解いている。知識に対する良さが実感できていない子は、こうした知識を使わなくなるだけでなく、それを知ったときの充実感もない。要するに前の授業で身に付けた知識を今のこの問題で活用できるかが大切でしょう。

藤井 技能の方は。

加固 小学校低学年では技能に差が出ます。高学年になると、技能を使えるだけでなく、どのように活用したかによって充実感が得られるのではないでしょうか。

藤井 技能にはHOWとWHYがあります。HOWでは、手続きを理解して正答すると結構満足感が得られる。分数同士のわり算で、わる分数をひっくり返してかけるで丸をもらえれば、それなりにうれしい。そこにHOWの充実感があります。一方、なぜそうなるのか、WHYまで含めて追究する理解が必要だと思います。スケンプのいう道具的理解と関係的理解。WHYを問うてそこから得られる充実感は深くて大きいけれど、時間がかかるし大変。手っ取り早いHOWだけで満足感を得る。少々苦しいけれど、なぜそうなるかまでいったんいくと、今度はそこまでいかないと満足しなくなる。

柴田 そうですね。

加固 小学校では顕著です。3年生くらいまでは、基準量とか関係とかの見方は入ってこないので、HOWだけでいけます。ただ充実感は、解ける理由を理解して技能を使っているのか、ただスキルとして使っているのかで違ってきます。

藤井 2年生で九九をやるのは、覚えるのが楽しい発達段階でもあるからです。HOWだけですーっと入っていける。

加固 ただ、WHYを小学校低学年で求めると、算数が嫌いになる可能性がある。なんで「3×2」になるのと問われても、2年生だと言葉でうまく表現できない。だから、低学年の充実感は少々難しいです。

藤井 でも、どこかでWHYを分かる喜びを知ると、変わってくる。

柴田 いま2次方程式をやっています。解の公式に代入すれば答えは出ます。でも、なんでこんな式になっているのかと考えてみたら面白い。本当は平方完成や2次関数をやりながらだと、すごく面白い。一方で、教員がなぜ、なぜと聞き、あるところで先生が納得して聞かなくなったから、生徒は、これでいいのかとそこで止まってしまう。そういう授業になってはいないか気をつけなければいけないと思います。

藤井 本当は、なぜを生徒自身が問えれば一番よいのだけども。

柴田 そうですね。「分かった。だからか」となれば、充実感がわきます。でも結局、先生が尋ね、説明できればいいのか。この説明のための知識が変な形に定着してしまう。

加固 柴田先生が問わなかったら、生徒たちはその視点に気づかなかったわけです。

柴田 でも、友達が納得するまでとかにしたいわけですよ。だから、きっかけとしては、どこかで問う必要はあるし、誰かが解いて得る知識が必要です。問う態度。そういう数学観を育てなければと思います。

藤井 本当は、問い方を教えているのだから。

柴田 そうですね。

加固 1学期とか2学期の前半までは、多少授業が沈んででも「なんで」と聞いてあげると、3学期にぐっと伸びる。待っていると、やがて「なんで」と児童から聞いてきます。

柴田 学年、学校種が上がると、数学的に高度になってきて、説明の仕方が難しくなる。また解の公式の例ですが、一般化するのはすごく難しい。でも、「先生、じゃあ3次方程式の一般解はどうなるの」と聞いた生徒がいます。「作ってみれば」と言ったら、次の日に、「先生、調べてみたんですけど、ノートに書けませんでした」と。実際に書こうとすると、本当にノートいっぱいに長くなる。そういう生徒も育ちます。

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