3年間で貸出総数が10倍に 横浜市立駒岡小学校【学校図書館特集】

学習に好循環を生む
図書館への流れ創っていった

図書館で調べ学習
図書館で調べ学習
◇活用を一歩前進させる

横浜市立駒岡小学校は、同市の北東部の住宅地にあり、児童数約700人。これからも児童数が増えていくと予想されている。地域の温かなまなざしに見守られ、ボランティアによる読み聞かせや紙芝居の上演など、居心地のよい図書館が経営されていた。市の施策によって平成25年から学校司書が配置されると、教職員との連携の下で、NDCによる分かりやすい分類とレファレンスサービスがいつでも提供できるようになっていた。この学校に26年度に着任し、図書館の活用をさらにもう一歩前進させようと、さまざまな工夫を行った。

◇図書館に行く雰囲気づくり

着任時、特別教室の割り当てに図書館の配当がなく、1クラスが図書館を占有できる時間が決まっていなかった。そのため学校全体として「授業で先生と図書館に行く」という空気がなく、図書館の活用も一部に限られる傾向が見受けられた。早速1、2年生のクラスに教室配当を促したところ、「毎週図書館に行って本を読む、借りる」という流れが生まれ、低学年児童を中心に利用者が徐々に増えていった。

◇本を増やす努力

平成25年度の蔵書数は3500冊で、実にSLA図書標準の4割以下であった。幸い、地域の力により各学級の本棚には「創立40周年記念文庫」として魅力ある読み物がそろえられていた。校舎内を見渡し、空きスペースなどに取り残されていた絵本や英語の本を図書館に移動し、閲覧・貸し出しができるようにした。

また、学校の創立にまつわる記念誌が倉庫の奥に眠っているのを発見した。二度と編集することのできない貴重な資料ではあるが、誰の目にも触れずに古びていくよりは、社会科の学習に、郷土の学習に利用する方が本が生きる。記念誌なども図書館に移動し、子供たちの目に入るようにした。すると「学校の本が図書館にある」と話題になり、3、4年生の歴史学習で教材として使う学級が見られるようになった。

寄贈も呼びかけた。学校司書と協働で図書だよりを発行し、「こんな本が必要です」と示し、3年間で500冊余りの寄贈を受けた。寄贈者は図書ボランティアとして長く携わっていた人が多く、確かな目で選ばれた本が学校図書館に仲間入りした。

また司書同士の情報交換により、近隣の中学校の蔵書に、小学生にこそふさわしい本が相当数あることが分かった。市の「備品保管替え」の措置をとり、本校は蔵書を増やし、中学校は必要な資料を置くためのスペースを確保でき、一挙両得となった。蔵書数は平成28年度3月末で7990冊となった。

◇図書を活用した授業づくり

利用者は徐々に増えてきたものの、活用の内容は読書指導にとどまっていた。25年度は年間の貸し出し総数が2千冊にも届かない状態で、「特別に本の好きな子が利用する本の倉庫」イコール「図書室」の域を脱していなかった。

そこで26年度には、市の学校図書館研究会の研究授業者を引き受け、導入から図書を活用した授業づくりを示し、学年の教員たちと共有することができた。

27年度から、校内研究の教科が国語になった。勉強熱心な本校の教員たちはアクティブ・ラーニングや並行読書・比べ読み・重ね読みについてぐんぐん学んでいき、教材選びに図書資料を積極的に活用するようになった。学校司書も学習内容についての理解を深め、教員とやり取りすることで適切な図書資料をそろえてくれた。試行錯誤の中ではあるが、図書館の活用が少しずつ形になってきた。

また学習が進むにつれて、自ら調べものに図書館に足を運ぶ子供が増え、「学習スペースとしての図書館」が具体的になってきた。28年度末、年間貸出総数は1万9千冊を超え、1人あたり26冊、3年間で10倍に達した。

◇図書館に図書ではない資料を

学校図書館は「学校」の「図書館」である性格上、各教科・領域に対応できることが望まれる。しかし、現状は読み物・文学作品の占める割合が大きく、調べ学習等、今、必要な力を付けるための学習に対応しきれていなかった。しかし、学校予算にもスペースにも限りがあり、簡単に本を増やせない。

そこで、「図書ではない資料」に目を向けることにした。夏休み前、「各地の観光パンフレットをもらってきてください」と職員に呼びかけた。北海道から沖縄まで、各地の資料が集まった。学校司書が見やすく分類し、社会科や総合的な学習、国語のリーフレットづくりのための資料を用意することができた。

地図パズルやかるた、地球儀や聴診器などを、自由に触れられる場所に置き、「知的空間」としての図書館をデザインしていった。すると職員もその意図をすぐに理解し、今度は学習でできた成果物を置きに来るようになった。国語で作った自動車図鑑や絵本、解説書など、重点研究にしている国語を中心に、学習の好循環が生まれるようになった。

◇情報の取捨選択力と生きる力を

情報のあふれる現代社会だからこそ、正しい情報の取捨選択ができる力が求められる。学校図書館を入り口に、これからも子供たちの生きる力を育んでいきたい。

(司書教諭・岩元カオリ)

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