【座談会】安全安心な学校給食を実現 リスクマネジメントとリスクアセスメント

出席者
文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課学校給食調査官
齊藤るみ
国立感染症研究所感染症疫学センター第二室室長
砂川富正
(公社)全国学校栄養士協議会理事/横浜市立上寺尾小学校栄養教諭
松本清江
(一社)日本厨房工業会 日本調理機㈱学校給食センター推進部統括部長
飯田勝彦
日本食品洗浄剤衛生協会 シーバイエス㈱マーケティング・事業企画本部HACCPフードセーフティ研究所フェロー
片桐史人

 

「安全安心な学校給食提供のためのリスクマネジメント」をテーマに、学校給食関係者が集まって座談会を行った。


司会 今年2月、きざみのりに付着していたノロウイルスが原因で、東京都立川市立の小学校などで集団食中毒が起きました。食中毒の現状は。

各立場で組織的対応を 齊藤氏
各立場で組織的対応を
齊藤氏

齊藤 平成28年度は、きざみのりを発生原因とする食中毒を含め、学校給食で6件起きてしまいました。全てノロウイルスが原因です。6件のうち3件がきざみのりが原因で、1件は規模が大きかった。ここ数年は食中毒は減少傾向でしたが、28年度は発生件数や有症者数が多くなってしまいました。食品納入業者の選定と衛生管理の啓発も合わせて、学校給食における衛生管理を徹底していかなければいけないと思っています。

砂川 いま日本国内で一番多い食中毒の原因がノロウイルスです。食中毒統計の情報として挙げられている患者数は1万数千人ほど。発生動向調査でノロウイルスを含む感染性胃腸炎の年間推計は、400万~500万人に上るときがあります。ノロウイルスの次に多いのはカンピロバクターです。また感染症発生動向調査では、腸管出血性大腸菌、これはO157を含みますが、年間3千~4千人と報告されています。かつては学校給食でも非常に大きな被害があったO157ですが、最近は非常に減っていて、これは学校給食現場の、非常に大きな努力のたまものだと思いますが、全国的には激減しているわけではありません。

司会 効果的な予防法は。

砂川 基本は「つけない、増やさない、やっつける」です。手洗いを徹底して病原体を手につけない。温度管理を徹底してばい菌を増やさない。加熱してやっつける。単純ですが、非常に重要で、どう徹底するかの工夫が重要なポイントです。

松本 少し前までは、寒い時期はノロに気をつけて、暖かくなったら細菌性の食中毒に気をつけてと、心がけてきたのですが、最近は真夏でもノロウイルスによる食中毒がゼロではないといわれています。現場ではあちらもこちらもと、いろいろな方面にいつもピリピリしながら衛生管理をしています。まず、丁寧に検品し、汚れをしっかり取り、きれいに洗って、調理室へ入れる。また校内には子供がたくさんいるので、子供たちの感染症からノロが給食室の中に入らないようにする。とにかく調理現場に汚染を入れない、汚さない、細菌やウイルスを入れないに、一番気をつけています。

司会 子供たちの衛生意識は上がってきていますか。

現場は毎日が真剣勝負 松本氏
現場は毎日が真剣勝負
松本氏

松本 食育には衛生管理も含まれると思いますので、教室に対してもかなり啓発しています。教室では小動物や虫などが飼われているので、世話をした後や給食時間の前には石けんで手を洗い、教室内の衛生管理に気をつけるよう、職員会議などで教職員にしっかり伝達しています。

飯田 施設環境面で弊社ではまず、調理員のみなさんに衛生講習会を徹底的にやり、基本設計、実施設計、そして今まではあまりなかったのですが、委託業者にも入ってもらい、各単品図から打ち合わせしていくやり方に変えました。空調関係、温度管理、湿度管理など、これらをしっかりとしなければいけません。厨房機械もそうですけれど、実はそちらのほうが大切なので、そこは設計事務所にもしっかりやってほしいと指示しています。

司会 異物混入対策はどうでしょうか。

飯田 厨房機械はスライサーの破片などいろいろありますが、ボルトナットを緩まないUナットに変えたり、溶接できるところは溶接してボルトを使わないようにしたりと、日々、製造側と検討しています。

司会 洗浄面ではどうでしょうか。

片桐 食中毒の三原則「つけない、増やさない、やっつける、あるいは持ち込まない」で、15年ほど前の食中毒と、今では、だいぶ様変わりしています。昔はサルモネラや腸炎ビブリオが多かったのが、だんだん少なくなり、ノロウイルスとカンピロバクター、いわゆる少量発症型に主役が交代しました。私どもが指導させていただくときには「少しもつけない、徹底的にやっつける」と教育しています。リスクマネジメントの前にリスクアセスメントをするのが重要です。どこにどんな菌がいるかが分かっていれば、洗浄によって少しもつけないのが可能になる。私ども洗浄剤メーカー、殺菌剤メーカーはよく効くものを提案していますので、これをいかに使ってもらうかではなくて、どこに的確に使っていただくかが課題です。

司会 HACCP(ハサップ)を推進されていますね。

HACCPを推進 片桐氏
HACCPを推進
片桐氏

片桐 HACCPは、「食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生するおそれのある微生物汚染等の危害要因を、あらかじめ分析(Hazard Analysis)し、その結果に基づいて製造工程のどの段階でどのような対策を講じれば、より安全な製品を得られるかという必須管理点(Critical Control Point)を定め、これを連続的に監視することで、製品の安全を確保する衛生管理の手法」です。まさに厚労省が来春の通常国会で、食の安全の国際標準化=ハサップの義務化を法制化しますので、実際に生きてくるといいなと思います。

