ICT活用指導力向上のポイント 「主体的・対話的で深い学び」の実現で

ICTは「力強い助っ人」
東北学院大学大学院人間情報学研究科教授 稲垣 忠

右・東北学院大学TPACKモデル図コンピューター、ネットワークといった情報技術は本来仕事の効率を高め、生活を便利に、豊かにするものである。ICTが何か特別な苦労をして頑張って使わなければならないものであるならば、学習・指導の効率を高め、豊かにするものにはならないだろう。子供たちがスマートフォンを使う際、マニュアルを熟読し、面倒な思いに耐えながら努力して使っているだろうか。便利なものであれば手放したくなくなり、毎日のように使いたくなるだろう。面倒なものであれば最初は何度か使ってみたとしてもやがて隅に追いやられ、忘れられてしまう。

学校のICT環境はどちらだろうか。提示機器は授業ですぐ使えるだろうか。インターネットは安定してつながるだろうか。タブレット端末はどこかにしまわれていないだろうか。ICT活用指導力の向上は、環境がある程度整備されていることが前提である。不自由な環境の下でいくら研修を積み重ねても、事例集を作ったとしても高まることはない。文科省は教員のICT活用指導力だけでなく、コンピューターや電子黒板の整備率、無線LANの整備率などを調査し、自治体ごとのデータも含めてウェブサイト上で公開している。どの部分に課題があるのか。それは研修で解決できるのか、整備が不十分だからなのか。原因を正面から捉えつつ、改善策を打ち出していかないと、改善策そのものが「面倒なもの」になってしまいかねない。

2018年の現時点はさまざまな事柄が端境期にある。学習指導要領は小学校で移行期が始まったが、デジタル教科書などはまだ刷新されていない。ICT環境の整備については、第三期教育振興基本計画における測定指標を「学習者用コンピューターを3クラスに1クラス分程度整備」とされた。教員の道具から児童生徒の学習環境へと整備範囲は拡充されたが、多くの自治体では学校で1クラス分程度にとどまっている。教員養成段階では、教職コアカリキュラムが公表され、各教科の指導法にICTの活用が明記されることになった。来年度からこのカリキュラムが実施され、その4年後にはこのカリキュラムで学んだ新任教員を迎えることになる。このような状況の中、教員のICT活用指導力についても、改訂に向けた報告書が公表された。

これだけの変化が待ち受ける中、待っていれば問題が解決する訳ではない。かといって不十分な環境の中で、ICTに関する知識やスキルの習得を目的とした研修を繰り返していても、いざ環境が変わってゼロから学び直しでは徒労感が募る。ケーラーとミシュラが提唱したTPACKという考え方がある。T=Technological(技術に関する)、P=Pedagogicall(教育方法に関する)、and Content(学習内容に関する) Knowledgeの略である。これらは図のように独立した知識ではなく相互に関連している。TKだけを学ぶ研修ではなく、道徳や小学校の外国語など、新たな内容(CK)とICTの役割を合わせて学ぶ(TCK)。主体的・対話的で深い学びのように方法(PK)として学ぶべきことにICTの活用方法を合わせて学ぶ(TPK)。ただし、ここでの「テクノロジー」はICTだけではなく、ホワイトボードや付せん紙のようなアナログの道具も含めて捉えておきたい。デジタルかアナログか、あるいはその組み合わせなのか、本来の目的に応じて最適な道具を活用すればよい。

学校現場が新たに対応を迫られている課題は多岐にわたり、教員に求められる資質・能力も高度化している。ICTを「新たな課題」として切り出してしまうのではなく、新たな課題に対応するための「力強い助っ人」として役立てる。

そこに必要感・納得感があるものであれば、ICT活用指導力も他の教員に求められる資質・能力と合わせて伸びていくはずだ。


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