21世紀型学力に向けICTを活用 つくば市の情報教育を聞く【情報教育特集】

未来を見据えて展望を熱く語る柿沼教育長(右)と毛利所長
未来を見据えて展望を熱く語る柿沼教育長(右)と毛利所長

未来を創る子供たちのためにICTを生かした「明日の教育」との出会いや学びを充実——。茨城県つくば市は、早くから教育の情報化やICT環境整備を積極的に推進。21世紀型学力の育成に向け、▽協働力▽言語力▽思考、判断力▽知識・理解力——の4能力育成に着目した学びを追究する。同市教委の柿沼宜夫教育長と総合教育研究所の毛利靖所長は、そのためのツールとしてICTは欠かせないと強調。マルチデバイス対応のeラーニングシステムの運用などに力を尽くす。同市の情報教育のねらいと取り組み、今後の方向などを聞いた。

■アクティブ・ラーニング実現のツールとして

現在、同市の全市立小・中学校では、小中9年間を通した系統性のある独自カリキュラムを設け、運用している。施設一体型の一貫校を含み、市立小・中学校は全部で51校。ブロックごとにそれぞれの小・中学校をつないだ小中連携教育の学びを進めている。

市立小・中学校のICT環境整備状況は、全普通教室への電子黒板、児童生徒平均6人に1台のタブレット端末の整備などが完了。全教員がICTを使った授業を普通に行える状況を作っていくのを目指す。

同教育長は、一連のICT活用で目指すものを「これからの時代を見据え、子供たちがたくましく生きていけるような力の育成を見据えている」と指摘。そして、主体的、協働的、深い学びを実現するためには、ICTを学習ツールとして利用するのはとても有効だと強調する。次期学習指導要領に向けて注目されている「アクティブ・ラーニング」の推進も視野に、教員のICT活用策や指導力向上に力を入れている点も話す。

■未来に必要な能力を育む

未来に必要な能力育成を深く考慮する中で、同市は、小中9年間のICT教育で育む力を4視点で明確化した。1つめは「協働力(Community)」。例えば、タブレット端末を使い、グループの調べ学習でさまざまな記録や気づきを蓄積する。

「思考・判断力(Cognition)」の育成も押さえる。各自がタブレット端末にまとめた学習成果を電子黒板などで一覧表示。同市内の校内LANで利用できる教育グループウェア「スタディノート」も有効利用する。このノートによって多様な考えを可視化しながら共有。比較や掘り下げる学習プロセスを生み出し、学習者の確かな考えや理解を深める。

これは、学習記録の整理や変化した考えを分かりやすくまとめる際にも生きる。電子黒板の利用を織り交ぜ、考えの整理と他者が理解しやすい説明を吟味しながら「言語力(Communication)」育成を図りたいとする。

一方、あらゆる教科の基礎基本から応用問題を子供たちが反復練習し、確かな「知識・理解力(Comprehension)」を身に付けていくのも大事にする。

このために同市では、平成16年度から「つくばオンラインスタディ」(今年7月から「つくばチャレンジングスタディ」)と題したeラーニングシステムを整備、提供している。小・中学校の5教科7万問を収録。学校だけでなく、公民館や図書館、家庭からも学習システムにアクセスができる。基礎から応用問題までを網羅し、宿題にも役立てている。子供の学習進度や志向に応じて、どこでもいつでも学べる環境が実現している。今年度からは、スマートフォンなどマルチデバイスでの配信も可能にする。

一連のシステム構築では、(株)内田洋行による確かなセキュリティーや保守バックアップのサービスに助けられたとも。

同教育長は、「同システム立ち上げ当初は1万問でスタートした。繰り上がりの足し算など、子供の実際のつまずきを分析して出題の改良と数を増やしてきた」とし、「家庭状況にかかわらず、全ての児童生徒に良質な学習機会確保にも役立っている」と振り返る。

■プレゼンテーションコンテストを全国に拡大

このような育成視点を踏まえ、市は独自で小・中学校の総合横断学習「つくばスタイル科」なども創設、充実させている。▽環境▽キャリア▽歴史文化▽健康安全——など複数のテーマを扱い、学校ごとの柔軟な編成で展開する。

▽課題発見▽情報収集▽何ができるか考え発信——を意識した学習場面とステップを重視。ICT活用も交え、未来をたくましく切り拓く主体性、協働性、問題解決力などを育てている。

市内各学校の特色ある取り組みを発信、吟味できるよう毎年「プレゼンテーションコンテスト」も開催。多様な実践を学び合いながら、情報発信する力も養う。今年度からは全国の参加者も募る。

■ICT生かして「学び方」学ぶ

同教育長は、「環境整備より、どんな指導目標や実践を充実させるか考えるのが大事」と強調する。充実したICT環境があっても教員が使わなければ意味がないとして、教員に「学びのイノベーション」の意味を理解してもらい、効果的な学習ツールとしてICTの良さを実感してもらうのが重要と述べる。

情報教育担当の教員だけがICTに携わるのではなく、全教員が関わる仕組みが大切とも言及。毎年、市内の学校が実践を発表し、事例集を作成する機会を工夫している。「どこよりも早く明日の教育に出会える学園を目指す」を共通目標に、「『学ぶ量』より『学び方』が学べる」指導の転換と実現に向けた改善と努力を進めていくと抱負を示す。

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