読書活動通して全児童生徒に 東京都立墨東特別支援学校【学校図書館特集】

聴く耳と観る目を育む
タブレット端末なども活用

 

胃ろう部からの栄養注入中に一人で読書をする児童
胃ろう部からの栄養注入中に一人で読書をする児童

本校は、オリンピック・パラリンピックの舞台となる東京都江東区に所在する。肢体不自由・病弱の小学部(小学生)から高等部(高校生)の児童生徒が在籍する特別支援学校である。通学区域は広く、江東・墨田・台東・中央・千代田の5区にまたがる。通学する児童生徒だけではなく、自宅に教員が訪問して授業をする訪問教育、病気やけがの治療をしながら学習が継続できる病院訪問の児童生徒も在籍している。

児童生徒の約85%が車いすを移動手段(自力で操作や他の人に押してもらうを含む)である。中には、自力歩行が可能な子供たちもいるが、歩く機能の維持や今持っている機能をさらに高めるための取り組みをしながら学校生活を送っている。また日常的に医療的ケアを必要とする児童生徒も在籍している。教育課程も複数あり、発達に合わせた幅広い内容の蔵書を揃えるようにしている。

(1)本がある環境作り

5年前、本校の図書館は高等部の生徒たちが主に利用する3階にあり、図書館の半分は高等部の教室になり、気軽に図書館に入れる環境ではなかった。小学部の児童が入り口で「入ってもいいですか?」と聞いている様子が印象に残っている。教室として使っている生徒たちに「出ていってください」と言えなかった。そこで、誰でも気軽に本を手に取れる場所に図書コーナーを作ることからスタートした。

1階廊下は絵本や紙芝居、2階廊下にはY・Aや仕事に関する本・マンガなどを置くようにした。各階とも立ち寄りたくなるような季節の装飾やベンチなどを置くようにした。借りるだけではなく、歩行練習中に立ち寄って絵本を読んだり、クールダウンをしたりする場所になった。2階では、保護者が夢中でマンガを読む姿も見ることがあった。

とにかく、児童生徒にとって身近な場所を作ろうと、いろいろと奮闘してきた。そして翌年、1階に1教室すべてが図書館として利用できる教室が割り当てられた。車いす同士でもぶつからずに移動でき、さまざまな発達段階に合った図書を揃えるのを目標に整備し、児童生徒にとってはなくてはならない場所作りを心がけた。整備期間はわずか3カ月で開館したが、現在も利用しやすい環境作りを進めている。

(2)おはなしの会「うさぎ」

教室で“お話会”をしてくれる本校専属のグループ「うさぎ」には、3人が所属している。1回の来校に2人がペアになり、たくさんの本や紙芝居などを持って各教室でお話会を行い、6年目を迎えた。担任からのリクエストを受け、児童生徒に合った内容で、お話の世界にたっぷり浸る時間になっている。児童生徒に聴く耳や絵本を観る目が育ってきたと、グループでは手応えを感じ取っている。

現在「うさぎ」の来校日が決まると、希望が多く、計画するのが大変なほどの大盛況である。

(3)NIE・マルチメディアDAISYを活用

中学部の教科書を使って学習する教育課程の生徒たちは、朝日新聞朝刊に掲載されている「しつもんドラえもん」に取り組んでいる。専用のノートに考えなどを書き、順番に担当している。コメントも中学部の教員が順番に書いている。また年に1回、朝日新聞社による出前授業も、6年間継続している。

この授業をきっかけにコンビニに新聞を買いにいく生徒もいるほど新聞好きになっている。

タブレット端末を利用したマルチメディアDAISYは、伊藤忠記念財団の協力を得てさまざまな場面で活用している。胃ろう部からの栄養注入中に一人で読書をする児童も見られるようになった。これからの活用が期待される。

(4)地域の人とともに

今までの研究・活動成果をまとめて得た研究助成金を使い、図書館の整備や本のアドバイスをする図書館支援員が平成28年10月から入るようになった。月に数日・半日単位で入っている。図書館に人がいることで雰囲気が一段と明るくなり、さらに入りたくなるような図書館になった。貸出冊数も増加している。今年度から予算が付くようになったため、今後も楽しみである。

季節に合わせた装飾については、江東区のボランティアに依頼している。毎月色とりどりのかわいらしい装飾が図書コーナーを魅力的にしている。児童生徒・教職職員も毎月楽しみにしている。

(5)丁寧な読書・図書館運営を

特別支援学校は一人ひとりの実態に合わせ、課題に迫るような授業を展開している。また、障害や病気の丁寧な観察や読み取りが児童生徒理解につながっている。指導と同じように、図書館の環境づくりや蔵書構成についても実態に合わせた内容を揃えることが必要だと強く感じている。

大盛況のお話し会は、個や集団の実態に合った内容だから「聴いてみよう・観てみよう」と心が動かされているのだと思う。また昨年度は、これまでの活動が評価されて、文部科学大臣賞を受けた。この賞を誇りに思い、今後も丁寧な読書・図書館運営をしていきたい。

(主任教諭・生井恭子)


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