画面操作し学び深める ICT活用で未来の学校を創造

タブレットの画面を見せ合い、考えを共有して練り上げる
タブレットの画面を見せ合い、考えを共有して練り上げる
熊本県高森町立高森中学校

学習者用デジタル教材だからこそ 課題解決型学習を展開

「もし学習者用デジタル教材がなかったら、この数学の授業は行わなかった」——。熊本県高森町立高森中学校の野村優資教諭は、展開した授業について、そう断言した。同校は同県教委が指定する「ICTを活用した『未来の学校』創造プロジェクト推進事業」の研究指定校。学習者用デジタル教材などを駆使し、個と協働で取り組む課題解決型学習モデル「たかもり学習」を実践している。昨年4月に発生した熊本地震の傷跡が残る同地域だが、生徒らは雄大な阿蘇山に見守られながら、生き生きと学習活動に取り組んでいた。

◇ ◇ ◇

■試行錯誤して思考を深める

3年生9人が集まった教室で、生徒らは学習者用デジタル教材(東京書籍(株))を起動させた。タブレットパソコンは1人1台。野村教諭と電子黒板を囲むように、扇形に机が並ぶ。同教諭は、授業内容に合わせて席の配置を変えている。

授業は数学で、「四角形の各辺の中点を結んでできる四角形について、デジタル教材を用いて頂点を自ら動かし、複数の場合を考える活動を通して、ひし形になる条件について考える」のが狙い。

同教諭はまず、前時に学んだ中点連結定理を想起させた後、「図形を動かすデジタル教科書の機能を使い、頂点を動かして、『この条件では必ずひし形になる』『この条件なしではひし形にはならない』という条件を見つけてみよう」と課題を出した。

生徒らはタブレットの画面を集中した面持ちで見ながら、四角形の形をさまざまに変え、ひし形を作ると、十字線を引いたクリアシートを画面に当てて対角線を確認し、ひし形になっているかを確認。10分ほどの間に、いくつかのひし形を試行錯誤しながら作り、気付いた条件を書き出した。

熱のこもった発表に拍手が起こった
熱のこもった発表に拍手が起こった
■考えをグループで共有

続いて、生徒3人1組で、各自が導き出した条件が正しいかを検証させた。これは、「たかもり学習」と名付けられた、同校独自の授業の流れ。授業開始時に、まずは個人で集中して思考し、その後はグループでアイデアを共有して、考えを深め合う。この一連の流れが、生徒の主体的な学習意欲と協働的な探究姿勢を培っていき、学びを深めていく。

生徒らは机を三角形に向かい合わせると、自分のデジタル教材の画面を仲間に見せながら、見つけた条件を説明。タブレットを使ってのプレゼンテーションなので、発見やアイデアの伝達がスムーズにできていた。

同教諭は、グループ間を回りながら議論をサポート。生徒らのデジタル教材の画面を指差しながら、「こうすると、この条件でなくても、ひし形が出来るんじゃないかな」「この場合、さらにこういう条件も考えられるのでは」などと、生徒らに、別の見方や反例などを示し、思考をより深める示唆を与えた。

グループでの探究と共有化を20分ほど行った後、練り上げた考えを各グループがミニホワイトボードに書き上げ、各代表者がそれを持って教室前方に出た。電子黒板も使い、発見した条件を説明。熱のこもった発表に拍手がわき起こった。

授業の終末で同教諭は「今日学んだことを書き出してみよう」と振り返らせた。さらに「今日はひし形だったけれど、長方形や正方形になる条件だとどうだろうか」と考えさせ、次時への意欲を高めた。

■生徒の理解力が上がった

この授業展開について同教諭は、「図形を視覚的に捉え、一人ひとりが自ら操作し、図形を変化させられる学習者用デジタル教材だからこそ、生徒は自分で気付き、発見できた。もし学習者用デジタル教材がなかったら、この授業は行わなかった」と強調する。

また「デジタル教材の使用で、生徒の図形の理解力が上がっている。例年と比較して、そう感じる」と、手応えを語った。

■ICTならではの授業を構築・古庄泰則校長

教えられてやるのではなく、生徒が課題を自ら見つけ、自ら解決するのが、本校の「たかもり学習」。より良い授業を提供するためには、ツールもより良いほうがいい。

数学の授業でいえば、▽抽象的概念を具体的に確認できる▽操作して試行錯誤できる▽1人で考える場面を大切にしながら考えた中身をグループで話し合う▽その中で学習内容の理解を広げたり深めたりする——。そういうツールとして、学習者用デジタル教材はとても役立っている。

そんな学習者用デジタル教材を使いながら、「あ、そうか」というつぶやきが生徒から出る。これも、学習者用デジタル教材の力が大きくあらわれている瞬間だと思う。

また特別支援学級でも大変役立っている。本校には2クラスあって、学習者用デジタル教材を使っているが、試行錯誤できるので、特別支援学級では非常に有効だ。

21世紀型学力や「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)が求められている。そのための道具として、学習者用デジタル教材は欠かせない。教員には、ICTをどんどん活用してほしいと言っている。

ICTだからこそできることを、大事にしてやっていきたい。生徒が豊かな心と確かな学力を身に付けるのが目的。本校の教員は全員がこれを理解していて、ICTならではの授業を構築している。

これからも目的をきちんと見据え、活用していきたいと考えている。

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