座談会「学校図書館の役割とその活用」

新学習指導要領を踏まえた人材育成の視点から

新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」の実現が求められている。それを踏まえ、学校図書館に期待されていることは何か。現状と課題、学校図書館の役割を、「育成」の視点から関係者が語り合った。


 

出席者
文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
坪田 知広 氏
横浜市立駒岡小学校司書教諭
岩元 カオリ 氏
日本児童図書出版協会会長
竹下 晴信 氏
(公社)国学校図書館協議会理事長
設楽 敬一 氏
司会・教育新聞編集部長 小木曽浩介

 

小木曽 今日は学校図書館の「役割」とその「活用方法」、そして新学習指導要領を踏まえた「育成」を大きなテーマとして、それぞれの立場からお話を伺えますか。まず現状と課題から。

「人に伝える力を育む」坪田氏
「人に伝える力を育む」坪田氏

坪田 第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」が策定され、新学習指導要領が求めている主体的・対話的で深い学びの実践の場として、学校図書館が期待されています。

スマートフォン、ネット時代の中で、情報を取捨選択するリテラシーが求められています。蔵書や新聞も含め、多くの情報が集約されている学校図書館は、言語能力だけではなく、情報活用能力を育む上でも果たす役割は大きいと思います。読書センター、学習センター、情報センターとしての機能が生かされるべきです。

新学習指導要領の実施は2020年ですが、その前に、学校図書館をフル活用して、学習指導要領の示す新しい学びの姿をぜひ実践していただきたい。

課題は、学校図書館を支える両輪である学校司書と司書教諭がしっかりと配置され、機能して、学校図書館を活用する上でリーダー的な役割を果たせるようにすることです。

設楽 教員は教科指導に力を入れていますが、子供たちの学び方という視点で、学校図書館の機能に着目してほしいと思います。蔵書に関しても、図書標準の達成率は重要ですが、各類の蔵書構成の多様性がとても大切です。

学校では、時代と共に求められる本が変化します。受け継がれていくべき本や、今必要とされている本について更新や廃棄の見極めができ、カリキュラムに沿って必要な本をそろえることに精通した人が求められます。

今後、デジタル資料を取り入れていく必要がありますが、同時にアナログ資料も有効活用することが大切です。例えば新聞の読み方です。デジタルと紙面で同じニュースを読むにしても、紙面の構成や読み方を知っていれば、どこが重要かを読み解く力が付きます。

さまざまなメディアがある中で、メディアに対応した読む力(読み方のリテラシー)が重要になります。これからは、数多くの学校図書館が地域の「知の拠点」として役割を果たし、リカレント教育を担う可能性を考えることも重要です。

小木曽 蔵書の話が出ましたが、蔵書数はどうなのでしょうか。

竹下 文科省が学校図書館の機能・役割を、読書センター、学習センター、情報センターの3つに位置付け、1993年に学校図書館に整備すべき蔵書の標準として学校図書館図書標準が定められてから、図書整備の地方財政措置も毎年途切れることなく続いてきました。しかし定められた図書標準に、まだまだ満たないのが現状です。

新学習指導要領にある各教科における言語力や、アクティブ・ラーニングを充実させるには、蔵書の充実と、学校司書、司書教諭の配置が大切です。

「何かを解決してくれる場所」岩元氏
「何かを解決してくれる場所」岩元氏

岩元 子供たちに学校図書館が大好きと言ってもらえるような、良い場所を目指しています。今はテレビ、インターネット、スマートフォンなど、情報が向こうからやってくる時代。良いことである反面、正しい情報を読み取る力が育成されていない段階では、問題があるのではないでしょうか。

どの情報が正しく、自分にとって必要な情報は何か、それらを読み取る力を教えていくことが現場では求められており、学校図書館の活用と学校司書、司書教諭の役割は大きいと思います。

小木曽 学校図書館そのものに期待される役割はなんでしょうか。

坪田 人に伝える力を育むことだと思います。そのためには、自分の伝えたいことを、どのように伝えるか、異なる考えや意見に気づき、調べ、考察するなど多くの力を育成する必要があります。そのような多様な学びの実現に、教科と連携して、学校図書館は大きな役割を果たします。学校図書館の幅広い資料、情報、蔵書を使った多様な学びは、望ましいものではなく、不可欠なものです。

