動画やアニメ解説で確かな理解 全教員に授業でICT活用促す【情報教育特集】

生徒の学習意欲喚起にもつながると指摘
生徒の学習意欲喚起にもつながると指摘

デジタル教科書の動画機能などを生かして分かりやすい授業を実現——。埼玉県八潮市立大原(だいばら)中学校(藤谷和史校長、生徒数555人)で数学を指導する諏訪哲也教諭。ICTを使った実践に意欲的に取り組み、毎時間の授業でデジタル教科書を活用している。デジタル教科書の動画コンテンツを生かす中で図形の展開図と立体図の変化や関係を生徒に分かりやすく理解させられるなどの利点を強調。生徒の学びの興味関心を高められる良さも指摘する。特筆的なICT実践より、校内全教員がICTの効果を感じ、試みる授業を期待し、「とにかくICTに触れてほしい」と願う。

■黒板脇の大スクリーンにデジタル教科書投影

同教諭は、埼玉県内で各教科指導に優れた教師を認定する「授業エキスパート」にも選ばれている。3年1組で行った単元「2次方程式の利用」では、教科書と黒板を使った既存の授業にICTを有効に織り交ぜた展開を試みた。黒板の傍らには大型スクリーンを設置。PCを介して東京書籍(株)のデジタル教科書を映し出した。

この日の例題は、長方形の紙から直方体の容器を作ると想定したもの。生徒に展開図から立体を想像させながら、紙の長さ、容積に関する方程式、箱の高さを求める立式などを考えさせた。

■展開図と立体の関係に理解深めるためアニメーション活用

最初は、スクリーンに直方体の展開図を提示。その上で、「横が縦より4センチ長い長方形の紙があります。紙の4すみから一辺が3センチの正方形を切り取って直方体の容器を作ったら容積が96立方センチになった。紙の縦の長さは」を問うた。

この問題解決のため、同教科書では「紙の縦の長さをχセンチとし、容器の縦と横、高さをχを使って表し、容積に関する方程式を作る」という考え方を挙げる。同教諭は、加えてこの方程式を立式するポイントとして、展開図の横と縦に着目させた。問いの「紙の4すみから一辺が3センチの正方形を切り取る」を踏まえ、スクリーンの展開図に注目点などを記述。その上で、デジタル教科書のアニメーション機能で展開図が立体に変化する様子を示した。

デジタル教科書を使わなければ、実際に展開図を作成し、立体に組み立てる流れを見せたり、体験させたりするしかない。限られた学習時間の中で多くの手間と作業が必要になるのは課題だ。同教諭は、デジタル教科書を使えば、教師の手間や説明を省略しながら、簡易に分かりやすい解説が示せると利点を語る。

生徒は、こんなスクリーン上の動画や注意点を意識しながら、図形の構造と立式への考え方をより正確に理解。展開図の縦は切り取った一辺3センチを2つ分とし(x-6)と設定。横は(x-2)として、3(x-6)(x-2)=96を確認した。

その上で、両辺を3で割り、展開して整理するとx2乗-8x-20=0。したがってx=-2`x=10。x>6でなければならないからx=-2は問題に適していない。x=10は問題に適している。答えは10センチと捉え、ノートに導き出した方程式を記述していった。4すみを切り取る長さを変えた出題や応用問題にも挑戦した。

デジタル教科書で、基礎となる図形の捉え方と方程式の要素を確実に学び理解する中で、どんな問題でも考え方の軸を押さえ、しっかり立式できる生徒が目立っていた。

■既存の授業にICTを効果的に織り交ぜる

同教諭は、毎時間の数学授業にデジタル教科書などICTを使っている。黒板に板書する従来型の授業も大事にしながら、傍らに大型スクリーンを設置。デジタル教科書やICT教材が生きる場面を考慮しながら、生徒の学びの関心を引き出し、より理解が深まる展開を模索する。

デジタル教科書導入による指導の変化では、「特に授業導入の利用で生徒の学習への関心や意欲が高まっている」と振り返る。加えて「動画やアニメの解説によって生徒の思考や理解が深まっている」との意義も述べる。

校内のICTリーダーとしての役割も担う中、全ての教師たちに「とにかく校内にあるICT教材教具を使ってみてほしい」と願っている。「内容にとらわれず、簡単でシンプルな方法で実践し、ICTの利便性など良さを実感してもらえれば」とのエールも贈る。

■協働学習視野に全教員の指導力向上目指す

藤谷校長は、同教諭の実践などを見つめる中で、「ICTの視覚を通じた教育効果や生徒の学習集中度を高める意義を強く感じている」と話す。

現状では、校内のICT環境や整備が不十分だが、教師たちは若手もベテランもICT実践に興味を持ち、自分なりに挑戦する様子が見られるのが頼もしいと感心の声をあげる。今後のICT整備を期待しながら、タブレット端末を利用した授業や生徒同士の協働学習を実現させたいとの思いを抱く。

同教諭には、校内のICT活用リーダとしての活躍を期待。全教員がICTを使った授業を実現するための校内研修とプログラム開発などを進めたいと目標を掲げる。

【戻る】