情報モラルと情報セキュリティ

目白大学社会学部メディア表現学科教授 原 克彦

犯罪に巻き込まれない知識 依存しない適切な利用方法 人的なセキュリティも大切
■社会変化への対応

コミュニケーションに有用な道具の一つとして生活に浸透しているSNSを利用した犯罪が増加傾向にある。軽い気持ちでつぶやいた内容が多くの人の目に留まり、即座に返信がくることで学校とは異なった仲間意識が生まれ、丁寧な返信内容などがあると優しさを感じ、やがて本人同士だけのやり取りになり周りの人が気付きにくくなる。情報の即時性や拡散性、閉鎖性などのSNSの特性と、心理的に相手を安心させることを利用した巧妙な手口が垣間見え、気が付くと犯罪に巻き込まれていることもある。

このような事例は、SNSの発信数全体から見ると些細な数であるが、そのことがニュースや情報番組などでクローズアップされることで、初めて周りの人が気付くことになる。利用者は、そのサービスに潜むトラブルを理解し、利用規約をよく読んだ上で活用することが必要である。

新学習指導要領解説編の総則ではこのような社会的背景をもとに、犯罪被害を踏まえた危険回避をはじめ、図1のような情報モラルのねらいを示している。また、技術やサービス、児童生徒のメディアの使い方など、その時々の社会変化に適切に対応することも必要だとしている。

図1 情報モラルのねらい
・他者への影響を考える
・人権、知的財産権など自他の権利を尊重する
・情報社会での行動に責任をもつ
・犯罪被害を含む危険の回避
・情報を正しく安全に利用する

 
■気付きにくいサービス依存の理解

最近の傾向として、依存状態に陥りやすいサービスの増加が挙げられる。先ほどのSNSもその一つであり、無料という魅力とその仕組みを多くの人が享受し、生活の中に取り入れ、気が付けばその利便性から脱却できない状態になっている。軽微な依存状態に陥っているといっても過言ではない。写真投稿やネットゲーム、ネット上での売買など同様のサービスが林立している。最近は、その活動内容がデータ化されてサービス会社などに提供され、そのデータを利益に結びつけるビジネスモデルも普及している。このようなサービスの仕組みを理解し、適切に活用する資質や能力が必要になってきている。

このように私たちの生活を便利にそして豊かにするICTであるが、その使い方を科学的な理解に基づいて判断し、適切に利用することが求められている。先ほどの例のように、ICTを使うため情報が拡散することや蓄積されることなどと、そのことによる利便性と危険性を理解し、適切に情報を活用するのを児童生徒の実態に応じて体験的に学ぶことができるカリキュラムと環境が必要である。

■情報セキュリティ

情報活用能力や情報モラル、情報セキュリティ等の学習活動を充実させるためには、教師と児童生徒がいつでも必要な時に安心して活用できる安定的に稼働するネットワークを含めた環境の整備が求められている。また、セキュリティに関する事故の予防や対策など学校における情報セキュリティに対する意識を高めることも必要となっている。

このような課題に対して、学校を対象とする情報セキュリティポリシーの策定などを行う際の参考として「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」が文科省から示された。そこには、教員と児童生徒が学校などで安心してICTを活用できるようにするために不可欠な次の6つの基本的な考え方が示されている(図2)。

図2 教育情報セキュリティポリシーガイドラインの基本的な考え
(1)組織体制を確立すること
(2)児童生徒による機微情報へのアクセスリスクへの対応を行うこと
(3)インターネット経由による標的型攻撃等のリスクへの対応を行うこと
(4)教育現場の実態を踏まえた情報セキュリティ対策を確立させること
(5)教職員の情報セキュリティに関する意識の醸成を図ること
(6)教職員の業務負担軽減及びICTを活用した多様な学習の実現を図ること

 
機器やネットワーク構成の基本的な概念だけでなく学習活動を支援する環境の全体像を把握するための手引書となっている。物理的なセキュリティや技術的なセキュリティが確保できていても、人的なセキュリティが不十分な場合にインシデント(事故)が発生しやすいことを理解したい。


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