座談会「学校図書館の活用で新しい学びの姿を」 part1

3月31日に告示された新学習指導要領では、学校図書館を活用した「主体的・対話的で深い学び」の実現が求められている。その中で、現状の課題や教育現場の工夫などについて、「新学習指導要領と学校図書館の役割」をテーマに、関係者で座談会を行った。


出席者
文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
坪田 知広
東京都小平市立小平第一小学校司書教諭(収録当時)
石橋 幸子
日本児童図書出版協会会長
竹下 晴信
(公社)全国学校図書館協議会理事長
森田 盛行
司会・船木正尋編集部次長

司会 新学習指導要領での学校図書館の役割は。

言語能力の向上が不可欠 坪田課長
言語能力の向上が不可欠
坪田課長

坪田 一つには子供同士や教師と話し合い理解を深める「主体的・対話的で深い学び」があります。学校図書館を活用し、こうした授業を行うには新聞や統計などの資料が不可欠です。これには言語能力や情報活用能力を向上させる狙いがあります。読解力の育成には当然、読書がより一層必要となり、学校図書館には読書センターとしての機能が期待されています。学習センターと情報センターとしての機能も持っていますので、学習指導要領の新しい姿はまさに学校図書館の全ての機能を活用することを求めています。

そこで、私たち文科省はそれを念頭に、第5次学校図書館図書整備等5か年計画を今年度から実施しました。昨年度の学校図書館の現状に関する調査によれば、図書標準達成率は小学校で66.4%、中学校で55.3%で、いずれも4年前と比べて増加していますが、100%ではありません。今回の整備計画では100%を達成させるために、文科省、自治体、学校図書館、司書教諭が頑張らないといけません。

また新学習指導要領の一つの柱には、主権者教育があります。選挙年齢が18歳以上になり、主権者教育の充実が求められます。今回の5か年計画では新聞配備が拡充し、小学校は1紙のままですが、中学校は1紙から2紙に、高校では初めて地方交付税措置がされて4紙となりました。学校図書館では新聞配備について歓迎する声があります。主権者教育を充実させるためには人材も必要です。司書教諭をサポートする学校司書の配置は、学校図書館法の改正もあり、進んでいます。昨年度、公立学校では小学校で59.3%、中学校で57.3%と6割に満たない状況ですが、新たな整備計画では1.5校に1人の学校司書を配置しようと地方交付税が措置されました。当然、将来は100%を目指しています。

司会 教育現場では。

石橋 今の話は私が考えている部分と多くが重なっています。「主体的・対話的で深い学び」を行うには多様な資料が必要で、学校図書館にはそれらがあります。うちの学校では授業でパスファインダー(調べ方ガイド)を用いています。2、3年前から一覧表を作成し、26種類を作りました。探究型学習をする場合には、資料を集めるのに苦労します。そのとき調べたい課題の一覧表では、自校の学校図書館にはこれだけの情報源があると一目瞭然。それを参考に子供が自ら資料を揃えるのは可能で、教員が調べ学習の計画を立てるときに役立ちます。これは「主体的・対話的で深い学び」を実践するためには不可欠だと思います。パスファインダーを活用した研究授業や校内研修も開きました。

新学習指導要領を現場で実践するには、学校図書館の館長である校長のリーダーシップの下で、司書教諭と担任がそれぞれの役割をしっかり果たしてほしいです。そのためにも、司書教諭の強い推進力が必要です。法改正後、学校司書の配置が明確化されました。学校司書の配置が進み、司書教諭とのさらなる協働が期待されます。小学校では専任の司書教諭がほとんどいないので、若い司書教諭は授業準備で大変で、学校司書の存在は助かります。各校の事情に合わせてブックトークや図鑑や百科事典の使い方指導もしています。

全教員の司書教諭制度化を 竹下会長
全教員の司書教諭制度化を
竹下会長

竹下 調べようとするテーマが個別になるほど図書資料は少なくなります。学校の現状を聞き、このようなパスファインダーを活用した授業は有効だと思います。ただ、ここまで準備してしまうと子供たちが自ら考え工夫する余地がなくなってしまうのではと危惧します。新たな整備計画は、本当にありがたい。平成4年に学校図書館についての悉皆調査を当時の文部省が行い、図書標準を設けました。翌年には図書標準を満たすために学校図書館図書整備計画を策定し、5年間で計500億円の予算措置がされました。昨年度は第4次整備計画の最後の年でした。その間、文科省は途切れず予算を付けましたが、小・中学校はいまだ100%を達成していません。学校は本を必要としないのでしょうか。

石橋 本は必要です。

竹下 そうですよね。ではなぜ図書整備に予算がなかなか回らなかったか。学校図書館法に、学校図書館は学校教育に欠かせない基礎的設備と規定されています。地方自治体の財政は厳しく、交付金の形で学校図書館を整備してもらわないと、実現できないものと思っています。子供の教育は日本の未来への投資で、今後、学校図書館の役割はますます重要になります。言語力の充実に始まり、「主体的・対話的で深い学び」を実践していかなければなりません。教科書を覚えるだけでなく、図書館などを活用した調べ学習やフィールドワークなど総合的に学習しなければなりせん。
フランスのミッテラン大統領当時の外交顧問レジス・ドゥブレは『思想としての〈共和国〉』で図書館について「共和国においては学校と図書館が重要視される」としています。「学校の任務は何事も自分の頭で考え判断できる市民を養成すること」とし、デモクラシーでは「学校のもっとも重要な任務は労働市場に見合った生産者を養成することだ」と書いています。この主張には、新学習指導要領で求められている「主体的・対話的で深い学び」と共通するものがあり、その実現には図書冊数だけでなく、各分野をバランスよく蔵書するのが大切といえましょう。

司会 蔵書の構成は。

坪田 自然科学やキャリア教育の本が少なく、文学に偏っているのは事実です。新しい学びに対応していくために、各教科の先生が求める本を司書教諭、学校司書が選書していけば、自ずとバランスが取れるのではないかと。楽観論ですが。

座談会「学校図書館の活用で新しい学びの姿を」 part2 へ続く


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