プログラミング教育の導入ポイント

千葉県柏市教育委員会学校教育部学校教育課副参事 佐和 伸明

全校で導入できる仕組みを ICT支援員がTTで授業 ボランティアの協力など

佐和_図1「溢れる情報をいかに選択し自分のものとし、さらに働きかけていくためには、コンピュータを使いこなすことがこれからの人間にとって、不可欠な能力となってくる。そのためには、小学校の段階から、その基礎となる能力を育てておく必要があるだろう。そこで、本校では、コンピュータリテラシーの育成を研究の柱とした」

これは、昭和63年度、柏市立田中北小学校の研究紀要から抜粋したものである。コンピュータを使いこなすと聞くと、表計算やプレゼンなどの操作を身に付けることのように感じるが、同校では、「BASIC」や「ロゴライター」といったプログラミング言語を使った学習を小学校1年生から系統的に行っていたのである。この実践は、市内数校で、約10年間行われた。

次期小学校学習指導要領に、プログラミング教育の導入が検討されていることが報道され始めたころ、柏市では、「プログラミングは、もはや情報リテラシーの一つである」と捉え、国の方向性を待たずして、市内全小学校(42校)においてプログラミング教育の先行実施を決定した。それは、生活の至るところで活用されているプログラミングについて、人間の意図で動いていることを理解し、その創り手にもなれることを体験することは、これからの時代を生きていく上で、必要なリテラシーであると判断したためである。

プログラミング教育を推進するにあたり、柏市では、研究校は指定していない。それは、研究校にはヒトやモノを集中させやすく、先進的な実践は生まれるが、その成果は思うように他校に普及していかないという反省からである。そのため、初めから全ての学校で実施できる、無理のない仕組み作りを検討した。学習内容については、地域のボランティア団体である「CoderDojo Kashiwa」の協力を得て、教育委員会が作成した。そこには、昭和のころからの実践による知見も役立っている。

平成29年度は、柏市内全小学校(42校)の4年生全クラス(118学級)約3600人を対象とし、7月までに授業を終えることができた。その際の、最大の課題となったのは、指導できる教師が「ほとんどいない」ことであった。これまで、自らのプログラミング体験さえない教師が、わずかな研修で指導できるようになることは難しい。

そこで、ICT支援員を全ての授業に派遣し、担任教師とTTで授業を行っている。プログラミングに関する指導はICT支援員が中心に進行するが、考えさせたり、発表させたりする授業の重要なポイントは、担任が指導することとした。不慣れな担任を、あえて授業に携わらせるのは、プログラミング教育というのはどういうものか、子供の活動を通して理解してもらうためである。教師は、学習効果が不明確なものに対しては否定的であるが、いったんその価値を認識すれば、主体的に取り入れようとする。今後の進展のためには、プログラミング教育の意義を認識してもらうことが重要であろう。

授業終了後、4年生、約300人を抽出して、児童アンケートを実施したところ、楽しかった(99.0%)、もっと表現してみたい(98.3%)、真剣によく考えた(88.5%)など、たいへん好評であった。中でも、興味深かったのは、プログラミングの学習をすることは、大人になって必要である(85.0%)、というものであった。

そこで、プログラミング学習の価値観について、約30年前の児童アンケート調査と比較をしてみることにした(図1)。昭和63年度には、「プログラミングの学習をすると頭がよくなる」と考えていた児童が42.5%であったのに対して、同校、平成29年度の児童は83.3%に倍増している。プログラミング言語についても、時数についても、当時の方が、かなり難しいことを長時間かけて行っていたはずなのに、現在の評価の方が高かった。これは、柏市内全体でも同じ結果であった。

さらに、「頭がよいとはどういうことか」ヒアリング調査をしたところ、「考える力がある人」「何かを創り出せる人」という回答が多かった。このことから、これからの時代に求められる資質・能力の変化を、子供たち自身が感じ取っているのではないかと推測している。

現在は、4年生の始めに学んだプログラミングの知識と技能を使い、各学年の各教科等の中にプログラミング学習を位置付けるための実践研究を進めている。今後は、それぞれの活動で、どんな力を付けたいのかという教師の意図をはっきりさせ、その成果について検証していくことが必要であると考えている。


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