小・中学生の不読者ゼロへ 学校と公共図書館が連携

さいたま市が読書活動促進

小・中学生への推薦図書が並ぶ北浦和図書館の書棚
小・中学生への推薦図書が並ぶ北浦和図書館の書棚

全国的に子供の「読書離れ」が進む中、さいたま市は、子供たちに日本一の本好きになってほしいとの願いを込め、学校図書館と市立図書館の連携事業を推進している。市の取り組みは子供の成長に寄与しているようだ。

新幹線が発着する埼玉・大宮駅から3駅先の、北浦和駅付近にある市立北浦和図書館。市内の学校図書館との連携において中心的な役割を果たす同館の3階には、小・中学生への推薦図書が並ぶ。ファーブル昆虫記、エルマーとりゅう、100万回生きたねこ……。誰もが一度は目にしたことがあるであろう名作たち。それらとともに、上橋菜穂子著『精霊の守り人』、恩田陸著『夜のピクニック』、宮部みゆき著『ブレイブ・ストーリー』といった、現代を代表する作家たちの作品も並ぶ。いずれも「さいたま市『心を潤すこの一冊』子ども100選」の図書で、子供たちが読書を通して言葉の力を高め、豊かな心を育むため、保護者・図書館・地域の協力で選ばれた。

市教委が実施したアンケートによると、1カ月に1冊も本を読まない「不読者」の割合を05年度と15年度で比較した場合、小学生で7.9%から1.8%まで下がり、中学生では25.2%から1.3%まで下がっている。さらに不読者の割合を0%に近づけるため、市は2016年、それまでの取り組みの成果・課題を整理し、20年までの子供読書活動に関する推進計画を策定した。

この計画で掲げられた基本方針の一つに「支える読書」があり、家庭・地域・図書館・学校がそれぞれの役割を担い、社会全体で子供の読書活動を支えていく体制づくりがうたわれている。その一環として市は「学校図書館資源共有推進体制」を確立し、学校司書の全校配置、各校の蔵書データベース化を進めている。

中でも注目されるのが、学校図書館と市立図書館の連携事業だ。

学校図書館と公共図書館との連携の必要性はかねてより説かれてきたが、全国的にはまだ広がりを見せていない。そうした中、市は学校図書館を活用した教育活動の充実を図る目的で、市立図書館と学校が図書を共同利用する取り組みを促進している。

具体的には、市立図書館の司書が学校を訪問して、テーマに沿って数冊の本を順序よく紹介する「ブックトーク」を実施したり、職場の体験学習を行ったりしている。

もっとも、メインとなるのはやはりレファレンスへの協力だ。市立図書館が児童生徒の要望に応じて、学校にはない資料を提供するほか、教材として使う資料を希望する教員の相談にも乗る。市教委が全般を取りまとめ、市立教育研究所がシステム支援を行う形で、週1回ネットワーク便で学校図書館(小学校103、中学校57)と、市立図書館(全25館)との間で資料が相互に貸し出されている。各校の蔵書データベース化により、相互貸し出しは学校図書館間でも実施されている。市教委の指導主事、司書教諭、学校図書館司書、市立図書館司書による連携が、これを可能にする。

市立図書館は学校図書館からのレファレンス依頼に全て対応し、16年度にはネットワーク校に3万7285冊を貸し出した。市立図書館は、読書活動に関する情報や学校図書館を充実させるため、今後も資料提供を継続していくという。

市は「国語力向上プログラム」を策定し、読書活動を推進中だ。それは学力にも寄与している可能性がある。

17年度さいたま市学習状況調査によると、「読書は好きか」との質問に対し、「好き」「どちらかといえば、好き」と肯定的な回答をしている児童生徒の割合は▽小1=83.3%▽小2=85.1%▽小3=83.0%▽小4=80.3%▽小5=77.7%▽小6=73.1%▽中1=74.5%▽中2=74.9%▽中3=76.3%――となり、学年が上がるにつれて小学校では割合が低くなっているが、中学校では割合が高くなっている。

このデータを全国学力・学習状況調査の全国の回答割合と比べると、肯定的な回答をしている児童生徒の割合が、小6では若干低く、中3は高い。学力に関する調査とのクロス集計結果をみると、「好き」と回答した児童生徒の平均正答率や平均点は、「好きではない」と回答した児童生徒に比べ、「学力に関する調査」を実施した小3~中3の全学年で高くなっている。

市は、「読書が好き」と回答した児童は国語力が向上し、平均正答率や平均点が高くなったと考えられると分析している。さらに、「『心を潤すこの一冊』子ども100選」の活用や、学校図書館司書による本の紹介を通じて、読書離れを防ぐ取り組みを各学校で行う必要があるとしている。

学校図書館と市立図書館の連携事業について、市教委は、児童生徒が利用しやすい学校図書館づくりが行われたと評価し、「読書センター、学習センター、情報センターとしての環境づくりを進めていく」としている。


【学校図書館特集】トップページに戻る