プログラミング教育の課題と展望 一般化するために分類し実践を

茨城大学教育学部情報文化課程准教授 小林 祐紀

左・茨城大・図2020年度より全面実施される小学校学習指導要領において、プログラミング教育が必修化される。プログラミング教育の必要性は、社会構造の変化に関連付けて説明されることが多い。家電をはじめ、生活のさまざまな場面でコンピューターを利用することで、私たちは便利な生活を享受している。そして今後、コンピューターをはじめとしたテクノロジーを上手に利用していくことが、どのような地域に暮らし、どのような職業に就くとしても今以上に必要であると予想される。

一方で個人情報の流出やAIの台頭といった、テクノロジーのもろさや不確定な未来への不安を感じている人も多い。そのようなときに目をそらすのではなく、今まで以上に注目し、仕組みを知ろうとすることが必要だろう。それは小学生がCPUやハードディスクの仕組みを理解することや、プログラミング言語を習得することを意味しない。

学習活動として、プログラミングに取り組む狙いは、「論理的思考力を育むとともに、プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることなどに気付き、身近な問題の解決に主体的に取り組む態度やコンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育むこと、さらに、教科等で学ぶ知識及び技能等をより確実に身に付けさせること」(小学校学習指導要領解説、2017)と示されている。

また、小学校段階から子供たちがプログラミングに関わることで、一人一人の可能性の開花につながるとも期待されている。アイデアを形にする方法の一つとして、課題の解決方法の一つとして、プログラミングの活用が期待できる。誰も経験がなく、予測できない人口減少社会を生きる子供たちにとって、自己実現や課題解決の術を獲得することは重要であろう。

今必要なことは、プログラミング教育を小学校現場に、いかにソフトランディングさせていくのか、である。一部の教員による取り組みにとどめず、広く一般化させていく方策を考え、実践していくことが求められる。例えば、授業においては、プログラミングの授業が分類できる点を認識し、学校の実情に応じて組み合わせて実施していくのがポイントである。私たちの研究グループでは、兼宗進氏(大阪電気通信大学教授)の考え方に基づき、プログラミングの授業を、何を学ぶのか、どのように学ぶのか、といった観点から三つに分類している。

一つ目は「コンピューターを使ってプログラミングを指導する授業」である。プログラミング「を」学ぶ授業といえる。ロボット教材やScratchなどを使い、総合的な学習の時間に実施されることが多い。教育委員会が主導して、授業パッケージを作成する例も確認できる。プログラミングの体験が「探究的な学習として適切に位置付けられる」ことが求められている点には、留意すべきである。

二つ目は、「教科学習の目標達成のためにプログラムのよさを生かす授業」である。学習指導要領に例示される算数や理科の授業が該当する。他にも、理科「ふりこ」や算数「偶数と奇数」における取り組みが報告されている。プログラムを作成したり、プログラムのよさを生かしたりすることで、学習内容の深い理解につながる。教科学習であるがゆえに、評価も従来と同様に考えればよい。しかし、学習場面の検討、活用できるプログラムの開発などが必要である。

三つ目は「プログラミング的思考を活用して教科学習の目標達成を目指す授業」である。この授業では、コンピューターから一時離れて、プログラミングの考え方を用いることが特徴といえる。例えば、理科において、リトマス紙を使い水溶液の性質を見分ける学習では、条件分岐の考え方が生かされている。また、算数科における図形の作図には順序の考え方が生かされている。考え方に焦点を当て、授業を再構成することが求められる。

新版教科書において、高学年の算数科・理科を中心にプログラミングに関する記載が登場するであろうが、それだけでは狙いの達成に十分と言えず、各校の実情に応じて、さらに教育実践を行っていく必要があろう。また、クラブ活動などの取り組みも紹介され始めている。地域人材の活用も含めて、関心意欲の高い児童が、さらに意欲的に取り組める場を提供することも、今後検討が求められる。

最後に、プログラミング教育の必要性は分かるが、ICT環境の未整備や、精神的な余裕がなく、取り組みが困難であるとの声を現場の教師からたびたび聞く。教育行政の主体である文科省は、導入を決定し、方向性を示すだけではなく、教育施策の評価を着実に実施する必要があるのはいうまでもない。


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