また、いつでも学べる子供たちの居場所であることが大切で、学校図書館は開かれたものであるべきです。そのためには、学校長など管理職の理解と協力が不可欠ですね。

設楽 伝える力を育む役割は、その通りだと思います。私たち全国学校図書館協議会では、読書感想文や読書感想画コンクールを主催しています。その中で感じるのですが、学校図書館には、伝えるための多様な表現力を育む役割が求められています。まさに新学習指導要領で求められている、思考力・判断力・表現力です。

人に感動や思いを伝える力や、表現力を育むには、これらのコンクールが良い機会となります。とはいえ、指導の在り方が重要だと思います。各教科の指導で、学校図書館の資料を活用することが指導力向上につながります。

小木曽 伝える力を育むためには、伝えたいと児童生徒がまず思うことから始まります。図書館の魅力は本の魅力でもあると思いますが、いま戦前の本が話題になったりもしていますね。

「本の魅力や重要性を再認識」竹下氏
「本の魅力や重要性を再認識」竹下氏

竹下 本の内容は、時代によって求められるものも変わってきます。ただ、その時は求められていなくても、将来、求められる内容かもしれません。学校図書館に本を提供する側として、古い本だから駄目だということではないと思います。もちろんデータなど、間違っているものは処分する必要があります。今の人たちが手に取りやすいように、リメークしてあげることも大切です。

また新学習指導要領では、記憶力ばかりではなく、思考力を高める教育になります。本の魅力や重要性が再認識され、学校図書館を十分に活用しなければならない機運にもなると思います。

小木曽 先生方から、「児童生徒にどんな本を読ませたらよいか」と悩む声も聞きます。

岩元 実は、どの本から手を付ければよいか困っているのは、子供たちだけでなく、先生方にもいます。若い教員の中には、本にあまり触れずに育った人もいます。

そうしたこともあり、先生方に読み聞かせ用の本を選び、校長手製の「ブックトラック」に入れて職員室に置く工夫をしました。

学校図書館の活用とそのきっかけづくりのためには、ナビゲートしてあげる学校司書と司書教諭の役割は大きいと思います。

坪田 課題として「中学校までの読書習慣の形成が不十分であること」「高校生になって読書の関心度合いが低下すること」があり、読書に接する機会を増やし働き掛けていくことが重要です。その中心的な役割を担うのが学校図書館です。

その契機になるのが「役割を与える」ということかと思います。例えば、子供に「子ども司書」の役割を与えてみたり、高学年の子が低学年の子に読み聞かせをしたりすることです。

学校長には「学校図書館長」として先導的役割を果たしてもらい、授業、教科での学校図書館の活用を促すなど、さまざまな部門を巻き込むことが大事です。学校図書館をうまく活用して自学自習できる体制を整え、社会の変化に応じてキャッチアップできる能力を付けていくことが期待されます。

今後は検索性に優れているICT活用の良い点と、紙の良い点を組み合わせた学習が、これからの学び方の肝になるでしょう。

「多様な表現力を育む役割」設楽氏
「多様な表現力を育む役割」設楽氏

設楽 読み聞かせで読書の楽しさを味わわせ、自立した読み手に育つまで指導していくのは極めて重要です。こうした指導に学校図書館の読書センター機能が期待されています。

また、一人で本が読めるようになるためには、言葉を音で表す指導が大切です。言葉は音であり、読解力は頭の中で音としての言葉を文字に変換することで、考えを深めることができるようになります。音読や暗唱なども含めた読書指導が学校図書館を使って実践されることを期待します。

竹下 本と親しんで、本を楽しむ読書。子供のうちにそれを身に付けることができれば、それが大人の読書につながります。先生方には、学校単位で子供の本を読んで、好きな本のリストを作るなど、学校図書館を大いに活用していただきたい。教科書だけではできないこともあります。

岩元 学校で、小学2年生の女の子が「先生、ガンの治し方の本はないの。おばあちゃんがガンになってしまって、ママが泣いていたから、私はママに『泣かないで』と言いたいの。どの本を読んだらいいのか教えて」と相談してきました。

「大勢のお医者さんが頑張っているけれど、さすがに治し方の本はまだないんだよ。健康や病気についての本ならあるよ」と答えると、その子は「分かった」と言って、それを借りていきました。ハムスターの飼い方の本と一緒に。

彼女にとっていま課題だったのは、母親を泣かせないことと、興味があったハムスターのこと。笑っちゃうような、でも泣けるような話がありました。

彼女にとって学校図書館は、何かを解決してくれるところだったのだろうなと思います。子供たちにとって学校図書館は、「何かを解決してくれる場所」「興味・関心を持つきっかけとなる場所」として、期待されているのではないでしょうか。


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