司会 では、起きた後の初期対応については。

齊藤 初期対応は非常に大事です。事故発生の際は、教育委員会や保健所等に速やかに連絡するとともに、患者の措置に万全を期すことが求められます。そして、二次感染の防止に努めることも必要です。そもそも食品を購入する際は、衛生的なものを選定する必要があります。鮮度の良い衛生的な食品を調達した上で、調理場では衛生的な作業を徹底していく。両面で行っていく必要があると思います。

司会 現場としては、どうでしょうか。

松本 現場は、とにかく毎日が真剣勝負です。事前に作業工程表を組み作業動線図を書いていますが、いくつものリスキーな状況の中で、いかに安全な給食にして出すかという、本当に真剣勝負です。そういった日々の調理作業の中でのリスクマネジメントとしては、今日の献立の中では何が最も危険度が高いかなど、朝礼で重点的に従事者に注意を促し、今日の安全を図ります。終わった後は点検して記録します。今日のヒヤリハットを記録に残し、明日からの安全につなげるようにしています。毎日毎日、積み重ねているような感じです。

司会 そのリスクマネジメントについてHACCPの観点から提言は。

片桐 情報共有ですね。毎日が真剣勝負という言葉に、非常に感銘を受けました。正しい情報が共有され、開示され、真剣勝負の現場に入れば対処できる。そこからHazard Analysis、つまりリスクアセスメントが始まります。今日はどの作業が一番危険かは、まさにリスクアセスメントです。リスクアセスメントでいうと、例えば、のりにノロウイルスがついているのは業界では常識です。生のりのリスクを、のりの業界は知っています。その情報が開示されていれば、業者選定で確認できるわけで、事故は防げると思います。

飯田 厨房メーカーとして、リスクマネジメントの観点でいうと、施設計画にあたって靴を洗う洗浄室を設けたり、厨房で使ったナプキン等を収納・殺菌するものも入れたり、そういった設備が現状では抜けています。そういったところも、きっちりやらないといけないという流れで、特に大型のセンターについては、乾燥室、靴の洗浄室なども設けるようになってきています。

齊藤 設備の整備は大切です。衛生管理上の問題がある場合には、速やかに改善措置を図るのも重要だと思います。それから学校給食調理場としては、適切な衛生管理に努めるとともに、万が一、事故が発生した際の対応のためにマニュアルを作成し、対応できるようにしておくことが必要です。衛生管理を徹底した作業を行う際には、なぜこの作業を行っているのかを調理従事者が理解して作業する必要があります。

司会 現場へのメッセージを。

再発防止策を明確に 砂川氏
再発防止策を明確に
砂川氏

砂川 食中毒が発生してしまった場合、学校現場と保健所などの協力は非常に重要です。保健所などがしっかり調査し、その事例に沿った再発防止策の提言を明確に打ち出す必要があります。そしてノロウイルスなどが流行しているときに、学校全体で守るべき衛生上のポイントを給食まで含めて、注意喚起をする役割の人がいるのも重要だと感じています。

松本 汚れを入れないという観点から、給食室は閉鎖的になってしまいがちなのですが、今日の話を聞いて、外からの情報にオープンでなければいけないと、改めて思いました。情報のオープン化を、今まで以上に大事にしていきたいと思います。私は栄養教諭ですが、外の情報を中に入れるのは、私たちの役目だろうと思います。リスクマネジメントの前に、リスクアセスメントの役割が果たせるように、どちらの現場の栄養士のみなさんにも頑張っていただきたいなと思いました。

片桐 リスクアセスメントのためには、情報共有の仕組みです。情報はここに集めて共有しようとなると、すごくいいと思います。教育では、文字や絵から入ってくる情報よりも、動画のほうが印象に強く残ると思います。衛生教育でWHOが分かりやすいビデオを作っています。WHOのホームページをぜひ見ていただきたいと思います。

安心安全なセンターを 飯田氏
安心安全なセンターを
飯田氏

飯田 私どもは機械を納める側として、ただ納めるのではなく、最初に衛生管理の講習会を、そして入れた機器に対しての取り扱い方法、点検方法、掃除の方法をきっちり伝え、事故が起こらないようにしたいと考えます。特にスライサーなどの事故が起きそうな機器は、メーカーとしてしっかり対応しないといけません。全部分解し、ここまで必ず点検して確認してくださいというところまで、メーカーとして指導していきたいと思っています。それにより、事故が起こらない、安心安全な給食センターを作っていきたいと考えます。

砂川 個人的な話ですが、実は私は小学校も中学校も、ずっと給食委員でした。なぜかというと、私はとても給食が好きで、いつも給食室に出入りできる特権を得て、とても生き生きとして学校で楽しい思いをしていました。給食は楽しいと思うのですよね。そういった学校給食の持つ魅力を生かし、発展していってほしいと思います。

齊藤 給食が楽しかったというのは、うれしい話です。給食を楽しみにしている児童生徒はたくさんいます。栄養教諭は、日々の献立が食育の教材となるように、さまざまな角度から配慮しながら献立を立てています。食中毒以外にも、食物アレルギーや異物混入などの事故が考えられます。調理場だけでなく、教室で配膳するときの管理や、食べる側への衛生指導、給食当番の健康管理の把握など、さまざまな確認が必要ですので、それぞれの立場で組織的に対応していただきたいと伝えておきたいです。その上で教育委員会、学校、調理場などが連携・協力して、衛生管理の徹底につなげてほしいと思っています。


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