(提言)情報モラル教育への視点 子供たちの本流を創る【情報教育特集】

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玉川大学大学院教育学研究科教授 近藤昭一

 

国を挙げて教育の情報化が進められる中で、子供の情報活用能力の育成と情報モラル教育の推進は学校教育の急務となっている。

一方、子供の私的な生活における情報化も急速に進行している。内閣府の「青少年のスマートフォン・携帯電話の所有・利用状況調査」(今年3月)によれば、スマートフォン等の利用状況は、高校生で96.7%、中学生で60.9%、小学生で50.2%に上り、子供たちは自由に使いこなしている。

こうした中で、中高生の病的なネット利用者が51万人、成人の依存者が421万人に及び、急速な増加傾向にあるとの報告もある(厚労省研究班調査、平成25年8月)。SNS依存、ゲーム漬けなどの依存傾向に加え、嫌がらせ投稿やLINE外しなどの深刻なネットいじめや種々の問題行動なども見られる。

人は情報機器の利用者となった時点で、巨大な発信力・表現力・影響力をもち、広範な交流と市場性・娯楽性を手に入れることになる。しかも、その情報は劣化しにくく持続性があり、拡張性と攻撃性を有している。子供もスマホを手にした時からこうした力をもち、無自覚のうちに社会に向き合うことになる。

そこにある課題は、適切な利用方法を教えれば済むという程度の問題ではなく、その巨大な力を社会的に有用に使い得るかという、自立達成にもかかる課題といえる。まして成人を含む多くの若者が無責任な投稿を行い、SNSなどに依存する現実を見ると、自立達成上の課題であるのは、さらに明らかだ。

総務省の「高校生のスマートフォン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査」(26年7月)からは、依存傾向の強い高校生ほど、無責任な書き込み等の不適切な交流が多く見られ、また現実の友達や親への満足度が低く、「人にどう思われているか気になる」「自分には頼りにできる人はいない」「抑うつ傾向」など、孤独で自信喪失の傾向にある姿が浮かび上がる。

このことから、情報モラル育成の根底には、子供がその生育過程においてどれほど他者と向き合い、集団の中での協働や役割を通して自他への理解を深め、自己確立に近づいてきているかという家庭教育を含む重要な命題があるのがわかる。

情報モラル教育は、その心得や手法を教えることや教科等の指導だけで克服できるものではなく、教育の根本に根ざす課題と位置づける必要がある。学校や家庭・地域におけるあらゆる育成活動を通して行う自己確立へのアプローチの一環として、情報モラル教育をとらえる必要がある。

学校での取り組み事例をあげる。多くの子供たちが「既読スルー」「返信遅れ」などに気を遣い、書き込みに神経質になり、多くの時間を費やすなど、悩みやストレスを抱えている。これらを掘り起こし、子供自らが悩みを堂々と話し合って全校規模で解決を図る取り組みなどは、集団での協働や問題解決を学ぶ機会となる。

既に各地の学校で行われているところだが、個人内にくすぶっているネット上の問題を全校で共有し、集団の課題として問題解決を図ることは、情報モラルの在り方を正すたくましい子供たちの本流を創出する契機にもなろう。

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近藤昭一(こんどう しょういち)教授 生徒指導/学校経営と危機管理/教育相談/メディアコミュニケーションと人格形成の分野を専攻。著書に『モバイル社会を生きる子供たち』時事通信出版局、『子供の危機と学校組織』教育出版など。

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